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南アフリカ最多タイ3度目Vで際立つNZの存在感【ラグビーW杯】

2019 11/5 15:19藤井一
ラグビーワールドカップ ニュージーランド代表Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

準決勝でニュージーランドを圧倒したイングランドだが、決勝はほとんど何もできず

南アフリカは強かった。決勝トーナメント3試合で失ったトライは準決勝のウエールズ戦の1つだけ。ダークグリーンの分厚い壁を突破するのは容易ではなかった。圧倒的なフィジカルとタックルの強さが際立つ勝利だ。

願わくば予選プールで敗れているニュージーランドともう1回対戦するのも見たかったが、そのニュージーランドに完勝したイングランドを封じ込めた。イングランドにとって試合開始早々、3番のカイル・シンクラーが4番のマロ・イトジェと激突し、交代を余儀なくされた不運はあったが、南アフリカにほとんどのスクラムで制圧され、何度もコラプシングなどの反則を犯した。

南アフリカは着々とPGで加点し、リードを広げ、終盤、マカゾレ・マピンピ、チェズリン・コルビの両WTBのトライで突き放した。堂々たる優勝だった。

3位決定戦は、ニュージーランドが鬱憤晴らす快勝

3位決定戦のニュージーランド対ウエールズは、両チームとも準決勝からガラッとメンバーを代えた。4年後を見据えた要素も間違いなくあったが、その内実は微妙に違っていた。

大会前の8月下旬、ランキング1位になったことでもわかるように今回のウエールズは、ベストメンバーなら初の決勝進出、そして優勝も狙えるレベルにあった。

しかし、ワールドカップ前、正SOガレス・アンスコムを負傷で欠き、それでも予選プールは全勝で勝ち上がったが、予選から決勝トーナメントへと勝ち進む中で中心選手が次々負傷。準決勝はアラン=ウィン・ジョーンズ主将の強烈なキャプテンシーの下、南アフリカと真っ向フィジカル勝負を挑んだが、16-19で惜敗、この試合では決定力のあるWTBジョージ・ノースも負傷、ベストメンバーから大幅に変更せざるを得なかった。

一方のニュージーランドは、完敗だったイングランドとの準決勝から、新たなモチベーションを持たせる意味もあったのだろう、もともと層の厚いニュージーランドは31人のスコッド全員の能力にあまり差がないこともあり、代わって出場する選手にも活気がみなぎっていた。そして勝負は前半で決した。

ほぼ1週間に1試合のペースで7試合戦い、しかも、決勝トーナメントに入ってから3連勝しなければラグビーワールドカップ(以下RWC)は優勝できない。そのためにはスコッド31人の誰が出てもベストメンバーに近い選手層が必要なことを今回のウエールズの戦いぶりが改めて教えてくれる。

意外に語られていないRWCでのニュージーランドの存在感

ところで、RWCは1987年に始まって9回目とまだ歴史は浅いが、今回も常に“王国”の枕詞で呼称されたニュージーランドは、今までほとんどの大会で優勝候補の筆頭である。そのニュージーランドは過去3回優勝しているが、それ以外の国が優勝した6大会において、ニュージーランドに直接勝ったのは2か国しかない。

今回のイングランドもそうだが、準決勝以前でニュージーランドに勝つと、その次の試合で負けるケースがほとんどなのだ。これはニュージーランドに勝つにはそれだけエネルギーを要し、そこからほぼ1週間後に行われる試合に、再度高いパフォーマンスを発揮することがとても難しいということを意味している。

ちなみにニュージーランドに勝って優勝したのは1991年大会のオーストラリアと1995年大会の南アフリカ。南アフリカは決勝でニュージーランドを延長の末下して優勝しているので、準決勝以前でニュージーランドに勝ってそのまま優勝したのはオーストラリアだけだ。

実はこの1991年大会、ニュージーランドが優勝候補の筆頭ではなかった数少ない大会だった。FWに若手のLOジョン・イールズ、FLウイリー・オハフェンガウェ、BKはSHニック・ファージョーンズ、SOマイケル・ライナー、WTBにデヴィッド・キャンピージなど役者が揃っていたオーストラリアは前評判が高く、その実力通り準決勝でニュージーランド、決勝でイングランドを下し、栄冠をつかんだ。

さらに付け加えると91年、95年はラグビー(ユニオン)の統括団体であるインターナショナルラグビーボード(現在のワールドラグビー)がプロ選手を正式には認めていない時代で、RWCがプロの大会となって以降、ニュージーランドに勝って優勝した国はまだないのである。

それだけラグビーではニュージーランドが世界の中心的な国であることをRWCの記録が物語っている。もちろん、これが今回の南アフリカ3度目の優勝の価値を下げるものではない。南アフリカの強固なディフェンス力は世界一と呼ぶにふさわしいものであった。

2023年大会以降、ニュージーランドを直接下し優勝する国は現れるのか?ということにも注目してみたい。

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