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元日本代表からファンタジスタまで J1移籍で注目の「元10番」6選手は新天地で輝けるか

2024 1/17 07:00小林智明
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ⒸSPAIA

鹿島の貴公子・荒木遼太郎が決意の再出発

24年J1リーグの移籍市場において、J2以上のカテゴリーでエースナンバー「10」を背負った経験をもつアタッカーに着目。その顔ぶれは、元日本代表や前所属チームでバリバリの主力だった実力者ぞろいだ。ただし、補強には当たり外れがあるのがつきもの。そこで過去の個人成績をベースに、彼らが新天地で輝けるかを探る。

J1新加入の「元10番」6選手の2023年リーグ戦成績

最初に紹介するのは、鹿島から期限付きで移籍したFC東京・荒木遼太郎。昨季まで4シーズンを過ごした鹿島では、21年に1994年の城彰二以来、史上2人目となる10代での2ケタ得点(10得点)を達成。翌年から自ら志願して、10番を付けた。

しかしながら、22年はヘルニア治療で長期離脱するなど不本意なシーズンを過ごし、1得点1アシストに留まる。復活を期した23年も、中盤でも守備強度を求めるチームにフィットせず、もがき苦しんだ。

荒木の適正ポジションはトップ下だろう。ただ、FC東京でその位置を争う可能性があるライバルは、同じパリ五輪世代の松木玖生。華奢な荒木は、180センチ・78キロの松木にフィジカル面では太刀打ちできない。攻撃面でいかに“違い”を見せるかが、生き残るためのカギとなる。

ブレイクした21年は、味方からパスを受けるパスレシーブのポイントにおいてもリーグ17位と上位にいた荒木。ボールをもらうポジション取りの感覚を呼び覚ますことが、本来のテクニカルなプレーを復活させるための第一歩かもしれない。

プリンス山田康太は攻撃での完全燃焼を期す

柏からG大阪へ完全移籍した山田康太が背番号10を託されたのは、前年に8得点6アシストをマークしたJ2山形での2年目、22年シーズンだった。アタッキングフットボールを掲げるチームで、2トップの一角ながら中盤にも顔を出し、攻撃の組み立て役、チャンスメーカー、得点源、プレスの起点という4役をこなす万能型アタッカーへ成長した。

昨季移籍した柏では8月以降に、山形時代と同じ2トップでスタメンに定着。しかし、J1残留争いの渦中にいたチーム事情により、前線のハードワーカーとして“汚れ役”を買って出る。タックル成功率75%など守備で奮闘も、攻撃では不完全燃焼が続いた。

ただ、移籍先のG大阪は、昨季からポゼッションベースの戦い方に方向転換。敵陣ポゼッション指数はリーグ3位だった。山形時代に主導権を握るサッカーでならした山田にとって、それは好都合。キャリアハイの結果を残した21年J2の攻撃ポイント(パス、クロス、ドリブルのポイントの合計値)でリーグ9位に入った“本来の顔”を、今年は見せてくれるはずだ。

超攻撃的ボランチ見木友哉がJ1でベールを脱ぐ

6人の中で唯一今季も背番号10を継続するのが、東京Vの見木友哉。大卒後、プロ2年目の21年にJ2千葉で14得点5アシストを稼いで覚醒。22年からエースナンバーをまとい、J2では図抜けた攻撃センスをもったMFだった。

23年はチーム事情で一列下がってボランチを務めたが、見事に適応。ゲームメイク比率を高めつつ機を見て前線まで駆け上がり、アタッカーの仕事までこなした。得点は7を記録、攻撃ポイントはリーグ3位に。ロングパス成功率も77.1%と高アベレージで、堅守速攻スタイルの今の東京Vにも合いそうだ。

守備は粗削りながら対人能力が高く、ボール奪取の指数は昨季リーグ18位。タックル数もチーム最多の計100回を記録、そのうち64回を成功させた。21年から3年連続40試合出場以上という鉄人ぶりも強み。脂が乗った25歳は、センセーショナルなJ1デビューを飾るかもしれない。

チャンスクリエイター長谷川元希が“個人昇格”

同じく初めてJ1に挑戦するのが新潟の新戦力、長谷川元希。プロ1年目から憧れていた家長昭博(川崎F)と同じ背番号41を付けて7得点6アシストを挙げ、J2甲府で頭角を現した。一昨季には天皇杯を制し、その名を全国にとどろかす。22年リーグ戦でも40試合出場8得点4アシストの結果を残し、背番号10を手に入れた。

昨季J2はACLと並行する過密スケジュールの中、39試合に出場し7得点6アシスト。数字的には年々伸びているわけではないが、卓越したテクニックとアイデアで異彩を放つ天才肌でありながら、安定した成果と試合に出続けるタフネスぶりは評価に値する。

創造性あふれるプレーはデータに表れづらいが、23年の1試合平均チャンスクリエイト数はリーグ17位。22年にはパスのチャンスビルディングポイントでリーグ10位に。そのパスセンスは、昨年新潟でブレイク後に欧州へ旅立った伊藤涼太郎を想起させる。その後釜として攻撃のタクトを振るのではないだろうか。

小野裕二が新潟浮沈のカギを握る!

新潟にはもう一人の10番もやって来た。22、23年に鳥栖でエースナンバーを付けた小野裕二だ。なお、高卒新人だった11年から2年間、横浜FMでも10番を背負っている。

プロ14年目となる小野は、万能型アタッカーの部類に入るが、昨季序盤、FWにケガ人が出た鳥栖で本格的に1トップへコンバート。若かりし頃からボディーコンタクトにこだわり、過去に約4年間在籍したベルギーリーグで屈強なDFと渡り合った経験から、体を張ったボールキープはお手の物。小野にクサビを入れ、そこから有機的なパス回しが広がった。

このポストワークは、23年ボール支配率56%(リーグ1位)の新潟のポゼッションにもプラスになるに違いない。また、屈強な体躯を生かし、昨季タックル成功率76.5 %と対人守備でも優位に立てる。

だが、チームが小野に一番求めているのは「ゴール」である。昨季は自己最多の9ゴールをマーク。驚くべきはその決定力で、ケガによる途中離脱もありシュートは計35本しか打っていないが、シュート成功率25.7%を誇る。23年の新潟は高いボール支配率とは裏腹にシュート成功率8%(リーグ15位)と決定力不足に泣いた。その特効薬として注目だ。

天野純が韓国での成長をトリコロールに還元

小野と同様にトリコロールの元10番だったのが、全北現代(韓国)よりレンタルバックした横浜FM・天野純だ。18年にA代表デビューを果たし、リーグ優勝を飾った19年にキャプテン&背番号10の大役を担っていた。その年の7月にベルギーリーグに期限付き移籍したため、J1制覇を味わえなかったが、22年に再びレンタルで韓国に渡り、蔚山現代の主軸としてKリーグ王者に輝く。

この年、天野はリーグ戦30試合に出場し、J1時代も含めキャリアハイの9得点を挙げた。昨年こそケガもあり、新たなレンタル先の全北現代ではフル稼働できなかったが、韓国でもゴールを決めたセットプレー、ミドルを生んだ高質な左足キックは健在。レフティーならではの多彩なパスも得意とする。

一方で、17年にパスレシーブの指数でリーグ7位になったように味方と連動し、パスの受け手にもなれる。主戦場はトップ下、チームで初対面の昨季得点王アンデルソン・ロペスと波長が合うかが、ポジション争いの焦点になりそうだ。

エースナンバー「10」を背負った過去をもつ6人の俊英。もはや「10番タイプ」と一括りにできないが、彼らの足技は勝負に直結するプレーはもちろん、“魅せるプレー”ができるのも見どころだろう。24年Jリーグをぜひ沸かせてほしい。

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