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第100回箱根駅伝で青山学院大が圧勝した理由、各校が束になってもかなわなかった驚異的タイム

2024 1/6 06:30鰐淵恭市
イメージ画像,Ⓒsportpoint/Shutterstock.com
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青学大以外の全ての大学が束になってもかなわなかった青学大の記録

100回目の節目を迎えた箱根駅伝は青学大が10時間41分25秒の大会新記録で2年ぶり7度目の優勝を果たした。

大会前は「駒大1強」と言われながら、青学大はいかにして王座奪還を果たしたのか。そして、この優勝タイムがいかにすごいタイムなのか、数字からひもといてみた。

「大会新記録」「2位に6分35秒差」と青学大の圧勝ぶりが目立った100回大会。青学大は区間賞5人、区間2位3人、区間3位1人、区間9位1人と、ほとんどが区間上位だった。

さらに、ライバル駒大に区間順位で負けたのは1区のみ。戦前の予想を覆す圧勝劇だったが、実際にどれだけすごいタイムだったのだろうか。

青学大のタイムと青学大以外の区間最高タイム


各区間の青学大のタイムと、青学大以外の最高タイム、つまり、青学大が区間賞を取った区間は区間2位、それ以外は区間賞のタイムを合計してみた(表を参照)。すると、青学大の方が13秒速かった。

つまり、数字上ではあるが、青学大以外の大学が束になっても勝てなかったことを意味する。それだけ、今回の青学大は強かったのだ。

また、今回の青学大の優勝タイムの1キロ平均は2分57秒。これを男子マラソンに当てはめると2時間4分40秒となり、鈴木健吾の日本記録を6秒上回ることになる。箱根は1人がハーフマラソンに近い距離を走るから、一概には比較できないが、山上りがある箱根でこのスピードは驚異的である。

駒大の戦略を打ち砕いた2区・黒田朝日と3区・太田蒼生、見逃せない1区・荒巻朋熙の粘り

勝因はいくつもあるだろう。

一つはピーキング、調子を本番に合わせるうまさだ。大会1カ月前にインフルエンザの集団感染がありながら、本番に最高の状態に仕上げるのはさすがとしか言いようがない。

そして、何より原晋監督の選手配置の妙と、それに応える選手たちの力だろう。

今大会のエントリー選手の1万メートルのランキングは1~3位を佐藤圭汰、鈴木芽吹、篠原倖太朗の駒大勢が独占した。そして、予想通り、駒大は1区篠原、2区鈴木、3区佐藤と序盤に並べ、先行逃げ切りの形を取ってきた。

一方、青学大は2区に黒田朝日、3区に太田蒼生と原監督が言う「駅伝男」2人を並べた。そして、この2人が駒大の鈴木、佐藤のタイムを上回り、駒大に4秒の差を付けて4区へトップでたすきを渡すことができた。駒大の戦略を青学大が打ち砕いた瞬間だった。

もちろん、黒田と太田の走りは素晴らしかったが、1区の荒巻朋熙が駒大との差を35秒にとどめたのも大きい。本人は「最低でも20秒以内」と語っていたが、十分に駒大を追えるタイム差だった。ここでもっと開いていれば、その後の逆転劇はなかっただろう。

つなぎの4区に「駅伝男」佐藤一世

そして、4区にも「駅伝男」が待っていた。1年生の時から原監督が信頼を寄せる佐藤一世だ。駒大の4区は山川拓馬だったが、少々「役者」が違った。このつなぎとも言える4区に「駅伝男」を持ってきたのは原監督の嗅覚か。

結果、4区で駒大との差を1分26秒にまで広げた。5区には山上りに強い若林宏樹が控えており、青学大の王座奪還が見えた瞬間でもあった。

「今回の駒大は史上最強」と語っていた原監督。その言葉に偽りはなかっただろう。選手個々のスピードをみれば、駒大に分があったと思う。しかし、ロードレース、さらに団体競技の駅伝ではその能力が必ずしも発揮されるとは限らない。だから、原監督は「駅伝男」「駅伝力」といった言葉を使い、駅伝で力を発揮する選手を評価する。

今回の圧勝劇は原監督の元で選手たちが培ってきた駅伝力のたまものだろう。結果、「史上最強」だったのは、1強と言われた駒大ではなく、ここ2年苦汁をなめてきた青学大だった。

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