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12年ぶりJ1京都サンガの「1カ月検診」曺貴裁サッカーは成長途上

2022 3/27 06:00木村健
ピーター・ウタカ,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

攻守でアグレッシブな曺貴裁監督

明治安田生命J1リーグは2月18日に開幕した。現在は国際Aマッチウイークでリーグ戦は中断されている。この期間に修正点や改善点を洗い出し、4月1日からのリーグ再開で勝ち点を重ねていけるか。ここまでの関西J1チームのリーグ戦を「1カ月検診」と称し、各クラブの「ストロングポイント」と“ウイークポイント”をデータで検証する。

第2回は曺貴裁監督の掲げる「S adventure」をテーマに、攻守でアグレッシブなサッカーを標榜している12年ぶりJ1昇格の京都サンガを取り上げる。

5試合7失点の守備陣は及第点

昨季から主力を務める1メートル86の麻田将吾に加え、今季は1メートル90のDFメンデスと1メートル91のDFアピアタウィア久が移籍加入。その効果は数字上でも顕著で、自陣での空中戦勝率はリーグ2位の60.9%を誇る。

CBI(クリア、ブロック、インタセプトの総称)はリーグ4位の283回、1試合平均スプリント回数もリーグ3位の211回を計測しており、攻守にアグレッシブな姿勢を求める指揮官のカラーは出せている。

またリーグ第2節セレッソ大阪戦でGK上福元直人が絶体絶命のピンチを救ったように、GKセーブ率の高さも光る。DFラインを高く設定する中で5試合7失点に抑えられているのは、決して偶然ではない。

京都サンガの1カ月検診

昨季の強みを発揮し切れていない

リーグ開幕・浦和戦で1-0の勝利を収めて大きなインパクトを残し、すでに3得点を挙げているFWピーター・ウタカの個人技は光っているが、ただチーム全体では5試合4得点と得点力は伸び悩んでいる。

その一つは曺貴裁監督が「奪ったボールを相手にプレゼントしてしまうことが多い」と指摘している通りパス精度の低さだ。ピッチを三分割したエリアを個々に見ていけば、ディフェンシブサード(DT)からアタッキングサード(AT)までのパス成功率は低い(DTは全体17位66.7%、MTは同15位74.8%、ATは同17位64.8%)。

もう一つは昨季J2時代の強みだったロスト後のボールリゲイン率やこぼれ球奪取率。昨季は10秒以内のリゲイン率はJ2トップの38.5%を誇ったが、今季はJ1全体16位の30.4%となっている。こぼれ球奪取率も昨年の52.1%から45.3%(J1全体17位)に落ちている。

J1とJ2の違いといってしまえばそれまでだが、この部分は「攻守の切り替えの速さ」の指標で京都サンガの生命線でもある。攻撃の回数(全体15位の602回)が少ないのは、これらに起因しているだろう。

京都サンガの1カ月検診

新加入組の台頭に期待

湘南時代に若手を鍛え上げ、18年ルヴァン杯優勝に導いた指揮官は「まだできないことがあって当たり前」と声を大にする。U―21代表MF川崎颯太ら若い選手が多く、成長過程にあるのは間違いない。

ここから求められるのはスピードを落とさない中で、どれだけ正確にパスをつなげられるか。昨季のストロングポイントをJ1の舞台でも発揮させられるか。

そしてウタカ1人に負担が掛かっているゴール前で他選手が絡んでこられるか、だ。その意味では今季新戦力組のFW大前元紀、FWマルティノス、FW豊川雄太、FW山﨑凌悟に期待したい。

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