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データ上も堅守光った南アフリカ、タックル成功率92%

2019 11/5 17:00田村崇仁
優勝した南アフリカⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

松島は5トライで3位

ラグビー界の巨人とたたえられる「スプリングボクス」が輝きを放った。4年に1度、ラグビー世界一を決める第9回ワールドカップ(W杯)日本大会は11月2日、日産スタジアムでの決勝で南アフリカがイングランドを32-12で破り、2007年以来3大会ぶりの頂点に立った。

ラグビー王国、ニュージーランドに並ぶ最多3度目の制覇。「人種の融合」の象徴として有色人種が10人を超え、名実ともに「虹の国」の代表となったチームはデータ上でも堅守を証明する圧巻の強さだった。前日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ監督率いるイングランドは2003年以来2度目の制覇を逃した。

大会得点王には69得点を挙げた南アフリカのSOポラードが輝き、ウェールズのWTBアダムズが7トライでトライ王。アジア初開催の今大会で、史上初の8強入りで目標を達成した日本はWTB松島幸太朗(サントリー)が5トライで3位、福岡堅樹(パナソニック)が4トライで4位タイとなった。司令塔のSO田村優(キヤノン)は51得点で4位だった。

得点ランキングⒸSPAIA

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ラインアウト全て成功

2メートルを超える長身と巨漢のFW陣をそろえた南アは持ち前の堅守とセットプレーの安定感が決勝でも際立った。タックル回数はイングランドの約1.5倍の158回ながら、成功率は相手を上回る92%。前半30分のピンチでは自陣ゴール前の約50センチの攻防で連続攻撃を食い止め、ノートライに封じた。

ボールを持って進んだ推進力を測る距離は南アの369メートルに対し、イングランドは201メートル。攻撃の起点となるセットプレーは17回全て成功し、日本戦でも強さを印象付けたラインアウトの成功率が100%。スクラムでも強力FWが積極的に押し込んで何度もペナルティーを誘い、ポラードのPGで得点を重ねた。反則数は南アが8回で、イングランドは10回だった。

南アはキックも巧みに活用し、SHデクラークやポラードのパントキックは相手の19回を上回る24回。リードを広げた後半は南アが誇る快足WTBのマピンピとコルビが1トライずつ挙げた活躍も光ったが、キックをさらに増やして自陣での戦いをできる限り避けながら時間を消費した。

日本はタックル数5位で進化証明

9月20日に始まったW杯は全国12会場で日本列島を熱狂させ、44日間の戦いを終えて閉幕したが、日本勢の活躍は大会データにも表れた。

個人別のタックル数はピーター・ラブスカフニ(クボタ)が68回で5位、ジェームス・ムーア(サニックス)は67回で6位。チーム別でも688回で5位となり、体格で上回る「ティア1」と呼ばれる強豪にも積極的な防御を仕掛け、以前より大幅な個々の能力アップでパワー負けせずに対抗できる実力を証明した。

タックル数ランキングⒸSPAIA

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チーム別の得点は118点で8位、トライ数は13回で11位。パスやスクラムの進化で攻撃の幅が広がった成長ぶりを示した。1次リーグのスコットランド戦で体勢を崩されながらオフロードパスを3度つなぎ、プロップ稲垣啓太(パナソニック)が代表初トライを決めた場面は今大会のハイライトの一つになった。

PGは11回で全体3位となり、FW陣の奮闘もあって敵陣で反則を誘う場面が増えたことを物語る。4年後のW杯フランス大会へ、日本代表のリーチ・マイケル主将(東芝)は「4強以上」を次の目標に掲げた。日本が夢の優勝杯「ウェブ・エリス・カップ」を掲げる日は来るのか。8強の先へ―。次のステージに向けた新たな戦いはもう始まっている。

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