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絶滅危惧種のファンタジスタ、J1リーグで背番号10をつける継承者4人

2022 3/9 11:00椎葉洋平
セレッソ大阪の清武弘嗣,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

ファンタジスタ=背番号10とされる理由

イタリア語を語源とするファンタジスタは、「空想・幻想」という意味のファンタジア(fantasia)に人を意味する語尾(ista)をつけた言葉だ。つまり創造性あふれる、他人が思いつかないプレーをする選手への賛辞として使われる。

ペレ、ジーコ、ディエゴ・マラドーナ、ジネディーヌ・ジダン、リバウドら背番号10を背負った歴代の名選手によって、ファンタジスタ=10番というイメージが定着してきた。

日本人選手でいえば日本代表などで背番号10をつけた中村俊輔(現横浜FC)が代表的だ。日本人だけでなくセルティックFC(スコットランド)のサポーターが「ナカムラ」に魅了されたように、ファンタジスタは観る者の心をワクワクさせることができる。

子供が新しいおもちゃをもらった時のように、大人を童心にかえらせることができる。ファンタジスタには、ロマンがある。

しかし、近年はファンタジスタと呼ばれる選手が激減。創造性あふれる代わりに運動量や守備意識が低い選手が多かったために、プレーの強度が上がりスペースが大きく減少した現代サッカーの波に淘汰されつつある。

そこで今回は、2022シーズンのJ1リーグで背番号10を背負う18選手に注目。ファンタジスタ、もしくは創造性を持ちながらプレー強度などにも優れた「ネクスト・ファンタジスタ」はいるのだろうか。

2022シーズンのJ1リーグで背番号10を背負う18名

2022シーズンJ1リーグの背番号10


上記の選手達が、今シーズンのJ1リーグで背番号10を背負う18名。やはり各クラブの中心選手が名を連ねている。

日本代表のFWに君臨しているヴィッセル神戸の大迫勇也、マテウス・サヴィオ(柏レイソル)やカルリーニョス・ジュニオ(清水エスパルス)にマテウス(名古屋グランパス)といった非常に強力な外国籍選手、北海道コンサドーレ札幌の宮澤裕樹やアビスパ福岡の城後寿といったバンディエラなど、いかに「10番」が特別な番号かがわかるラインナップだ。

J1リーグのファンタジスタ

上記の18選手から創造性あふれるプレーをする選手を選ぶと、次の4人が挙げられる。

真っ先に名前を挙げるべきはセレッソ大阪の清武弘嗣だ。ボールタッチが柔らかく、直後に繰り出されるスルーパスで観る者を魅了する。抜群のテクニックを活かしたドリブルも、スピードで突破するのとはまた違った良さがある。

ドイツ1部の1.FCニュルンベルク、ハノーファー96でレギュラーを張り、スペイン1部の名門・セビージャFCに移籍した元日本代表は、今季ここまで3試合全てにスタメンフル出場。中村俊輔、名波浩ら日本が誇るファンタジスタの正当後継者といえるだろう。

ボランチやインサイドハーフでプレーすることが多いものの、川崎フロンターレの大島僚太もタイプとしては近い。よりテクニックとパスセンスに特化し、ボールをピタッと止めどんな体勢からでも長短のパスを操って相手選手の想像を超えていく。近年怪我がちなのが残念だが、誰がどう見ても巧いことがわかる選手だ。

今季ここまで2試合に出場しており、本来のパフォーマンスを出せれば再び日の丸を胸に付けてもなんら不思議ではない。ボランチでプレーする際はゲームメイクを行う選手を表す「レジスタ」に当てはまる選手だが、インサイドハーフで出場した際の積極的に攻撃に絡む姿と想像の範疇に収まらないプレーぶりはファンタジスタといえる。

ここからは現代的なファンタジスタ、「ネクスト・ファンタジスタ」ともいうべき2名をピックアップ。横浜F・マリノスのマルコス・ジュニオールは魅せるプレーや得点力だけでなく、守備にも大きく貢献できる選手だ。

前線であればどの位置でも活躍できる適応力を持ち、クイックネスと相手の裏をかくことに長けている。マルコス・ジュニオールのようにテクニックやパスセンスにとどまらないことが、創造性に優れた選手が活躍する方法だろう。

最後も同じく、「ネクスト・ファンタジスタ」の1人である荒木遼太郎の名を挙げたい。鹿島アントラーズの背番号10を背負う彼はドリブルと得点力が注目されがちだが、抜群のテクニックに加えパスセンスも一級品。つまり選択肢が非常に多いため、その時々に適したプレーができる。

これまでのファンタジスタとはタイプは異なるが、「観ていてワクワクする」選手をファンタジスタとするならば、間違いなくJリーグでトップクラスの1人だろう。ファンタジスタは少しずつ形を変え、これからもきっと生き残る。美しさでなく得点を奪う競技だとはいえ、人を魅せることもまたサッカーの要素なのだから。

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