ルール変更でダブルスが1番に
リオデジャネイロ五輪で男女ともに団体戦のメダルを獲得した卓球日本代表。東京五輪のシードを決めるランキングでも好位置につけ、2大会連続のアベックメダルに期待がかかる。
今回、団体戦の勝敗で鍵となるオーダーの形式が変更された。前回は4シングルス1ダブルスの5本勝負のうち、真ん中の3番がダブルスだったが、今回は1番がダブルスとなり、2番にダブルスに出なかった選手を起用することになった。
エースがシングルスに2回、残りの2人がダブルスとシングルスに1回ずつ出るのが一般的なため、女子は世界ランク2位の伊藤美誠をエースに、石川佳純と平野美宇がダブルスの練習を重ねている。
セオリー通りいけば、男子はエースに張本智和、ダブルスは水谷隼と丹羽孝希となるが、水谷と丹羽は、どちらも左利きだ。2人が組めば、世にも珍しい左・左ダブルスとなる。
左利き同士のダブルスはなぜ激レアか
ダブルスは、右利きと左利きで組むのが組みやすいと言われている。シングルスの時と近い位置で構えても、パートナーの邪魔になりにくいからだ。利き腕が同じだと構える位置が重なってしまう。
日本代表を例にしても、右・左のペアが目立つ。2017年に日本勢として48年ぶりの国際大会金メダルを獲得した吉村真晴・石川佳純ペアは、吉村が右、石川が左だ。
全日本選手権の女子ダブルスと混合で3連覇している伊藤美誠は、自身が右利きで、パートナーには早田ひな、森薗政崇と、左利きの2人を選んでいる。東京オリンピックの混合代表は水谷隼・伊藤美誠ペアで、水谷が左、伊藤が右だ。
ただ、選手全体でいえば圧倒的に右利きが多い。2021年5月の世界ランキングで上位10人のうち、左利きは男子で許昕、林高遠ら3人、女子は丁寧と石川佳純の2人しかいない。30位以内でも、左利きは男子で9人、女子は7人だ。
これだけ左利きが少ない上に、右・左で組む方がメリットがあるとなれば、左同士のダブルスが珍しいことにも頷けるのではないだろうか。
起爆剤となれるか、左ダブルス
左・左のダブルスのメリットは、まずここまで述べたとおり、圧倒的に珍しいことだ。慣れないものに対応するのは、卓球に限らず難しいことが多い。
またサウスポーのサーブが苦手な選手は多い。サーブの横回転の向きが右利きとは逆になるためで、左利きのサーブが苦手な選手にとって、左・左ダブルスを相手にレシーブするのは辛いものになるだろう。
そして最大のメリットが、レシーバーが常に左利きなことだ。レシーブの構えの位置を図で表してみた。右が右利き同士のダブルスの一般的な位置、左が左利き同士の場合だ。
ダブルスのサーブは、図のようにコースが決まっている。右利きの選手がフォアでレシーブすると、短いボールを取る時に台が邪魔で届きにくい。バックでレシーブすると、今度はバックサイドが広く空いてしまう。
一方、左利きの選手は体の前に空間があるので、短いボールも打ちやすい。広く空くのは、遠くまで手が届きやすいフォア側だ。
このため、ダブルスのレシーブは左利きが有利となり、左・左ダブルスならば、常に有利な状態でレシーブができる。ラリーでの動きの難しさなどデメリットもあるが、サーブレシーブが有利なことは、非常に大きな強みだ。
オリンピックと同じく1番にダブルスを置くTリーグでは、直近シーズン、ダブルスに勝利したチームの勝率は、男子64%、女子78%、平均71%になっている。団体戦で1番ダブルスを取ることの重要性が、このデータからもわかる。
世界ランクが水谷や丹羽より上の選手たちのペアと対峙することも予想されるが、激レアな左ダブルスのアドバンテージを生かし、チャンスをものにしてほしい。ダブルスで流れを引き寄せて後ろに繋げば、2大会連続のメダルへの距離が一気に近づきそうだ。
【関連記事】
・卓球のオリンピック歴代日本人メダリストを紹介
・「大魔王」伊藤美誠が卓球王国・中国を倒せる理由
・中国も恐れる伊藤美誠、「天才少女」から「世界の大魔王」へ