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スキージャンプ高梨沙羅、北京五輪金メダルへ立ちはだかるライバルは?

2022 1/12 06:00田村崇仁
高梨沙羅,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

新年早々、W杯今季初勝利で通算61勝目

ノルディックスキー・ジャンプ女子の25歳、高梨沙羅(クラレ)の「最大の武器」は身長152センチと小柄ながら、素早い飛び出しから空中で無駄なく浮力を受けて距離を伸ばす技術にある。

過去の五輪は大本命だった2014年ソチ大会が初出場の重圧や不利な風も受けて4位、前回の2018年平昌大会は銅メダル。自身3度目の舞台となる2月の北京冬季五輪では悲願の「金」へ照準を定め、上り調子で大一番を迎えられそうだ。

2022年1月1日、スロベニアのリュブノで行われたワールドカップ(W杯)個人第9戦(ヒルサイズ=HS94メートル)では合計266.8点で新年早々に今季初優勝を果たし、男女歴代最多記録を持つW杯勝利数は通算61勝目、表彰台回数は通算110度目に伸ばした。

1回目はHS越えの最長不倒95メートルで首位に立ち、2回目は不利な追い風が吹く中89メートルにまとめて逃げ切った。国際スキー連盟(FIS)によると、試合後のインタビューでは「新しい年に優勝して良いスタートが切れた」と英語で喜びを口にした。

最大のライバルはオーストリアの新鋭クラマー

前回の平昌五輪女王、マーレン・ルンビ(ノルウェー)が今季は参戦せず、北京大会で最大のライバルとなるのが20歳の新鋭、マリタ・クラマー(オーストリア)だ。

昨季のW杯は13戦中、最多の7勝。今季も開幕戦で勝利し、4連勝を含む5勝で総合順位でも首位を独走する。

身長171センチと体格にも恵まれ、力強い踏み切りから高いフライトを取れるシンプルなスタイルが持ち味。高梨とタイプは対照的だが、風の乱れにも強く、いま最も勢いがあるジャンパーと言えるだろう。

平昌後はゼロから再出発、4年間の集大成を

テレビで見た山田いずみさんの姿に憧れてジャンプに出合ったのは8歳の頃。中学時代から約10年にわたり、スキー・ジャンプ女子の世界を引っ張り続けた高梨は平昌大会後、世界の強豪に勝つためゼロから再出発した。

欧州勢に対抗しようと、筋力トレーニングにも着手したが、平昌後の2シーズンはそれぞれ1勝どまりと、長年積み上げてきたジャンプの精度を狂わせた時期もあった。

それでも助走路での姿勢、テイクオフと呼ばれる踏み切りの瞬間、空中姿勢、テレマークを入れる着地まで精密な動きの細部にこだわり、ようやく4年間で再構築した「ジャンプの完成形」が見えてきている。

子どもの頃に原点回帰し、ジャンプの楽しさも取り戻しつつあるようだ。初出場した2014年ソチ大会で五輪の重圧に苦しみ、流した悔し涙は忘れていない。当時は「すごく悔しいけど、そう思うくらいならもっともっとレベルアップして戻ってきたい」とのコメントを残した。

W杯最多勝利の実力者が山あり谷ありの経験値を生かし、3度目の大舞台でどんなジャンプを見せられるか。ジャンプ界を背負う先駆者の底力に注目が集まる。

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