今季の勝率75%、世界ランキング4位
卓球女子で日本のエース、19歳の伊藤美誠(スターツ)が2020年東京五輪のシングルス代表を確実にした。卓球王国・中国からも「大魔王」と恐れられ、12月の最新世界ランキングは日本勢トップで自己最高の4位。データを見ても今季の勝率は75%と、対中国戦の勝率も4割を超える驚異的な数字だ。
最大の武器は、ラケットを自在に操って生み出される予測不能なプレー。11月のワールドツアー、オーストリア・オープンの女子シングルス決勝では、世界5位の朱雨玲(中国)を4-1で破り今季ツアー初優勝を飾った。
昨年11月には3連敗していた難敵から初勝利を挙げ、自信を持って挑んだ大一番。伊藤の代名詞でもある通称“みまパンチ”と呼ばれる一撃必殺のカウンターやバックハンドから繰り出す”みまバック”、変幻自在のサーブなど300以上とも言われる多彩なテクニックで圧倒。「中国1強」だった今季ワールドツアーの壁をまたしても突き破った。
型破りなスタイルで中国も徹底研究
今年1月の全日本選手権は、シングルス、ダブルス、混合ダブルスの3冠を2年連続で達成。中国メディアからは、回転量の多いドライブボールで勝負する中国選手と似たタイプで東京五輪の日本代表切符を争う平野美宇(日本生命)や石川佳純(全農)よりも、圧倒的に対策が難しいと指摘されている。
「誰に何を言われようと私は私。自分は自分。私らしく正々堂々と戦うだけ。本気で何かと闘ってる人はそんな簡単に自分に負けたりしない。何を言われても、何をされても実力がある人が勝つ」伊藤は自身のツイッターでかつてこうつぶやいたことがある。メンタルの強さを象徴する言葉だ。
昨年11月のスウェーデン・オープンでは、中国の劉詩雯、丁寧、朱雨玲のトップ選手3人を立て続けに破って優勝。型破りな発想とメンタルの強さが戦術の幅につながり、急激な成長曲線を描いている。
回転のかけにくい表ソフトラバーでバックハンドドライブを打ったかと思えば、回転をかけやすい裏ソフトラバーで”みまパンチ”を打ってしまう。このように、常識を覆す大胆なスタイルが強さの原点にある。
対戦相手の過去データを徹底的に研究する中国は、「仮想・伊藤美誠」に見立てた選手を複数人用意して攻略法を練っているともいわれている。だが変幻自在にスタイルを変える伊藤への対策は、今季の戦いを見る限りまだ完全には追いついてはいないようだ。
最大目標は東京五輪で悲願の「金」
静岡県出身で卓球選手だった母の英才教育を受け2歳から卓球を始めた伊藤は、小学生時代から「天才少女」と注目されていた。10歳で全日本選手権の女子シングルスで勝ち、福原愛の持っていた最年少勝利記録を更新したことでも知られている。
15歳で出場した2016年リオデジャネイロ五輪では、福原愛や石川佳純の二枚看板と共に団体で出場し、銅メダルに輝いた。リオ五輪後はフットワーク強化と高速ラリーに磨きを掛け、打球にパワーもついている。また、ダブルスの特性をシングルスにも生かし1球ずつパートナーに合わせて広範に動くことで、フットワークが強化されプレーの幅も広がった。
東京五輪は、来年1月の世界ランキングで日本選手の上位2人以内に入ることが条件。そして、女子シングルスは2枠。有言実行で結果を残してきた伊藤の最大の目標は、五輪金メダルだ。今では中国の壁を打ち破ることも現実の目標として捉えられるよう、実績を積んできた。卓球界のヒロインがどのような道を歩み、独創的な進化を続けていくのか目が離せない。