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【岐路に立つ名GK】赤のダビド・デ・ヘアに伸びる白の手

2017 11/10 12:24dai06
ダビド・デ・ヘア
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スペインから生まれた天才的GK、ダビド・デ・ヘア

ダビド・デ・ヘア選手(以下、敬称略)は1990年11月7日生まれのスペイン人GKだ。出身地はマドリードで、地元クラブであるアトレティコ・マドリード(以下、アトレティコ)に10歳の時に入団。そこから着々とステップアップしていった。

トップチームにに名を連ねたのは、2009-10シーズンのことだった。当時のアトレティコにはセルヒオ・アセンホ選手(以下、敬称略)が正GKを務めていた。彼もまた若く優秀なGKで、U20のワールドカップに出場すべくチームを離脱していた。
代わりにロベルト・ヒメネス選手が彼が不在の間GKを務めることになるのだが、その控えとして呼ばれたのが、デ・ヘアだった。クラブにおけるデ・ヘアの出発地点は、控えの控えということになる。

しかしデ・ヘアは、ワールドカップ終了後のアセンホの不調により、レギュラーに抜擢される。そこで好プレーを連発し、遂にブレイクを果たした。UEFAスーパーカップでは、CL優勝クラブとして参加したインテルナツィオナーレ・ミラノ(以下、インテル)と対戦。ジョゼ・モウリーニョ監督(以下、敬称略)率いるインテルは、当時無類の強さを誇っていた。
だが、デ・ヘアはこのインテルのエース、ディエゴ・ミリート氏のPKをストップし、タイトル獲得に大いに貢献した。

それ以降、アトレティコの正GKといえば、デ・ヘアになった。

目を付けた赤い名門ユナイテッド

活躍を続けるデ・ヘアは、国内外多くのクラブから関心を寄せられるようになり、結果的にプレミアリーグの名門、マンチェスター・ユナイテッドFC(以下、ユナイテッド)への移籍が決定する。2011-12シーズン、デ・ヘアに新たなる挑戦が始まったのだ。

ユナイテッドにはサー・アレックス・ファーガソン氏(以下、敬称略)という名将がいる。彼はユナイテッドで長らく指揮を執っていたが、GKの獲得に関しては大いに悩んできた経緯がある。
かつてピーター・シュマイケル氏がユナイテッドの守護神として君臨していたが、その彼が退団した後、ファン・デル・サール氏という後継者を見つけ出すまでに多くの時間を要し、成績も不安定になった。
ファーガソンはこのことを苦々しく思っており、即戦力かつ長く使うことができるGKを探し求めていた。そのお眼鏡にかなったのは、当時シャルケ04に所属していたマヌエル・ノイアー選手(以下、敬称略)だった。

だが、このファーガソンの決定に異議を唱えた者がいた。それがユナイテッドのGKコーチであるエリック・スティール氏だった。彼はファーガソンに対し、ノイアーの素晴らしさを認めつつも、「3年経てばデ・ヘアがノイアーを超える」と説いた。結局ファーガソンはこの提案を受け入れ、デ・ヘアの獲得に踏み切ったのだった。

ユナイテッドの名GKの系譜は続く、デ・ヘアのプレースタイル

かくしてユナイテッドに移籍したデ・ヘアは、ユナイテッドの新しいGKとなった。加入当初はコンディションが上がらず、大量失点を喫することもあったが、徐々にそのポテンシャルを発揮。2013-14、14-15シーズンには、ユナイテッドにおけるMVP選手に選出されている。

そんなデ・ヘアは伸びのある美しいセーブを得意とする。デ・ヘアは、193cmという身長に対して体重は76㎏と、GKとしては小柄だ。前述のノイアーもデ・ヘアと同じ身長193cmだが、体重は92kgある。このことからもデ・ヘアは線が細く、他のGKよりも華奢に見えてしまう。

だが、デ・ヘアの伸びのある美しいセーブは、この線の細さが為せる技なのかもしれない。デ・ヘアは、どんなボールに対しても即座に反応できる優れた反射神経を持つとともに、その反射神経を活かせるだけのスピードがある。長い腕を迅速かつ、大胆に出すことができビッグセーブを連発するのだ。反射神経が十分でも、身体が重たくスピードのない選手ではこうはいかない。

さらにデ・ヘアは、ボールを前に送り出すロングフィード、スローイングの技術にも優れる。相手のシュートをストップした後、即座に前を向き攻撃に転じることができるのだ。これができるGKがいるのといないのとでは、カウンターの質が異なる。
カウンターは主にGKからのセーブが起点となるため、ここがもたつけば相手に守備陣形を整えられてしまう。整えられる前に突くことが肝要で、展開の早いプレミアリーグにおいてはカウンターは重宝される戦術だ。

代表でも格が違う?イケル・カシージャスからの引き継ぎ

デ・ヘアは、スペイン代表でもU年代の時から出場機会を重ねてきた。A代表入りしてからは、レアル・マドリードCF(以下、マドリード)の正GKであるイケル・カシージャス選手(以下、敬称略)の壁に阻まれるも、その彼が代表を退いてからはデ・ヘアが正GKとして定着した。

スペイン代表にはビクトル・バルデス氏(以下、敬称略)というカシージャスの控えがいたが、その彼よりも若いデ・ヘアの方が重宝された。結果的にバルデスは2人のGKに阻まれ、スペイン代表では20試合しか出場することができなかった。※2017年10月現在、カシージャスは167試合。

スペイン代表はマドリードとFCバルセロナに所属する選手を基本とする、ポゼッションサッカーを主体とする。その試合においては、GKにも足元の技術が求められるのだが、デ・ヘアも難なくパス回しに参加してゲームを作ることができている。カシージャスの去った後でも、スペインのゴールは堅い。そのデ・ヘアの控えにも優秀なGKが控えており、スペイン代表GK陣の将来は明るい。

伸びる白い手!デ・ヘアはマドリードに行くのか

クラブでも代表でも素晴らしいキャリアを築いているデ・ヘア。名GKとの賞賛する声に疑いの余地はないだろう。

2015年夏には、母国かつ自身の地元のクラブである、マドリードから関心を寄せられるようになる。水面下で進められていた交渉は移籍最終日にまとまる運びとなった。
しかし、交渉の最終調整はもつれにもつれ、クラブ側が書類の準備に手間取った。この影響でデ・ヘアのマドリード移籍は破談となる。マドリードとユナイテッドの双方がお互いの責任を追及し、関係は一気に悪化した。
コンディションの低下が危惧されたデ・ヘアだったが、その移籍騒動後も変わらずユナイテッドのゴールを守っている。サポーターも安堵していることだろう。

だが、事態はまだ収拾していない。それ以降も、マドリードはデ・ヘアの動向を追っており、加齢による衰えとコンディションに乱れが生じる、ケイロル・ナバス選手の後釜を探している。それが、デ・ヘアだ。宿敵アトレティコの出身者であるデ・ヘア。
同じくアトレティコに所属した経験のある、ティボー・クルトワ選手もマドリードのターゲットになっているが、母国かつ地元の選手であるデ・ヘアの方が適任と目されているようだ。

移籍の内容では、マドリード側が選手のトレードと移籍金で挑戦する見込みが強い。名前が挙がるトレード要員には、トニ・クロース選手やクリスティアーノ・ロナウド選手といったビッグネームが並ぶだけに、ユナイテッド側が移籍を拒否するとは言い切れない。

ユナイテッドの監督であるモウリーニョは、デ・ヘアの移籍を完全否定しているが、当の本人は黙秘を続けている。様々な事象を鑑みれば、デ・ヘアは移籍に踏み切っても無理はない。赤い名門から白い名門へ移る日は来るのだろうか。今後も彼の去就に注目が集まる。