3本柱を1~3区に配置、盤石の布陣のはずが……
駒大の「1強」と言われた第100回箱根駅伝だったが、ふたをあけると青学大の圧勝だった。史上初となる学生3大駅伝2年連続「3冠」に王手をかけながら、なぜ駒大は6分35秒の大差で敗れたのか。
エントリー選手の1万メートルランキングで1~3位を独占、上位10人の1万メートル平均タイム出場校トップ、前回の箱根4区から21区間連続でトップ通過……。箱根の前、様々な要素で駒大の有利が伝えられた。
篠原倖太朗、鈴木芽吹、佐藤圭汰の3本柱を1~3区に並べた。篠原は当日のメンバー変更で1区に添えられた。万全を期して、駅伝の定石とも言える「先行逃げ切り」の形を取ってきた。ただ、この3区までが駒大の誤算だったとも言える。
2区で差をつめられ、号泣した主将・鈴木芽吹
1区篠原は青学大と35秒差の区間賞。もう少し、青学大を引き離せる力はあったが、ここは合格点と言えるだろう。問題は2区から始まった。
主将の鈴木は青学大に22秒差に詰め寄られた。区間2位だったのだから、決して悪い走りではない。青学大2区で区間賞を取った黒田朝日を褒めるべきだろうが、駒大としてはここで盤石の態勢を築きたかっただろう。たすきを渡した後、鈴木が号泣していた姿がそのことを物語っているように思えた。
初めての距離、力を出し切れなかった佐藤圭汰
駒大の3区は、今エントリー全選手の中で、1万メートルの記録がトップの佐藤。将来の日本を背負うと言われる2年生である。この佐藤の存在が駒大の強みであり、同時に不安要素でもあった。
184センチという大型ランナーの佐藤は今回が箱根初出場。1500メートルの高校記録を樹立するなど、元々中距離や長距離でも短い5000メートルを得意とするランナーだ。
一方で箱根の1区間は大体ハーフマラソンの距離で、3区は21.4キロ。だが、1万メートルの公式レースも1度しか経験しておらず、ロードでも全日本で11.1キロを走ったものの、ハーフマラソンの距離を公式レースで走った経験がない。つまり、ハーフマラソンの長い距離を真剣勝負で走った経験がなかったのである。
もちろん、練習では何度も走っているだろうし、初めてでも問題なく走れる選手はいるが、力を出し切れない選手が多くいるのも事実。結果、区間2位だった佐藤は失敗とは言えないが、少なくも成功と言える走りではなかった。それだけ、佐藤に期待されるものは大きかった。
3区で言えば、区間賞を獲得した青学大の太田蒼生の走りが素晴らしかった。とはいえ、1万メートルのタイムで言えば佐藤の方が50秒以上も速い。やはり、佐藤が力を出し切れなかった感が強い。それも、青学大に逆転されて4秒差をつけられるとは、駒大側も想定していなかったのではないか。
勝ち続けていた故に知らなかった追うことの難しさ
3区で青学大に前に出られると、4区以降は駒大の強さ故のもろさが出た展開になった。
駅伝で先行逃げ切りがセオリーと言われるのは、逃げる方が力を出しやすいからである。追う方はどうしても突っ込んでオーバーペースになり、結果つぶれてしまう。
昨季から駒大は強すぎた。前回の箱根の4区からトップを守り続け、今回の3区で佐藤が抜かれるまで、3大駅伝で23区間トップを守ってきた。つまり、追う側の立場を知らなかった。
それが、いざ追う側に回ると、思うように力が出せなくなった。3本柱で負けるという動揺もあっただろう。だが、それ以上に「追う」という経験がなかったかもしれない。
今回は敗れた駒大だが、3年生以下の層は厚く、来季も青学大とともに学生駅伝界を引っ張る存在であることは間違いない。その逆襲劇が楽しみである。
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