王者の新たなバンディエラ・大島僚太
いよいよJリーグが開幕する。20チーム中4チームが降格というかつてない過酷な戦いとなる今シーズンのJ1。そんな波乱含みのJ1に旋風を巻き起こすかもしれない5人の要注目人物をピックアップする。
チームの象徴だった中村憲剛が引退した王者・川崎フロンターレ。シーズンの開幕を告げる富士ゼロックス・スーパーカップを制し勝負強さを見せつけた。美しく、激しく、かつ合理的なそのスタイルをアップデートするために大島僚太の活躍は欠かせないだろう。
日本屈指のその実力は周知だが、あまり感情を表に出さない性格。「僚太から自分の意見を聞いたことがない。言ったことは忠実にこなすし、真面目でひたむきだけど、指示待ちの傾向が強かった」と中村憲剛は話す。
しかし、そんな期待に昨季は奪取ポイントでリーグ1位のデータをたたき出したフロンターレの巧妙なプレッシングの急先鋒として応え、背中で魅せた。クラブ生え抜きの大島が新たな「旗手=バンディエラ」となれるかどうかは今季の王者の要注目ポイントだ。
考えながら走る 東京の進化系ダイナモ・安部柊斗
FC東京の安部柊斗がルヴァンカップ決勝で魅せたパフォーマンスは衝撃的だった。
柏レイソルの右サイドを強襲するため、守備面で怪しいが卓越した突破力を持つレアンドロを左サイドに配置。その弱点をカバーする役割を長谷川監督から与えられた安部は、左インサイドハーフでレアンドロとチーム全体をサポートし続けた。結果、レアンドロが躍動し、チームはタイトルを手にした。
シーズン中に幾度かやっていた役割だったようだが、それを重圧のかかる舞台で完璧にこなして見せた。11kmを超す走行距離を誇るダイナモであると同時に、戦術的な役割をこなす頭のキレる仕事人。昨季は27試合に出場し主力として活躍したが、彼が更なる飛躍を遂げることがFC東京悲願のリーグ制覇への一番の近道だろう。
創設30周年 常勝軍団のストライカー・上田綺世
昨季終盤戦、鹿島アントラーズの上田綺世が覚醒を予感させた。センターフォワードのスタメンを掴み短期間で6ゴール。特に3-2で勝利した11月3日の横浜F・マリノス戦では斜め後ろから来たロングパスを完璧なトラップで収め、そのまま強烈なボレーシュート。スーパーゴールだった。
終わってみれば出場時間1145分間でゴールポイント33.16はJ1リーグ全選手中9位という素晴らしい数字だ(ゴールポイントがほぼ同じの8位小林悠は1316分間の出場)。
おそらく現在のJ1で最もオフザボールが上手いストライカー。ボールを受ける前に相手のマークを外す動きやスペースを見つけてそこへ走り込むタイミングが絶妙だ。ザーゴ体制2年目となりクラブ創設30周年を迎える今季、常勝軍団鹿島アントラーズにタイトルをもたらせるか。
雪辱に燃えるサイドアタッカー・仲川輝人
一昨年のJ1王者は、昨年厳しいシーズンを過ごした。超過密日程に加え、増え続けるケガ人。2019シーズンにリーグを席巻した独特なハイプレス戦術は研究され失点を重ね、得点は多いが失点も多く不安定。終わってみれば9位と大きく順位を落としてしまった。そんな横浜F・マリノスで最も苦しんでいたのが仲川輝人だ。
優勝した2019シーズンは15ゴールを挙げたが、ケガの影響もあり昨年は2ゴール。出場も18試合939分間に終わった。リベンジに燃える今季の目標を「23得点」と明かす。類稀な加速力を持つサイドアタッカーは、本格的に3-4-2-1に取り組みそうなチームの右サイドで輝けるか。
注目の戦術家、リカルド・ロドリゲスが赤い悪魔へ
復権に燃える浦和レッズはリカルド・ロドリゲスを新監督に迎えた。徳島ヴォルティスをJ1昇格させたスペイン人の戦術家だ。
攻撃時と守備時でフォーメーションを変える「可変システム」の使い手。攻撃時にはあるメカニズムのもとで選手がポジショニングを共有する「ポジショナルプレー」を取り入れていた。
戦術が完全に浸透した昨シーズンはJ2を席巻。攻撃回数はJ2最下位でもチャンス構築率は1位、シュート成功率も2位。同時に被攻撃回数もJ2で一番少なく被ゴール数も2番目に少ないというほぼ完璧な成績を誇った。若くて情熱的なロドリゲス監督は最も旬で、注目度はNo.1ではないだろうか。
レッズでカギを握るのは新キャプテン阿部勇樹だろう。9月で40歳になる大ベテランだが、鋭い危機察知能力などサッカーIQの高さが魅力。年齢を考慮すると出場時間が限られるかもしれないが、アンカーやセンターバックで可変システムのキーマンとなる可能性が大。新生レッズを躍進へ導くのは彼だ。
世界で最も拮抗したリーグといわれるJリーグ。いつどんなダークホースが誕生してもおかしくない。今年も目が離せないシーズンになりそうだ。
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