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ラグビーW杯日本大会は世界的な普及に道開く「過去最高の大会」

2019 11/9 17:00Takuya Nagata
2019年ラグビーワールドカップのロゴⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

大会、日本代表ともに大成功

2019年ラグビーワールドカップ日本大会が閉幕した。アジア初、そしてティア1(強豪国)以外で初めて開催され、9月20日の開幕から11月2日の決勝戦まで約1カ月半、熱い戦いが繰り広げられた。

大会の序盤で日本の高温多湿に、多くの代表チームが悲鳴を上げたかと思えば、決勝戦を行う頃には、少し肌寒いくらいの気温になった。大会中に令和元年台風第19号ハギビスが直撃しプールステージ3試合が中止に追いやられたが、中止試合が出るのもW杯初だった。

それでも、国内外から多くのファンが集い全試合でほぼ満員、観客動員数は中止の試合を除いても170万人超えの大成功。ラグビー日本代表もラグビー史に新たな歴史を刻み新たな時代の到来を感じさせる大会となった。

南アフリカ優勝の意義

南アフリカが今のチームで見事にW杯3度目の優勝を果たしたことは社会的にも意義がある。黒人選手の多いアフリカの国ながら、選手が白人ばかりで、以前はアパルトヘイト(人種隔離政策)の象徴とも言われていたスプリングボックス(南アフリカ代表愛称)が、史上初の黒人キャプテンであるシヤ・コリシが率いて優勝したのだ。南アフリカにとって計り知れない喜びとなったはずだ。

故ネルソン・マンデラ元南アフリカ大統領が人種を融和させ、自国開催のワールドカップで初優勝した際は「インビクタス/負けざる者たち」という映画になった。今回の戦いぶりもドラマチックで、映画化されてもおかしくないくらいの社会的インパクトがある。コリシ主将がウェブ・エリス・カップを横浜の空に掲げた姿は絵になった。

初の完全優勝を逃しての世界一

南アフリカは他にも初となる記録を残した。

優勝回数でも最多タイとなりニュージーランドと並んだ南アフリカだが、今大会のプールBで対戦したニュージーランドに23–13で破れている。その後ニュージーランドは、準決勝でイングランドに敗戦。そして決勝戦で南アフリカがイングランドを撃破し6勝1分けで優勝。南アフリカは全勝せずに優勝した初めての国となった。

しかし、それが南アフリカの栄光を曇らせることはない。ラグビーワールドカップに新しい記録が加わったということだ。

新興国の突き上げも顕著、実力差拮抗

今大会を終えて思うことは、各国の実力が拮抗してきているということだ。日本が全勝でベスト8に入るということは、一昔前では、想像も出来ないことだった。

チケットは計184万枚を売り上げ、ほぼ完売状態。ワールドラグビーのサー・ビル・ボウモント会長は、32年間のラグビーワールドカップ史上、「最高の大会」と日本大会を総括した。

世界の統括団体であるワールドラグビーは元々1886年に、インターナショナル・ラグビー・フットボール・ボード(IRFB)として発足し、1998年にインターナショナル・ラグビー・ボード(IRB)にマイナーチェンジしたが、2014年に全く異なる現在の名前になった。伝統を重んじるラグビーの統括団体が由緒正しい団体名をガラリと変えたことは、大きな衝撃だった。

「インターナショナル」を「ワールド」に置き換えた点がその意図を物語っている。国際的なスポーツとはいえ、一部の国のみで盛り上がり、世界的にはラグビーがほとんど普及していない国もある。この改名は、保守的になるのではなく、世界に打って出るという決意表明だったのではないだろうか。その最初の歩は2019年日本大会で大きな成果として表れたということが出来るだろう。

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