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全仏のみタイブレークを採用せず 2019年全豪と全英で最終セットのルールが変更 

2019 6/19 07:00中村光佑
ウィンブルドンⒸYuri Turkov/Shutterstock.com
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ⒸYuri Turkov/Shutterstock.com

グランドスラムの最終セットは4大会ごとに異なる

2019年から最終セットのルールが変更になった全豪オープンとウィンブルドン。テニスは試合時間が長引くことが多く、テニス協会でも試合時間の短縮を求める声が広がっていたため、男女ともルールの変更に踏み切ったと見られる。

ところがその結果、4大会でそれぞれ異なる最終セットのルールを採用することになった。そこで今回はそれぞれのグランドスラムでの最終セットのフォーマットを解説していく。

全米は古くから「タイブレーク」を採用

グランドスラム4大会のうち、1970年からタイブレークを採用しているのが全米オープン。全米では最終セットでゲームカウントが6-6になった場合は、通常通り7ポイント制のタイブレークが行われる。

目的は試合時間の短縮で、選手や観客が疲れ果ててしまわないようにするためのルールだとされている。また、商業的な理由としてテレビ放送の時間を考慮した判断とも考えられ、これは全米オープンの特徴と言える。全米オープン主催者は、2019年からも特に最終セットのルールを変更すると示唆していない。

全仏は「アドバンテージ・セット」を採用

4大大会で唯一、タイブレーク制を導入していないのが全仏オープン。最終セットで2ゲーム差がつくまで試合を続行する「アドバンテージ・セット」と呼ばれるルールを採用している。記憶に新しいのは、2019年全仏の3回戦、錦織圭 対 L・ジェレ(セルビア)の試合で、最終セットは8-6で錦織が制した。

全仏オープンの主催者は「現段階でタイブレークの導入はない」と回答している。6時間に及ぶ試合はあったものの、統計上では長時間の試合数がそれほど多くなかったため、今までの伝統を守り続けるという結論に至ったようだ。

だが今後、選手のプレーに響くような長時間の試合が発生した場合は、タイブレークの導入も可能性もあるようだ。

全豪とウィンブルドンは「タイブレーク」を採用

毎年1月に行われる全豪オープンも2019年からは、最終セットで6-6となった場合「10ポイント制のタイブレークを行う」というルールを導入。全豪では2012年の決勝が5時間53分を記録したこともあり、このような事態を避ける狙いでタイブレークの導入を決定した模様。

本来、7ポイント制のところを10ポイント制にしたのは、最終セットでの長時間に及ぶ死闘がテニスの醍醐味だと考えるファンが多いということと、サーブばかりで試合が決まらないようにという工夫のためと考えられる。

ウィンブルドンでも、ゲームカウントが12-12までもつれ込んだ場合はタイブレークが導入されることが決まった。芝生のコートは球足が速く、強力なサーブを持つ選手同士の試合であれば延々と2ゲームの差がつかない事態が起こりやすい。2010年のウィンブルドン1回戦、ジョン・イズナー(アメリカ) 対 ニコラス・マユ(フランス)の試合では、テニス史上最長の11時間5分を記録した。このこともあり、試合時間を短縮するために導入を決定したようだ。

しかし、醍醐味であり伝統の「死闘」を崩さないために、分析と話し合いの結果、12-12まではこれまでと同様に2ゲーム差で決着をつけるというルールで試合を行うことになっている。

大会ごとに個性を残した形に

最終セットのルールだけでも、4大会それぞれの「個性」がある。唯一アドバンテージ・セットを採用している全仏オープンだが、今後タイブレークを採用するとしたらどのようなルールになるのだろう。

選手の疲労やテレビ放送の時間を考慮すれば、タイブレークは間違いなく妥当な判断である。半面、長時間の死闘こそ「グランドスラムの魅力」と考えるファンも多い。これはなかなか難しい問題であり、今後も状況に合わせて何らかの措置が講じられると考えられる。