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2024年得点王にも期待 Jリーグ移籍市場を沸かせた今季注目の5人の新戦力ストライカー

2024 1/24 06:00小林智明
鈴木武蔵
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Ⓒゲッティイメージズ

鈴木武蔵が北の大地に戻り再起を誓う

J1リーグの移籍マーケットを見渡すと、名の知れた大物ストライカーの移籍が目に付いた。そこで、過去にJ1で2桁得点を挙げた経験のある5人のFWに着目。彼らの過去のデータを振り返り、新天地で爆発できるかを探りたい。

今回取り上げる5選手の2023年リーグ戦成績と年間自己最多得点は下表の通り。

J1新戦力FWの2023年リーグ戦成績と年間自己最多得点


G大阪から期限付き移籍した鈴木武蔵の札幌への復帰は4年ぶり。キャリアハイの13得点を記録した札幌1年目の19年にはルヴァンカップでも7得点で得点王となり、チームを準優勝に導いた。同年、日本代表にも選出されている。

ところがベルギーでの2シーズンを経て22年夏に加入したG大阪では、1年半で得点はわずか2。再起をかける今季、再びミハイロ・ペトロヴィッチ監督の薫陶を受けることで、本来のプレーを呼び覚ますことができるだろうか。

ジャマイカ人とのハーフの鈴木は、スピードとパワーで勝負するタイプ。19年はシャドーの位置で裏に抜ける動き出しが光り、パスレシーブの指数はリーグ10位。思い切りの良さも長所で、同年101本(リーグ4位)のシュートを放ち、ゴール期待値(あるシュートチャンスが得点に結びつく確率)はリーグ2位だった。

FC東京に移籍した小柏剛の後釜として、最前線の位置での起用も考えられる。ただ、くだんの19年にはCFで先発起用された際にも7点を挙げており、1トップでも対応可能だ。「15得点」を目標に掲げたが、有言実行となるか。

浦和に22年得点王チアゴ・サンタナ降臨

J2清水から“個人昇格”した浦和のチアゴ・サンタナは21年に来日。J1での2年間、J2で戦った昨年と3連続2桁得点を挙げている。22年は14得点、J2降格チームからの得点王の輩出は史上初となる快挙だった。

昨シーズンのJ2では夏場に家族の事情で戦列を離れ、4試合を欠場したが、それ以外の38試合に出場。清水1年目も欠場は1試合のみだ。昨季の浦和はホセ・カンテが結果的にエースとなったが、先発出場は15試合(8得点)と稼働率が低かった。24年はサンタナが最前線に立ち続けるに違いない。

得点王になった22年、清水の攻撃回数はリーグ最下位だったが、自身は19.4%の高決定率で少ない好機をものにした。昨季もチームの攻撃回数はリーグ14位ながら、平均シュート数はリーグ2位の3.1本。23年の浦和も攻撃回数リーグ最下位だったが、傑出した個の力で多くのゴールをもたらすことが期待される。

また、今季の浦和はアタッカーの大補強を行った。ペアマティアス・ヘグモ新監督は攻撃サッカーを掲げているため、2度目の得点王も狙えるだろう。ただ、サンタナが得意とするのは、クロスに頭や利き足の左で合わせるワンタッチゴールだが、浦和のクロス数は昨年リーグ16位。彼の決定力を最大限生かすには、その本数&精度のアップが不可欠だ。

“福岡の顔”山岸祐也が新天地で3年連続2桁得点へ

サンタナと同じ30歳の山岸祐也は、遅咲きのゴールハンター。J2クラブを主に渡り歩き、今季加入した名古屋が5チーム目となる苦労人だ。それでも着実に成長し、福岡で開花。一昨季と昨季に各10得点をマークし、ルヴァンカップ制覇にも尽力した。

山岸はアラサーならではのゴール前での落ち着きが特徴。23年の10得点中、PKの1点も含めて計5点が、正確にコースを突くインサイドキックによるものだった。シュート成功率は22年が19.2%、23年が16.9%。昨季の福岡はボール保持率最下位、かつチーム内得点率27%の大エースとしてマークが厳しいなか、その数字を残せたのは称賛に値する。

昨季は一昨季と比べるとラストパス数が24→35へ向上し、アシストはチーム最多タイの4を記録した。パスを呼び込む位置取りも巧みで、パスレシーブの指数でリーグ3位に。加えて、タックル成功率73.5 %と守備のタスクも忠実にこなした。

そんなマルチな能力を引き出す適正ポジションは、1.5列目だろう。昨季16得点の名古屋の急先鋒、キャスパー・ユンカーと中盤を結ぶ中継役として適任ではないだろうか。また、ユンカーがマーカーを引きずり込んだ裏を狙う、彼が打ち損じたこぼれ球を沈めるなど、得点機のイメージも湧く。3年連続2桁得点の可能性は十分にある。

豪華FW陣を擁する名古屋の核弾頭パトリック

山岸のチームメイトとなるのが、京都から移籍したパトリック。J1通算96得点の実績は申し分ない。18年の広島時代には得点王ジョーに次ぐ、20得点と大暴れした。

名古屋・長谷川健太監督がG大阪で指揮を執っていた14年には、ルヴァンカップ決勝で2得点、天皇杯決勝で決勝点を挙げ、リーグ戦も含め、国内3冠を達成。長谷川監督が希求するサッカーは熟知しているだろう。

気になるのは36歳という高齢。先発出場数は2年前の22年と昨季では20→10と半分まで減り、名古屋でも稼働率は低くなる公算が高い。それでも昨年は途中出場で6得点、その6点を決めた試合は全勝だった。途中出場した得点者が昨年ゼロだった名古屋では、スーパーサブとして重宝されるに違いない。

昨季シュート決定率は23年得点王の大迫勇也と同率の25%と、技術・パワーに関しては衰えが見られない。特に敵陣空中戦の指数では、20年から4年連続1位に君臨。昨季もCKから2発、クロスから1発のヘッド弾を決めた。最前線のターゲットとしても、機動力があるユンカー、山岸らとの相性は良さそう。新10番に指名されたのも、期待の表れだ。

万能FW大橋祐紀と広島とのマッチングは最高?

昨年ブレイクしたのが、大学卒業後、湘南で5年間プレーした大橋祐紀。23年開幕の鳥栖戦でハットトリックを達成。シーズン序盤に肉離れで、リーグ戦12戦を棒に振ったにもかかわらず、終盤に4試合連続得点(5得点)の追い込みで計13得点を稼いだ。そして今オフ、国内6クラブ以上の争奪戦の末に広島へ完全移籍した。

急成長を示すスタッツはシュート決定率。21年は6.5%(シュート数62本)、22年は5.4%(同37本)だったのが、23年は22.4%(同58本)。好機で決めきれない悪癖を見事に払拭した。昨季リーグ3位の広島は1試合平均シュート数、攻撃回数ともに1位だったが、シュート成功率は最下位。待望のフィニッシャーとして、期待を一身に背負う。

先の13得点の内訳を見ると、クロスからの得点が5点と最多。昨季クロス本数でも広島はリーグ1位だっただけに、決定機は昨年より断然増える。そのほか、こぼれ球を押し込むなどの“嗅覚系”ゴールは3点、力強さも兼備しミドルで2点を突き刺した。

大学時代はボランチを経験しており、守備では昨季タックル成功率83.3 %を誇り、湘南ではプレスの先導役も担った。ショートカウンターの指数で昨季リーグトップだった広島の戦術とも親和性は高いはず。底知れぬポテンシャルを、さらに発揮する予感が漂う。

ここに挙げた新戦力ストライカー5人は、誰が得点王争いを演じても不思議ではない。ただし、昨季得点ランキング5位までに入った移籍1年目の選手は、3位ユンカー(浦和→名古屋)のみ。環境の変化にも動じない強いメンタルも、真の点取り屋には必要なのかもしれない。

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