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白鵬が示した「引き際の美学」歴代横綱の引退直前場所の成績は?

2021 9/30 06:00SPAIA編集部
引退を決めた白鵬,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

横綱通算900勝に王手をかけながら

大相撲の横綱白鵬が引退を決めた。秋場所は所属する宮城野部屋で新型コロナウイルス感染者が出たため全休したものの、名古屋場所では全勝優勝していただけに驚きの引き際だった。

手術した右膝の痛みは本人にしか分からない。史上最多45回の優勝をもたらした強靭な肉体も、36歳の現在はボロボロなのかも知れない。

それでも横綱通算899勝で、名古屋場所の優勝インタビューでも「あと1勝」に意欲を示していたこともあり、九州場所で照ノ富士との横綱対決への期待が高まっていた。

生涯成績は1187勝247敗253休。2位・魁皇の1047勝を大きく引き離す、まさに「不滅の金字塔」だ。横綱昇進した平成19年7月場所から角界を引っ張り、「最強」の名を欲しいままにしてきた。

18歳の貴花田に敗れて引退した千代の富士

横綱は何度負けても休んでも陥落することはない。その分、進退については常に重大な責任がつきまとう。不祥事でも起こさない限り、引退を決められるのは自分だけだ。

ボロボロになるまで戦う、倒れても立ち上がる姿もファンの心を打つが、敗れ去る前に潔く身を引く姿もまた美しいと言えるだろう。

平成以降に引退した横綱の直前場所の成績が下の表だ。

平成以降に引退した横綱の引退直前3場所成績


筋骨隆々の体で「ウルフ」と呼ばれた優勝31回の千代の富士は平成3年5月場所だった。初日、後に「平成の大横綱」と呼ばれる18歳の貴花田に寄り切られて史上最年少金星を供給。日本中に新旧交代を印象付けられると、3日目には貴闘力に敗れて引退を決めた。

曙は年間最多勝の翌年初場所後に突如引退

千代の富士に続いて大乃国や旭富士も相次いで引退。一人横綱となった北勝海はケガからの復活を目指したが、平成4年5月場所直前に引退した。

若乃花は2場所連続全休明けの平成12年3月場所で引退。貴乃花は7場所連続全休明けに12勝3敗で優勝したが、再び全休した翌場所の平成15年1月に引退した。

場所の前半で負けが込んで引退した若貴兄弟に対し、ライバルの曙は白鵬と似たパターンだった。平成12年名古屋場所は13勝2敗で優勝、秋場所も13勝を挙げ、九州場所は14勝1敗で優勝。同年は年間最多勝に輝いた。にもかかわらず、ケガのため全休した平成13年1月場所後に突如引退。白鵬と同じく膝の痛みは限界に達していた。

朝青龍と日馬富士は不祥事で土俵を去る

武蔵丸の引退後、長らく横綱として君臨した朝青龍は、平成22年1月に13勝2敗で25回目の優勝。しかし、場所中に泥酔して騒動を起こしたことを週刊誌に報じられ、責任を取る形で引退した。

同じモンゴル出身の日馬富士も平成29年秋場所で11勝4敗で優勝したものの、翌九州場所3日目に貴ノ岩への暴行が報じられて休場。朝青龍に続く不祥事によって、場所後に引退した。

稀勢の里は待望の日本人横綱として期待されたが、やはりケガに苦しんだ。8場所連続休場後に10勝5敗と持ち直したものの、平成30年九州場所で5敗10休。翌31年初場所で3連敗し、引退を決めた。

今年3月に引退した鶴竜は記憶に新しい。ケガのため5場所連続休場となった春場所11日目に引退を表明した。

ほとんどの横綱がケガと戦い続け、復活しようともがき苦しむことが多い。その点においては、歴代の横綱の中でも白鵬の散り際は見事だ。再三のかち上げや言動などが批判されることもあったが、最後まで「強い横綱」であり続けたことは間違いない。

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