復活を期す横浜FM仲川輝人、札幌・興梠慎三
今季J1リーグを見渡して、ふと気になった。今後のJ1でメインキャストを張りそうなFWたちが、奇しくも23番のユニフォームをまとっているではないか。背番号23を付けた6人のアタッカーを紹介しよう。
まず現在のJ1で背番号23を象徴する選手として名前を挙げたいのが、横浜F・マリノスの仲川輝人だ。29歳を迎えた19年のMVP&得点王は、昨年までの2年間は負傷も重なり、輝きを放てず各2得点ずつにとどまった。
だが、定位置の右翼から左翼へポジションを移した今季は、水を得た魚のようにこれまで3試合出場3得点と絶好調。シュート決定率は50%と高い。
また、ラストパス数6本(J1全体17位)と、チャンスメイクでも貢献度が高い。昨季、同ポジションは現セルティックの前田大然が務め得点王に輝いたが、その動きを参考にしているかのようなゴール前での位置取りと、裏への飛び出しが奏功している。
なお、仲川は優勝した19年シーズンから背番号を19から23へ変更。母体会社の日産(ニッサン)にかけた同番号を選んだ理由を、当時こう語っている。
「(今後)23番を横浜FMの象徴となるような選手が付けてもらえるように。自分がそういう選手のパイオニアになれるように自分にもプレッシャーをかけました」
「23」への気概が最もあるJリーガーは、仲川に違いない。
仲川同様、「復活」がキーワードになるのが、今季、浦和レッズから期限付き移籍で北海道コンサドーレ札幌に加入した興梠慎三だろう。35歳の熟練ストライカーは、鹿島アントラーズで8季、浦和で9季を過ごし、鹿島最終年の12年から20年にかけてJ史上初となる9季連続二桁ゴールを達成した。だが昨年は負傷の影響もあり、屈辱の1得点に終わる。
再出発の今季は、かつて浦和で師弟関係にあり、ゴールを量産した時代の指揮官だったミハイロ・ペトロヴィッチ監督の下、開幕から1トップの位置でスタメンに起用。2節のサンフレッチェ広島では、味方がボックス内で相手に寄せられてこぼれたルーズボールに、いち早く反応し、移籍後初得点。点取り屋らしい嗅覚を見せつけた得点で、J1通算得点も159に伸ばし、同2位の佐藤寿人氏が持つ161得点を超える日も近そうだ。
なお、興梠は鹿島でのプロ1、2年目にも23番を背負っている。本人は口にしていないが、新天地で「初心に返る」という意味が込められているのではないか。
C大阪・豊川雄太はテベス級、清水・鈴木唯人は岡崎級の活躍を
興梠と同じく鹿島でプロデビューを飾った過去を持つFW豊川雄太も、今季は心機一転。2年在籍したセレッソ大阪から京都サンガF.C.へ移籍した。そしてチームコンセプトのハードワークを理解し、開幕より左翼の定位置を掴む。
まだリーグ戦での得点はないものの、浦和との開幕戦では、チームを牽引する前線からのプレスで相手を苦しめ、1-0の勝利を手繰り寄せる一因となる。
豊川の背番号はC大阪では32、今季はプロ初の23。2つの番号を選んだ理由は、マンチェスターUやマンチェスターCで32番を付け、アルゼンチン代表では23番を背負うこともあったFWカルロス・テベスが憧れの存在だから。豊川は身長171㎝でテベスは173㎝、お互い小兵だが当たり負けしない部分は似ているだけに、テベス級の爆発が待たれる。
開幕から2戦連発を決め、ブレイク中の背番号23といえば、清水エスパルスのセカンドストライカー鈴木唯人。1月にはA代表に初招集された20歳の若武者は、プロ1年目は30試合、2年目は33試合に出場。3年目の今季は自信をつけ、強気にゴールに向かうプレーで、カウンターの起点になっている。
特筆すべきは2節・ジュビロ磐田戦での得点。速攻から約20mを独走するも、慌てることなく一瞬スピードを落としてGKの位置を把握し、狙いすませたシュートを沈めた。猪突猛進のように見えて、クレバーさも兼備。その証拠にラストパス本数も現在7本(J1全体12位)と、周りがよく見えている。
清水の23は出世番号。過去には岡崎慎司(スペイン2部カルタヘナ)、北川航也(オーストリア1部ラピード・ウィーン)が背負い、それぞれ日本代表へ上り詰め、欧州に羽ばたいた。今の勢いが続けば、鈴木も同じ道のりを歩んでも不思議ではない。
広島・鮎川峻、川崎Fマルシーニョは覚醒なるか?
鈴木と同期の広島の鮎川峻は、昨年プロデビューを果たしたばかり。身長164㎝ながら俊敏さを買われて、主に途中出場で起用され、19戦で1得点を挙げた。残り2戦では先発出場し、今季は1トップのファーストチョイス候補と期待されるも、ここまで出番は開幕のサガン鳥栖戦での1試合のみとくすぶっている。
それでも招集された3月9日のU-21日本代表の練習試合・対横浜FM戦では、巧妙な動き出しから2得点と猛アピールした。
なお、広島の23番もアタッカーこそ輩出していないが、駒野友一、田中マルクス闘莉王、青山敏弘と歴代日本代表が付けたことのある出世背番号。鮎川がブレイクする予感が漂う。
昨季ベルギーに渡った三笘薫の後釜として途中加入した左ウイングのマルシーニョも、今季は開幕・FC東京戦以来、出番が遠ざかっている。開幕から川崎Fは同ポジションを固定せず、これまで知念慶、宮城天、小林悠も務め、適任者がまだ見つかっていない。
この中で左翼が本職なのはマルシーニョのみ。スピードに長け、ドリブラーとしての資質は高いが、来日後1得点しか奪えていないのが、定位置奪取に至らない原因だと思われる。「奥さんと出会ったのが23日だから」と選んだ23番が、ゴールに直結するプレーで輝きを増すことが、リーグ三連覇への好材料にもなるはずだ。
世界に目を向けると、23番を付けた名手として思い出すのはデイビッド・ベッカムだろう。レアル・マドリード、ロサンゼルス・ギャラクシーで、この番号を背負った。
また、元日本代表の香川真司も、欧州ではドルトムントでの6季をはじめ、好んで23番を付け続けた。果たしてJリーグでは23番をメジャーにするスターが、この6人の中から現れるだろうか。
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