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岐路に立つ名門・東京ヴェルディは育成と結果の狭間で苦境を乗り越えられるか?

2021 4/4 06:00KENTA
東京ヴェルディ時代の高木大輔Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

1969年創設の「オリジナル10」

ヴェルディの歴史は日本サッカー界の中でも古く、1969年に創設された「読売サッカークラブ」が前身。それ以来日本のトップクラスであり続け、1991年に開幕したJリーグへ初年度に加盟したいわゆる「オリジナル10」の一角だ。

当時は「ヴェルディ川崎」として三浦知良やラモス瑠偉らスター選手を揃え、ラテンの香りを漂わせる華麗なフットボールを展開して多くのタイトルを獲得。2001年に本拠地を神奈川県川崎市から東京へ移し、同時にクラブ名を「ヴェルディ川崎」から「東京ヴェルディ1969」に変えたが、現在もオールドファンから根強い人気を誇る稀有なクラブだ。

そんな名門・東京ヴェルディが今、岐路に立たされている。

新潟戦で7失点…今までとは違う苦戦

今シーズン、開幕5試合を終えて勝利は開幕戦のみ。残りは1引き分け3敗と苦しんでいる。もともとスロースターターで、2019シーズンも開幕5試合は1勝1分け3敗、2020シーズンは1勝2分け2敗。ただ、今シーズンは失点の多さが目を引く。

開幕戦の愛媛FC戦はクリーンシートを達成したが、2節から5節までの4試合で15失点。特に5節のアルビレックス新潟戦では大量7失点という屈辱を味わい、攻撃も不発に終わった。

今シーズンは通常の倍の4チームがJ3降格の憂き目にあう、かつてないサバイバル。点は取れるが失点が減らないので勝ちきれずポイントを落とし、気付けば残留争いへ。そんな光景が頭をよぎる。ヴェルディに何が起こっているのだろうか。

最優秀育成クラブ賞を受賞した「育成王国」

そもそもヴェルディとはどんなチームか。近年のヴェルディといえば「育成」だろう。試合を観ると、才能あふれる選手を育てることへの強烈なこだわりを感じる。そしてチームを率いる永井秀樹監督はクラブの独特なポリシーを体現する、「育成フェチ」とも呼ぶべき求道者だ。

もともとヴェルディユースは数多くの有力選手を輩出し続けてきた。最高傑作・中島翔哉をはじめ小林祐希、畠中槙之輔らは日本代表まで上り詰め、オランダ挑戦の経験もある高木善朗は現在アルビレックス新潟で覚醒中。現在ヴェルディの中核は永井監督がユースから引っ張り上げた山本理仁だ。

今シーズンの開幕戦、永井監督は17歳・阿野真拓を先発フル出場させ、当時中学三年生の15歳・橋本陸斗も後半34分から出場してのびのびとプレーしていた。開幕戦で出場したヴェルディユース出身選手は20人にも上り、全クラブの育成組織で最多だった。

実績が認められ、昨年は最優秀育成クラブ賞を受賞した。

求道者・永井秀樹監督「感動できる花壇をつくりたい」

2017年からヴェルディユース監督を任されていた永井監督が見せるのは唯一無二のサッカーだ。

「支配」がキーワード。ボールを保持しながらポジションレスに選手が移動し、およそ3人が1組となり連携して局面を崩し前進していく。選手同士が同じ絵を描いていないと成立しないサッカーだ。

理想のスタイルを実現させるためユースで独特なポジション名を使うことも話題になった。4-1-2-3のセンターバックを「クラウン」、アンカーを「リベロ」と呼ぶ。永井監督は「『何でもいいから勝てばいい』では先につながらないことも身を持って経験してきた」「綺麗な花が咲き乱れる、見た人たちが心から感動できる花壇をつくりたい」と語り、ヴェルディユースで咲かせた花を活かしてトップチームで大きくて美しい花束を作ろうとしている。

守備崩壊のロジック

育成と美しいスタイルと勝利、この3つのポイントを全て実現させる上でベースになるのは守備のはずだ。守備が整備されていてこそ挑戦が可能になる。

しかし現在は、特に被カウンター時の脆さが目立つ。ボール保持率が高いこともあり被攻撃回数は116.0でリーグで4番目に少ないものの、被シュート数17.4はリーグワースト3位、被チャンス構築率と被成功率はリーグワースト2位となっている。つまり少ない攻撃回数を効率よく枠内シュートまで持っていかれてしまっているわけだ。

2-4で敗れた第4節ツエーゲン金沢戦も、大敗した第5節アルビレックス新潟戦も、特に後半の早い時間帯から前線と後ろとの距離が一気に間延びしてしまっている場面が多く見られた。

FWが前で横幅を取りつつ相手ディフェンダーの近くまで張り付いているのに、ディフェンスラインが上がっておらず縦パスが通らない。ディフェンスラインを上げる間もなく前線の選手がチャレンジしてしまい、ボールを奪われてもすぐ奪い返せず空いた中央のスペースを使われカウンターを受ける。

真の意味で「支配」するためには守備の組織を構築することは避けて通れない。ここを永井監督と選手たちは整備できるか、もしくは育成へのこだわりをかなぐり捨て、個で守備を完結できてしまう強力なディフェンダーを新しく獲得するのか、そして再び果敢にチャレンジできるかが今後の注目ポイントだ。

育成、美しいスタイル、勝利。どれかを諦めて結果を狙うか。それともこの苦境の上でもすべてを勝ち取るために挑戦し、もがくのか。岐路に立たされた名門の選択は果たしてどうなるだろうか。

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