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復活狙うガンバ大阪の「1カ月検診」片野坂知宏監督の改革をデータで検証

2022 3/29 06:00木村健
ガンバ大阪FW宇佐美貴史,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

1勝2分け2敗で13位

明治安田生命J1リーグは2月18日に開幕した。現在は国際Aマッチウイークでリーグ戦は中断されている。この期間に修正点や改善点を洗い出し、4月1日からのリーグ再開で勝ち点を重ねていけるか。ここまでの関西J1チームのリーグ戦を「1カ月検診」と称し、各クラブの「ストロングポイント」と“ウイークポイント”をデータで検証する。

第3回は片野坂知宏監督を新たに迎えて復権を狙うガンバ大阪。5試合を終えて1勝2分け2敗で13位だが、果たして改革はどこまで進んでいるのだろうか。

垣間見える「カタノサッカー」右サイドは大きな武器に

片野坂監督はGKを含めたビルドアップ、そして機を見た高速カウンターで大分トリニータを6年間率いた。明確なスタイルを持つ指揮官のサッカーは「カタノサッカー」と呼ばれるが、新天地でも特色は出ている部分がある。

その最たるものが「シュートまで要する秒数」だろう。ボールゲインからシュートまでが速いのか遅いのかはチームスタイルによるので優越が付けられないのを前提で、ガンバ大阪はJ1クラブでは下から3番目の21秒。ボールを握ってから全員が大事にゴールまで向かおうという姿勢が垣間見える。

またシュート決定率はJ1トップの21.2%。シュート数自体は少ない(全体16位の33本)が、特にMF小野瀬康介やMF石毛秀樹がプレーする右サイドからの得点率(4.9%)はJ1トップでチームの武器になっている。 そして交代選手の得点数もトップの4得点。これは選手層の厚さ、そして流れを変える指揮官の采配が色濃く出ている証左だ。

ガンバ大阪の「1カ月検診」

タックル奪取率、自陣空中戦勝率…物足りない守備でのデータ

リーグワーストタイ9失点を喫しているように、守備は物足りない面が多い。ボールロスト後10秒未満でのリゲイン率31.4%は15位、タックル奪取率60.7%はJ1で16位。自陣空中戦勝率でも同17位の47.6%と低い。

3バックの空いたスペースを使われることも多く、そのため被パス成功率は80.3%(全体16位)となっており、ボールポゼッション率の低さ(46%で全体14位タイ)や被シュート数の多さ(61本で13位タイ)にもつながっているといえよう。

またチームの1試合平均スプリント回数153回は全体の最下位。ボールをつなぐ意識の高さは浸透しつつあるが、一方で「カタノサッカー」のもう一つの顔でもある高速カウンターが出来ていない側面が見える。

ガンバ大阪の「1カ月検診」

改善点

GK東口順昭、FW宇佐美貴史が長期離脱。これまでは「個」の即興で何とか得点を挙げ、致命的なピンチを防いできたクラブだが、今後はより「組織化」が望まれる。

その中で重要なのは攻撃から守備へ切り替わる際のネガティブトランジションだろう。5秒未満、10秒未満のボールリゲイン率が高まればボールポゼッション率、少ない攻撃回数(全体14位の606回)の改善にもつながる。そのあたりの整備は、片野坂監督は上手いはずだが…。

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