77勝で年間最多勝
11月場所は横綱2場所目の照ノ富士が自身初の全勝優勝を果たし、今年1年の大相撲を締めくくった。照ノ富士は今年だけで4回の優勝を果たして77勝で年間最多勝に輝き、9月場所後に引退した白鵬の後継者として期待に応えた格好となった。
年間最多勝の勝利数は、年6場所制が定着した昭和33年以降の平均値が72.8勝(年5場所だった年は6場所換算値で算出)となっているので、今年の照ノ富士は平均的な年間最多勝力士よりも好成績を残しての年間最多勝だったと言える。
ただ、上には上がいるもので、歴代の年間最多勝の最高勝利数は平成21年、22年の白鵬で86勝(4敗)。それに次ぐのが平成17年の朝青龍の84勝(6敗)となっている。
年間80勝を挙げた力士は皆、大横綱と言われ一時代を築き上げた力士たちである。照ノ富士は来年の目標として「2桁優勝を目指す」と発言しており、現在優勝6回の照ノ富士が、これを達成するためには今年と同じ4回の優勝が必要。それだけでは今年と同じなので、ここは是非、年間80勝も目指してほしいところだ。
1位タイの9月場所13日目に最多勝確定
しかしながら、照ノ富士の独走になっても面白くないファンもいるだろう。歴代、どの大横綱を振り返っても、その全盛時は「1人だけ強すぎて面白くない」という声が出てきてしまう。
近年でも白鵬がまさにそれだった。白鵬の強さを認めつつも、常に独走する場所ばかりだったことに飽き飽きしてしまっていたファンが一定数いたのも事実だ。そのために必要なのは、2番手、3番手の力士がどれだけ照ノ富士に近づけるかだ。
特に今年の照ノ富士の2番手力士との差が際立っていたというのは数字からみて取ることができる。2位に22勝差をつけた年間最多勝は、朝青龍(84勝)が琴欧州(59勝)に25勝差をつけた平成17年に次ぐ2位タイの大差となり、年間最多勝を確定させたのは9月場所13日目だった。
この日の時点で、照ノ富士60勝、御嶽海と正代が43勝と残り17日で17勝差をつけて年間最多勝を確定させた。これは平成17年の朝青龍、平成22年の白鵬と並び歴代1位タイのスピード年間最多勝決定だった。
それだけ照ノ富士が他よりも圧倒的だったということを如実に示す記録といってよいだろう。
2位の御嶽海は55勝
年間最多勝者の勝利数平均が72.8勝ということは前述したが、2位の平均勝利数は65.4勝となっており、今年の2位の御嶽海は55勝で10勝近く平均値から離れている。
今年は照ノ富士が圧倒的な差をつけたわけだが、歴代でも年間80勝を挙げる力士も見られる中、今年の照ノ富士は77勝と平均は上回っているものの特筆すべき勝利数ではない。その中で、22勝差をつけたという事実は、厳しく言えば照ノ富士に追随できる力士がまるでいなかったということになる。
歴代の2位の勝利数を見ていくと、今年の55勝は歴代ワースト3位となっている。54勝が2回あるが、いずれも1位とは僅差の年で、平成29年は1位が56勝の白鵬で2位が54勝の貴景勝。平成31/令和元年は1位が55勝の朝乃山で2位が54勝の阿炎だった。
特に平成29年から5年連続で2位力士が50勝代になっており、その中で照ノ富士が抜け出したといってよいのだろうが、2番手力士の数字が上がってこないことにはいわゆるレベルの高い争いは見られないだろう。
今年1年、照ノ富士が素晴らしい成績を残したが、求められるのは2位の力士が照ノ富士に追随できる結果を残していくことだろう。
現在は照ノ富士1強時代となってきた。今年の勝利数上位力士の中から照ノ富士に近づける力士が出てくることを来年は期待したいところだ。
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