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卓球界の未来のエース木原美悠、福原愛や伊藤美誠に通じるサービスの使い手

2022 1/31 11:00福田由香
全日本卓球選手権でベスト4入りした木原美悠,Ⓒゲッティイメージズ

Ⓒゲッティイメージズ

コロナ禍の全日本卓球選手権、発熱で棄権も2年連続ベスト4

卓球の日本一を決める全日本選手権。新型コロナウイルスの影響で150人を超す棄権者が出る中、シングルスでは張本智和や石川佳純、平野美宇といった東京五輪代表が早い段階で次々と破れるなど、波乱が起こった。

ベスト8に入ったメンバーを見ると、男子はリオ五輪代表の吉村真晴をはじめ、上田仁、松平健太と過去に日本代表を経験したベテラン勢が若手を破って勝ち上がっているのが目立つ。一方で女子は24歳の佐藤瞳を除くと全員が大学世代以下の若い選手で、10代の選手も3人と、世代交代の印象が強い。

この若手の中で筆者が特に注目しているのが、高校2年生の木原美悠だ。今回ジュニアでは1ゲームも落とさずに優勝しているが、「同世代の中で抜けている」という感じではない。一般女子では14歳だった3年前に史上最年少で決勝に進出していて、その後も2年前がベスト8、去年は3位とコンスタントに勝ち続けている。

今年は発熱により準決勝で棄権してしまったが、2年連続のベスト4だ。Tリーグでは昨季、女子の最多勝を受賞したほか、今季も早田ひなに3-0で勝つなどここまで9勝。先月行われたU19の世界選手権では、混合で中国ペアを破り金メダル、シングルスでも中国選手を破り銀メダルと2つのメダルを獲得している。

ジュニア世代の中では中国選手を含めても世界屈指と言える実力者だ。期待のホープはどのような選手なのか紹介する。

表ソフトを生かしたミート打ちでの速攻

木原美悠はシェークバック表前陣速攻型の選手だ。日本のエース・伊藤美誠と同じバック面に表ラバーを貼った戦型だが、手数と球種で勝負する伊藤と比べ、ミート打ちで連打する木原はより表らしい速攻型と言える。

ミート打ちは早めの打点でボールを捕らえ、小さなフォームで弾くように打つ打法で、“みまパンチ”や“はりパンチ”もミート打ちに入る。回転が少なく直線的なボールになるため、山なりに弧線を描きながら飛ぶドライブのボールと比べると、安定感は落ちるが球速と決定力が高まる打法だ。

そして表ラバーは、多くの選手が両面に張っている裏ラバーと比べ「回転をかけづらいが相手の回転の影響も受けづらい」「初速が速いが失速するのも早い」という特徴がある。つまり、表もミート打ちも「回転が少なくて返ってくるのが速い」という特徴が出やすいのだ。こうした理由から表を使う選手にはミート打ちを多用する選手が多く、一発で決める決定力を求めて表ラバーを貼る選手もいる。

木原のプレーを見ていると、バックハンドで押すように打って得点するシーンが目立つ。これが表ラバーを使ったミート打ちで、相手は裏ラバーとは違った回転量やスピードに振り回されてしまうのだ。

伊藤美誠との共通点は

現在世界最強の表使いは世界ランク3位の伊藤だが、その伊藤との共通点はやはりサービスの質の高さだろう。今回の全日本でも勝負どころでサービスエースが目立っている。特に巻き込みのアップサーブ(強い上回転)と下回転の使い分けが非常に巧みだ。

見た目は同じようなサーブに見えるが、木原のサーブは回転量が非常に多いため、アップサーブは浮いてしまってミート打ちの餌食になるし、下回転はしっかり持ちあげないとネットを越えない。

ジュニア決勝で対戦した張本の妹・美和は、フォア前のサーブを2本連続でレシーブミスして敗北。一般の準々決勝で対戦した、世界屈指のカットマン・佐藤瞳もマッチポイントを握ったところからレシーブを返せず勝ち切れなかった。

粘り強く返すことが持ち味のカットマンからサービスエースを奪うことは非常に難しく、木原のサーブの質がいかに高いかを感じることができる試合だった。

実は、サービスの強いバック表は過去にもう1人いる。長く卓球界を牽引し続けてきた、福原愛だ。福原は変化型で3人ともタイプは違うが、強烈な回転をかけたサーブで先手を取る前陣速攻型という点では共通している。

既に同世代の中国選手から勝利を奪っている木原。日本を背負う未来のエースとして、一歩ずつ階段を上っていってほしい。

《ライタープロフィール》
福田由香
NHK岡山キャスター、テレビ愛知アナウンサーを経て「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日)で現場リポーターとして活動した経歴を持つ異色のライター。卓球初段。全日本社会人選手権、全国インカレ出場。学生時代は全国国公立大学卓球大会で数々の賞状を手にした。

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