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【スポーツ×ツーリズム】第4回 スポーツツーリズムの可能性①

2018 9/28 15:00藤本倫史
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スポーツイベント開催とスポーツツーリズムの意義

前回は、スポーツツーリズムと地方創生について述べた。今回はプロスポーツクラブ設立や大規模なスポーツイベント、スポーツ合宿を開催・誘致をしていない地域の事例を見ていく。

私はこのような地域こそスポーツツーリズムの経済効果や社会的効果の伸びしろがあるのではないかと考える。それはなぜか?何もしていないからこそ、新たなことに挑戦でき、全国の成功事例や失敗事例を比較検討しながら進めることができるからだ。

遅れているからとネガティブなイメージを持つより、スポーツで地域活性化を行いたいと本気で思っている地域は積極的に行った方がいいのではないか。私は今回、居住している広島県福山市を事例に、これからのスポーツツーリズムについて考えようと思う。

福山市でもスポーツイベントは行われており、最も大きいイベントとして市民を中心とした約7500人が参加する『ふくやまマラソン』がある。日本各地で開催されるスポーツイベントでマラソン大会はメジャーと言える。

この火付け役が2007年の東京マラソンだ。現在ではフルマラソン大会だけで約200大会、これにハーフマラソンなどのイベントを加えると2,000以上の大会数になる。これを見る限り日本各地で行われていることがよくわかる。

一方、問題も起きている。ブームにより人気大会と不人気の大会がはっきりと分かれ、参加者が定員に満たず、赤字を出す大会も増えている。また、税金問題も大きな問題で、イベントに多額の税金が投入されることも多く、市民の理解も不十分なまま継続されている大会なども多い。となると、やはりこのコラムで書いているように、資金の回し方と、参加者の満足度を高めていくマネジメントと組織作りが必要になってくる。

その時に気をつけなければならないのが、スポーツツーリズムの観点から域外からの経済効果を狙う外向けのイベントなのか、市民の健康促進やコミュニティ醸成を行うような住民サービスを含めた内向けのイベントなのかをはっきりさせなければならない。つまり、企画をする時の基本でもある「目的は何」で「ターゲットは誰」なのかを明確にするということだ。

各地でマラソン大会が開催されてはいるが、地域ごとに特徴や課題は違うため、全ての大会が東京マラソンのように多くの参加者と経済効果を生むわけではない。だからこそ、大会開催の意義を考えなければならない。

私は『ふくやまマラソン』の経済効果について共同研究を行った昨年、経済効果の数字が重要ではなく、地域の特性に合わせた大会の開催をし、何を目的・目標に合わせるのかで大会の効果が計れるのではないかと考えた。

大会開催の目的として、経済効果だけでなく地域コミュニティやアイデンティティの醸成も含んでいるのであれば、主催者側はその辺りに関した質問項目をアンケートに加え、測定する。この部分で高い数値が出れば、大会の効果も高く、税金を投入した意義も説明できるからだ。

よくメディア等で経済効果の推計値が公開されるが、皆さんもイベント間での単純比較をするのではなく、地域の特性を見極め経済効果では測れない部分も見ながら、スポーツイベント開催とスポーツツーリズムの意義を考えてみて欲しい。

次回はふくやまマラソンの分析を行っていきたい。

《ライタープロフィール》 藤本 倫史(ふじもと・のりふみ) 福山大学 経済学部 経済学科 講師。広島国際学院大学大学院現代社会学研究科博士前期課程修了。大学院修了後、スポーツマネジメント会社を経て、プランナーとして独立。2013年にNPO法人スポーツコミュニティ広島を設立。現在はプロスポーツクラブの経営やスポーツとまちづくりについて研究を行う。著書として『我らがカープは優勝できる!?』(南々社)など。

【参考文献】
藤本倫史、藤本浩由、南博「中核市におけるスポーツ振興の現状と課題」『日本都市学会年報』 vol.50、pp.109-117、2017 藤本浩由、藤本倫史「中核市におけるマラソンイベントの経済効果推計の意義と課題」『日本都市学会年報』vol.51、pp.277-283、2018