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スキージャンプ高梨沙羅が復調した理由、歴代最多109度目の表彰台

2021 4/4 11:00田村崇仁
高梨沙羅Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

男子の「超人」アホネン超えの偉業達成

ノルディックスキーのワールドカップ(W杯)ジャンプ女子は今季のシーズンが終了し、2018年平昌冬季五輪銅メダリストで24歳の高梨沙羅(クラレ)は最終戦でニカ・クリジュナル(スロベニア)に逆転を許して4季ぶりの個人総合優勝を逃して2位だったが、強さを完全に取り戻した。

今季3勝を挙げて男女を通じて歴代最多の通算勝利数は60に到達。3月26日にロシアのチャイコフスキーで行われた個人第12戦では2位に入って通算109度目の表彰台に立ち、世界選手権で金メダル5個を手にして「フライング・イーグル」の異名を持つ男子のヤンネ・アホネン(フィンランド)と並んでいたジャンプの歴代最多記録も塗り替えた。

ジャンプ女子のW杯は2011~12年シーズンに発足。高梨は15歳だった2012年1月に初めて表彰台に立ち、出場157試合目で新記録を樹立した。

スキージャンプのW杯表彰台回数


2015~16年シーズンに14勝、2016~17年シーズンに9勝し、2017~18年シーズン以降は2勝、1勝、1勝と足踏みが続いていたが、また一つ金字塔を打ち立て、来年の北京冬季五輪へ復調を印象付けるシーズンとなった。

復調の要因は助走スピードの向上

2011~12年シーズンから10季連続で勝利を挙げているのは高梨だけ。今季の復調を示す変化は、飛距離に直結する助走速度の向上にある。

2月19日、ルーマニアのルシュノブで行われた個人第9戦で92メートル、99メートルの合計239.2点で通算60勝目を挙げると、国際スキー連盟(FIS)の公式サイトで高梨はこうコメントした。「自分のテクニックがどんどん向上し、今季は結果とジャンプの両方にとても満足している。女子のレベルが年々高まっているので、表彰台に立つのはさらに難しくなっている」。

この大会の助走速度は体格で上回る長身の海外勢にも引けを取らず、1本目時速85.5キロ、2本目は時速86.4キロ。身長152センチと小柄な高梨は速度が出にくいハンディを補うため、平昌五輪後から自分のスタイルをゼロからつくり直し、フォームを改善。最近は速度が平均値を上回ることも珍しくなく、過去2シーズンと比べて踏み切りでの力の伝え方が格段に上達した。ジャンプ台が変わっても安定した成績を残せていることが充実ぶりを物語る。

視線の先は北京五輪で日本女子初の金メダル

過去4度のW杯総合優勝を果たした高梨が見据える視線の先は、来年の北京冬季五輪での日本女子初の金メダルだ。助走スピードの改善だけでなく、空中でさらに効率良く進むフォームも研究しており「理想のジャンプ」はまだ先にある。

一方、初のW杯総合優勝を遂げた21歳のクリジュナルや今季13戦中7勝の19歳、マリタ・クラマー(オーストリア)らライバルも一段と強くなっている現実もある。世界の勢力図も大きく変化し始めた中、W杯総合2位の結果は数字以上に価値がある。

来季は進化の先に、高梨がどんなジャンプを見せてくれるか興味は尽きない。

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