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ダービーマッチを知ろう フランス リーグ1編

2017 10/13 10:05跳ねる柑橘
Olympique Lyonnais
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ダービー・マッチ:プライドが激突する特別な一戦

スポーツにおいて、ライバル関係というのは時に大事な要素になる。順位表ではライバルより下にはいたくないものだし、直接対決では絶対に負けたくない。そんなライバル関係はサッカーの世界ではクラブチーム間にも存在し、その直接対決は「ダービー・マッチ」と呼ばれる。対戦する両チームの選手・サポーターとも、いつも以上の気迫で試合に臨み、スタジアムは大きな盛り上がりを見せるものだ。

今回紹介するのは、近年ド派手な補強で注目を浴びるパリ・サンジェルマンなどが所属するフランスのサッカーリーグ、リーグ1だ。ヨーロッパ中の視線を集めるこのリーグでは、どのようなダービーが繰り広げられるのだろうか。

強豪揃いのタフなリーグ

リーグ1は強豪ひしめくリーグだ。最多優勝は古豪サンテティエンヌの10回、次ぐ9回で日本代表SB酒井宏樹が所属するマルセイユ、8回でモナコとナント、7回のリヨン、6回のパリ・サンジェルマン(PSG)、ランス、ボルドーと続く。
時代と共に盛衰が顕著なのがリーグ1の特徴で、最多を誇るサンテティエンヌがタイトルを争っていたのは、1960年代から80年代前半までだ。80年代から90年代はマルセイユ、そして2000年代はリヨンがリーグを席捲していた。
そして近年はこうした強豪とタイトルを競っていたPSGとモナコが豊富な資金力を武器に積極補強を続け、リーグ1の話題をさらっている。

こうした強豪チームは、当然ながらお互いをライバル視している。これらチームがぶつかりあうダービー・マッチを見ていこう。(※本稿内の戦績は2017-18シーズン第5節終了時のもの)

Le Classique(PSG対マルセイユ)

【初対戦1971年 通算91試合 PSG 38勝 ドロー21 マルセイユ32勝】
フランス北部に位置する首都パリと、地中海に面した大都市マルセイユ。そんな両都市にあるPSGとオリンピック・マルセイユのライバル関係は国内屈指といわれる。
Le Classique(ル・クラスィク)とは、スペインの「エル・クラシコ」にちなんで付けられた愛称だ。フランスにおけるビッグクラブ同士のクラシックダービーとして、長年マルセイユの会長を務めたベルナール・タピ氏が名付けたものだ
。歴史は浅いものの、リーグ1を代表する一戦であり、異様な盛り上がりを見せる。過去に発生した騒動を踏まえ、会場には何百人もの警備が敷かれ、緊迫した雰囲気の中試合が行われる。

PSGは前身の2クラブが合流し、1970年に出来た比較的新しいクラブのためか、対戦回数はあまり多くはない。戦績を見るとややPSGが抜けているものの、国内きっての強豪同士のため拮抗している。しかしPSGは2011年にカタール企業をオーナーに迎え、莫大な資金力を用いてチームを積極的に強化した。
そのためここ数年はPSGが圧倒的な強さを見せている。2016-17シーズン終了時点で、最後にマルセイユが勝利したのは、2011年11月27日のホーム戦までさかのぼらなければならない。それから16-17シーズン終了まで12勝2分と、PSGの勢いはとどまることを知らない。

Choc des Olympiques(リヨン対マルセイユ)

【初対戦1951年 通算107試合 リヨン35勝 ドロー39  マルセイユ34勝】
オリンピック・リヨンとオリンピック・マルセイユ。このオリンピックの名が冠された強豪同士の対戦が、Choc des Olympiques(ショック・ドゥ・オランピック)だ。
リヨンもマルセイユもフランスきっての強豪であり、国中が注目する一戦である。ル・クラスィクほど激しい展開にはならないものの、かつてはこの直接対決でリーグ優勝の行方が決まるほどだった。

両者対決では思わぬスコアが付いた対戦が多く、1991年のマルセイユのホームではマルセイユが7-0で大勝し、このシーズンはマルセイユがリーグ優勝を果たした。次いで大差がついたのが1997年のダービーで、今度はリヨンがホームでマルセイユを8-0で粉砕した。
低迷期のマルセイユは、このシーズン2部から昇格してきたばかりだったが、リヨンは6年前の雪辱を晴らす大勝を飾った。また勝敗がつかなかった名勝負もあり、2009年の対戦ではなんと5-5のドローというスコアだった。前半3分でリヨンが先制したかと思えば、その後は両チームのゴールラッシュ。試合終盤まで2点差でマルセイユがリードしていたものの、リヨンが3得点して大逆転した。
このまま試合終了と思われたラストプレーで、なんとリヨンのトゥラランが痛恨のオウンゴール。衝撃の幕切れで怒濤のゴールショーは終演した。なおこのシーズン、マルセイユが18シーズンぶりに優勝し、リヨンは2位で終えている。

Derby du Rhone(リヨン対サンテティエンヌ)

【初対戦1951年 通算114試合 リヨン39勝 ドロー32  サンテティエンヌ43勝】
フランス南東部に位置するローヌ=アルプ地域圏。ここにあるリヨンとサンテティエンヌのサッカークラブの試合が、Derby du Rhone(ローヌ・ダービー)だ。サンテティエンヌは1950年代から80年代に名を馳せたクラブだが、近年は二部降格など調子を落としている。
一方でリヨンは2000年代に前人未到の7連覇を果たし、躍進したクラブである。故にリヨンサポーターからは「かつてフランス最高のクラブ」と「近年最高のクラブ」の対戦などといわれることもある。

互いの本拠地はわずか50km程度しか離れておらず、ローカルダービーとしての意識も強いが、古豪としての誇りなどによるライバル意識も強い。ル・クラスィクのように熱狂的なサポーターの衝突もあることから、警備が厳重にされることでも知られる。また選手の動きにもそれは現れており、これまでに両クラブでプレーしたのは27人、そして直接移籍した選手はわずか13人しかいない。
このクラブ間の移籍はいわゆる「禁断の移籍」とされ、古巣のスタジアムに乗り込んでのローヌ・ダービーでは、耳をつんざく大ブーイングが巻き起こる。このクラブ間にうずまくライバル意識がいかに強いかを表している。

Derby de la Cote d'Azur(モナコ対ニース)

【初対戦1953年 通算106試合 モナコ47勝 ドロー28 ニース31勝】
地中海に面したコート・ダジュール地方のDerby de la Cote d'Azur(コートダジュール・ダービー)は、この地に拠点を置くニースとモナコのローカルダービーだ。モナコは、フランスの隣の小国モナコ公国のクラブだが、フランスフットボールリーグに加盟し、リーグでは強豪として活躍している。
2011年にはロシアの大富豪ライボロフレフ氏がオーナーに就任し、もともと派手だった補強がますます加速している。2016-17シーズンのリーグ制覇とチャンピオンズリーグベスト4の成績は、記憶に新しい。

一方のニースはリーグ優勝4回の古豪で、フランス南部ではマルセイユやニースに次ぐ実力を誇る。両都市はわずか20kmしか離れていないため、地理的なライバル関係もあるが、それ以外にも、モナコの豊富な資金力に反感を抱くニースサポーターというライバル意識が存在した。
そんなニースも2016年に中国系のコンソーシアムが株式の80%を保有し、資金力を増している。とはいえ地力はモナコが勝っており、これまでの対戦成績でニースは水をあけられている。

近年このダービーで面白いのはマリオ・バロテッリの存在だ。2016年にニースに移籍してきた悪童は、これまで3回モナコと対戦して2勝1敗、4得点と相性が良い。2017-18シーズンでも開幕ダッシュを狙うモナコの連勝を止めたのは、バロテッリ擁するニースだった。16-17シーズンを3位で終えるなど、勢いのあるニースがリーグ1での存在感を増している。

華やかな国で行われる激しいぶつかり合いに注目

フランスというと花の都パリ、フランス料理、芸術の本場など、華やかなイメージが浮かぶ。しかしこの国のサッカーは華麗さばかりではない。テクニックが自慢のブラジル人選手、そして身体能力に長けたアフリカ系の選手が数多く所属している。
そのためヨーロッパ系の選手が多い他国リーグと比べると、技術とフィジカルという2点が極端に際立っている。そうした強みを武器に、クラブの意地とプライドをかけた戦いに臨む。
近年は、スペインやイングランドのビッグクラブ相手にも戦えるクラブが出てきた。そんなリーグ1でも特に白熱するダービー・マッチを、是非注目して観てもらいたい。