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群雄割拠 史上最も熾烈極まるJ2の注目チームと昇格争いの行方

2021 1/2 17:00KENTA
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史上最も過酷なJ2

「魔境」「沼」と呼ばれて久しいJ2。J1から降格してきたチームが飲み込まれ、なかなか昇格できない過酷なリーグだ。

そんな群雄割拠なJ2が2021年、さらに熾烈な戦場になる。コロナ禍の特例により、J3から昇格してきたブラウブリッツ秋田とSC相模原を加えた22チームでリーグ戦を行うが、コロナ禍の特例により昇降格プレーオフはなく、昇格は上位2チームのみ、降格は4チームという厳しい条件。1/5.5の確率で降格の憂き目にあう。

今まで以上に厳しいスケジュールなのに1試合の重みが桁違い。サポーターにとっても気が気でないだろう。

しかし、あえて今回はそんな2021年のJ2の昇格争いに絡みそうなチームを3つ予想してみたい。突如覚醒するかもしれないチーム、2020シーズン印象的な戦いを見せたチームをピックアップする。

曺貴裁新監督迎えた京都サンガ

京都サンガは日本屈指の名将・曺貴裁(チョウ・キジェ)監督を新しく迎えることが決定した。2019年8月、当時監督をしていた湘南ベルマーレでのパワハラ問題が発覚し解任、10月から1年間のS級ライセンスの資格停止を受け、その間は流通経済大学でコーチを務めていた。約1年半の真摯な取り組みが認められ再びJの舞台に戻ってきた。

流通経大の中野監督は「2019年末に会ったときは元気がなかった。指導現場に立つのが怖いと言い、人間不信になっていた。選手の能力を引き出す力がある。サッカー界の宝だし、堂々と復帰できる道を作りたい」と後押しし、指導力を高く評価。「流通経大は2部だが今年日本で1番強い」とまで語る。約1年半の充電期間を経てパワーアップして戻ってきた。

曺監督のサッカーはものすごくアグレッシブだ。選手の高い戦術理解と切り替えの早さ、豊富な運動量を担保に組織されたプレッシングを繰り出し、質の高いカウンターで仕留める。

裏のスペースに大きく蹴ってセカンドボールを拾い、走り勝つというイメージが強いかもしれないが、実は縦パスを入れるための仕組みが豊富で確実性の低い攻撃を続けるわけではない。

FIFAの発表によれば「2021年7月31日までに終わるコンペティションで交代枠5人を認める」とされており、まだ正式に2021年のJリーグで採用されるかは決定していないが、もし採用されれば最も恩恵を受けるのは彼らかもしれない。

J2屈指の守備戦術 松本山雅

2度のJ1経験がある松本山雅も優勝争いに絡む有力クラブの一つだ。

2020シーズン前半戦は新しく指揮を執った布監督の下で戦ったが大苦戦。前半戦最後の試合でホームでFC琉球に1-6と屈辱的な大敗を喫し20位で折り返すこととなったことを受け、監督を交代した。これが功を奏し強化部の責任者から新しく監督となった柴田監督の下、後半戦だけで計算すればリーグで5番目の好成績を達成した。

柴田・山雅の最大の特徴は巧妙なプレッシングだ。5-3-2システムの強みを最大限に活かした堅い守備を構築することに成功し、前半戦で21試合35失点だったものが後半戦では21試合17失点と半減。劇的に失点数が減った。長丁場のリーグ戦では、失点が少ないチームが上に行く。その点、守備が計算できる松本は手堅く上位に食らいついていけるだろう。

さらにコロナ禍の中、積極的な補強を敢行しているのにも注目したい。2019年度のチーム人件費は推定14億3000万円といわれており、現在J2に所属するクラブの中ではジュビロ磐田、大宮アルディージャに次ぐ3位だ。

新加入では水戸ホーリーホックから左サイドで印象的な活躍を見せた外山凌を獲得。さらに2020シーズン途中から加入し、替えの利かない活躍を見せていた佐藤和弘と前貴之をそれぞれ大分トリニータと横浜F・マリノスから完全移籍で獲得。重要な選手を的確に確保している。あとはスピードのあるストライカーを獲得できれば隙のない強力なチームになる可能性が高い。

覚醒の予感 アルビレックス新潟

筆者が昨季J2を追いかけていて非常にインパクトがあったのは、11位のアルビレックス新潟だ。2020年から就任したアルベルト新監督はそれまでトップチームでの指揮経験がなかったが、それを感じさせない魅力的なフットボールを見せていた。

守備では組織的なハイプレスを採用。ところどころ剥がされ失点を重ねてしまったことがシーズン終盤の失速につながったが、奪ってからの攻撃で飛び出していくショートカウンターは鋭かった。またボールを保持しての攻撃では3人1セットで動き、選手が孤立せずに高い質を発揮する確実性の高いチャレンジを繰り返した。

そして本間至恩という才能。左サイドで張っていたかと思いきや、試合途中に中央にポジションを変え、パスを引き出したり相手をかわして相手が中央に寄って来たらサイドへスルーパスなど、試合を通して消えている時間が減った。ドリブルポイントではJ2全選手中で1位を獲得。第35節のツエーゲン金沢戦は出色の出来で2-1で勝利した。

最後は7試合勝ちなしで4連敗という残念なシーズンフィニッシュだったが、2019シーズンのようなアタッカーの個人能力に依存する攻撃スタイルから完全に脱却した印象だ。

元北朝鮮代表の鄭大世は退団となったが、新しくセレッソ大阪からストライカーの鈴木孝司を獲得。J1で経験を積んだストライカーはアルベルト監督のスタイルにバッチリ適応するだろう。守備の練度が上がれば爆発する可能性を秘めたチームだ。

予想困難な2021年のJ2

J2はJ1以上に群雄割拠の過酷なリーグ。上記3チームが躓き、意外な新興勢力が現れてもおかしくない。22チームの中でたった2つの昇格枠を勝ち取るのは果たしてどのチームだろうか。

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