正代を寄り切り13勝2敗
大相撲秋場所は新横綱の照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が13勝2敗で優勝を飾った。1差で追っていた前頭十枚目・妙義龍が関脇・明生に敗れて優勝が決定。結びの一番で照ノ富士が大関・正代を寄り切り、大関復帰場所だった今年5月場所以来、2場所ぶり5回目の賜杯となった。
両膝に不安を抱えながらも白鵬が休場した場所で一人横綱としての責任を全う。9日目に大栄翔、12日目に明生に敗れてヒヤリとさせたが、安定感十分の15日間だった。
新横綱として臨んだ場所で優勝したのは意外に少ない。1場所15日制となった昭和24年5月場所以降では、照ノ富士が5人目だ。
過去に達成したのは大鵬(昭和36年11月場所)、隆の里(昭和58年9月場所)、貴乃花(平成7年1月場所)、稀勢の里(平成29年3月場所)の4人のみ。最強横綱の白鵬でも11勝、朝青龍は10勝、曙は10勝、大乃国は8勝、千代の富士は1勝2敗12休、北の湖は11勝と歴史に残る名横綱でも昇進場所は苦戦しているのだ。
新横綱としての精神的重圧は想像に難くない。それに加え、連日の横綱土俵入りが肉体的にも相当な負担となる。その中で優勝するのは並大抵のことではないのだ。
横綱土俵入りには「うまくできたか不安」
ただ、照ノ富士が横綱として真価を問われるのは来場所以降だろう。今場所は白鵬が所属する宮城野部屋で新型コロナウイルス感染者が出たため休場している。白鵬には名古屋場所千秋楽の全勝対決で敗れた借りがあるだけに、白鵬に勝って優勝してこそ価値は高い。
優勝インタビューでは「一生懸命やってよかったなと思います。重圧を感じても仕方ないので、その日の一番に全力をかけて一生懸命やっている姿を見せられたらいいかなと思っていた。(今日は)来る前から最悪3番取るくらいの気持ちで来ていた」と優勝決定戦も覚悟していたことを明かした。
優勝しても表情ひとつ変えず、終始淡々と答える新横綱には、序二段から這い上がってきた苦労がにじむ。奢ることなく、諦めることもなく、日々努力を積み重ねてきたからこそ今がある。「一人では活躍できないんで、親方、おかみさん、後援者の皆さん、家族、足を運んでくださる皆さんのおかげです」と話す感謝の気持ちに嘘はない。
土俵入りについて問われ「うまくできたかなと不安もある」と答えると、場内から拍手が沸き起こり、その一瞬だけ笑みを見せた。
すでに年間最多勝も確定。勝負の11月場所には「いつ何が起こるか分からないんで、土俵に上がる以上は精一杯やる」と短い言葉に決意をにじませた。来場所は横綱同士の息の詰まるような大一番が見たい。
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