「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

ダービー・マッチを知ろう イングランドプレミアリーグ編

2017 6/30 12:56跳ねる柑橘
サッカー ボール
このエントリーをはてなブックマークに追加

ダービー・マッチ:プライドが激突する特別な一戦

ライバルとの直接対決。それはどんなスポーツでも白熱する瞬間だ。サッカーでは、選手や監督といった個人同士とは別に、クラブにもライバル関係が存在する。そんなライバル同士の対決、それがダービー・マッチだ。
ダービー・マッチとは、ある共通のものを持ったクラブ同士が対戦する試合を指す。本拠地が同じ都市ということもあれば、リーグで優勝を競い続けてきた強豪クラブ同士ということもある。そこにあるのは対抗心や敵対心、そしてプライドだ。それも単にサッカーチームとしてだけではなく、都市間やサポーターの階級間にある対抗心が、サッカーというスポーツに反映されるのだ。
「我々の方が優れている」「あいつらには負けたくない」そんな思いが、選手やチームだけでなく、サポーターの心にもメラメラと燃え上がる。当然試合は毎回大きな注目を集め、激しい展開が約束されている。サッカーファンなら見逃してはならない一戦、それがダービー・マッチなのだ。
これから数回にわたって、そんなダービー・マッチを紹介していく。まず第1回となる本稿では、この「ダービー」という言葉の発祥地、イングランドのプレミアリーグから5つのダービー・マッチを取り上げたい。なお本稿の記録は2016-17シーズン終了時のものである。

ノースウェスト・ダービー(ユナイテッド対リヴァプール)

最初に紹介するのは、プレミアリーグきってのビッグクラブ、マンチェスター・ユナイテッド(以下ユナイテッド)とリヴァプールが対戦する「ノースウェスト・ダービー」だ。
ダービーの名称は両クラブが本拠地を構える都市の地理関係に由来する。イングランド北西部にある工業都市マンチェスターと港湾都市リヴァプールは距離的にも近く、産業革命以来深い関係にある。これまで両クラブはともに60個以上のタイトルを獲得しており、ともにイングランドでも大きな成功を収めたクラブとして知られている。そんな両クラブの対戦は、リーグの順位とは関係なく、国で最も優れたクラブを決する一戦と言っても良い。そのためイングランドを代表するダービー・マッチとして「ナショナル・ダービー」と呼ばれることもある。
スタンドは熱気に包まれ、サポーターからは激しい声援とヤジが送られる。残念ながらその熱気は声援だけにとどまらず、スタジアム周辺やスタンドではサポーター同士の衝突も起きることもしばしば。増員された警備員が警戒にあたるが、それでも衝突が避けられなかった試合も多い。
ピッチ上でも激しいマッチアップが繰り広げられ、特にゴール時の熱狂ぶりは他の試合とは一線を画すものがある。どんな試合でもチームの得点に喜びを爆発させるのは当然だが、このダービーではそれがいき過ぎて挑発や侮辱に発展してしまい、後日処罰されたというエピソードもある。
そんな白熱するこの対戦、これまでの試合結果はユナイテッドの79勝、リヴァプールが65勝、引き分けが54回と、直接対決ではユナイテッドがリードするものとなっている。

マンチェスター・ダービー(ユナイテッド対シティ)

ここからは同都市内のライバル関係をご紹介しよう。
まずはマンチェスターに拠点を構える2クラブ、ユナイテッドとマンチェスター・シティ(以下シティ)がぶつかる「マンチェスター・ダービー」だ。ユナイテッドは前述のとおりプレミアリーグで最も成功を収めたクラブであり、また長らく世界的な人気を誇るクラブとして君臨し続けてきた。
そんなユナイテッドに対して、シティはサポーターから「真のマンチェスター市民のクラブ」として愛されてきた。サポーターのシティ愛は非常に強く、著名人にもファンが多い。特に「オアシス」のギャラガー兄弟は有名で、ユナイテッドへの敵対的なコメントを多く残している。
近年シティは新オーナーを迎え、その潤沢な資金力で急激に力をつけている。セルヒオ・アグエロ選手やダビド・シルバ選手を筆頭に世界トップクラスの選手を獲得し、監督にはバルセロナで数多のタイトルを獲得したペップ・グアルディオラ監督を招聘している。
こうしたシティの強化もあり、マンチェスター・ダービーはプレミアリーグ屈指の好ゲームとなっている。だが強豪としての歴史はユナイテッドに分があり、通算の戦績はユナイテッド72勝、シティ50勝、引き分けが52となっている。

マージーサイド・ダービー(リヴァプール対エヴァートン)

港湾都市リヴァプールにもライバル関係が存在する。ここには「レッズ」の愛称のリヴァプールFC以外に、「リヴァプールの青いクラブ」エヴァートンFCがある。この2クラブが衝突する試合を、リヴァプールがあるマージ―サイド州にちなみマージ―サイド・ダービーと呼ぶ。両クラブは創設も古く、トップリーグに所属し続けてきた名門。ダービーの歴史も長く、1962-63シーズンからマージーサイド・ダービーは毎年行われている。
リヴァプールでは昔から家族や友人の間で応援するクラブが異なることも多く、お互いのサポーターがスタンドで分かれずに混ざり合って応援するスタイルが続いている。このことからフレンドリー・ダービーとも呼ばれている。多くのダービー・マッチではサポーターが隔離されるのだが、このダービーではそうした措置も取られないのだ。
こう聞くと友好的なダービーかと思えるが、近年はピッチ上でも警告や退場が増えるなど、非常に白熱する危険なダービーとなっている。ライバル意識は選手にもしっかり根付いており、エヴァートン出身で現在ユナイテッドに所属するウェイン・ルーニー選手は、エヴァートンを応援するコメントをたびたび残している。
通算戦績はリヴァプールが上回っており91勝、エヴァートン66勝、ドローが71となっている。この数字もそうだが近年は特にリヴァプールが優勢で、実に2011年から不敗が続いている。

ビッグロンドン・ダービー(アーセナル対チェルシー)

ここからは首都ロンドンのダービーを2つ見ていこう。
ロンドンには多くのクラブが本拠地を構えているが、中でもアーセナルとチェルシーはビッグクラブと呼ぶにふさわしい2クラブだろう。ただ両者は互いを最大のライバルだとは見なしていない。アーセナルはユナイテッドと後述するトッテナムを、そしてチェルシーはリヴァプールを強くライバル視しており、互いはその次に続いている。
とはいえ、リーグ優勝を争う上で負けるわけにはいかない相手だ。またビッグクラブ同士の対決ということもあり、この一戦は世界的に注目を集め、両サポーターも大いに盛り上がる。
両者の間にはほかのダービーほどの因縁はないが、それでも選手のクラブ間の移籍にはサポーターの反発も多い。2006年の例を見てみよう。元イングランド代表のアシュリー・コール選手はアーセナルの下部組織出身でチームの主力として活躍していたが、この夏にチェルシーに移籍。その際には大金目当ての移籍だと非難された。
またコール選手と入れ替わりでチェルシーからアーセナルへ移籍したウィリアム・ギャラス氏について、当時チェルシーで指揮を執っていたジョゼ・モウリーニョ監督は移籍を許可したフロントを批判、サポーターも守備の要のギャラス氏を失うことに大きな衝撃と非難の声をあげた。
通算の成績はアーセナルが73勝、チェルシーの62勝、引き分けが54と、アーセナルが上回っている。

ノースロンドン・ダービー(アーセナル対トッテナム)①

続いてはアーセナルとトッテナムの「ノースロンドン・ダービー」だ。両者のライバル関係は非常に根深いものがある。時はさかのぼり1919年、当時の1部リーグで所属チーム数を増やすことになった。その際、1部最下位ながら本来は降格が免れるはずだったトッテナムは何故か2部降格となり、2部5位だったアーセナルが1部昇格となったのだ。この因縁があって以降、両者の対戦は熱を帯びるものとなった。
ダービー・マッチとなる2クラブの間で選手が直接移籍することを、しばしば「禁断の移籍」と呼ぶ。アーセナルとトッテナムの間でこの禁断の移籍が起きたのが2001年。当時トッテナムでキャプテンを務めていたソル・キャンベル氏が、契約満了とともにフリーでアーセナルに移籍した。主力、それも主将を務める選手が、移籍金を残すことなく向かった先がよりによって同都市のライバルクラブだったのである。
これにはサポーターも怒りが収まらず、キャンベル氏は「裏切り者」「ユダ」などと呼ばれるようになる。2003-04シーズンにキャンベル氏はアーセナルの一員としてプレミアリーグ無敗優勝を果たすが、優勝が決まったのはなんとノースロンドン・ダービー。キャンベル氏の古巣トッテナムの本拠地ホワイト・ハート・レーンだったのである。この試合自体は引き分けに終わったものの、もしアーセナルが勝利していたら、トッテナムサポーターには我慢ならない展開となっていたことだろう。

ノースロンドン・ダービー(アーセナル対トッテナム)②

それから十余年経った2016-17シーズン。今度はアーセナルに屈辱的な結末が待っていた。このシーズンを5位で終えたガナーズは、19シーズン連続でのチャンピオンズリーグ出場が途絶えてしまった。しかもここ数年躍進を続けるライバルのトッテナムが2位フィニッシュ。トッテナムがアーセナルを上回る順位でリーグ戦を終えたのは実に22年ぶりのことだ。直接対決も1分け1敗と、アーセナルにとっては散々な結果となった。
これまでの通算戦績はアーセナルが80勝、トッテナムが62勝、引き分けが51。長く積み重ねられてきた数字ではアーセナルが優勢だが、ここ数年はトッテナムもリーグ強豪と呼ぶにふさわしい活躍で、2016-17シーズンにはついに順位表でも上回った。今後ますます過熱するであろう両チームのライバル関係に注目だ。

街ごと熱くなる!ダービー・マッチを見逃すな

ダービーは、サッカーという枠を超えたプライドのぶつかり合いがあるのが特徴だ。都市間のライバル意識が選手・チーム同士の感情を奮い立たせる試合もあれば、同じ都市の住民でも従事する職業によって応援するクラブが異なる、そんな階級間の対立を象徴するような激しい試合もある。それがダービーだ。
街中がヒートアップし、選手たちへの期待と要求は一層強いものとなる。勿論選手たちはサッカー選手として戦うのだが、ダービーが持つ特別な意味は、間違いなく彼らを鼓舞し、試合をいつも以上に白熱したものにする。
選手だけでなくスタジアムやサポーターといった、クラブ全体が持つ熱い想いも感じ取ってみると、ダービーの観戦をより楽しむことができるだろう。

関連記事

おすすめの記事