第2次大戦中の米軍で始まり、本場NFLも五輪後押し
2028年ロサンゼルス五輪の追加競技として世界100カ国以上で親しまれる「フラッグフットボール」の採用が正式に決まった。競技人口は約2000万人とされ、五輪で初めての実施となる。
スポーツ大国の米国で最も人気がある競技の一つ、アメリカンフットボールが起源となって生まれたスポーツで「タックル」の代わりに、選手の両腰につけた「フラッグ」を取ることから「フラッグフットボール」と名付けられた。パスやランでタッチダウンを奪うのは同じだが、肉弾戦のアメフトから接触プレーをなくした安全性も魅力だ。
国際連盟の資料によると、第2次大戦中の米軍でレクリエーションとしてけがを避けるために始まったとされ、米メリーランド州で最初の試合が開催されたと言われている。
世界に3億人を超えるファンを持つ米プロフットボールNFLも「ビジョン28」を立ち上げて五輪を後押しする姿勢を示しており、グッデル・コミッショナーは「全ての選手にとって五輪で国を代表するというのはとてつもない名誉なことだ。今回の決定は数百万人の世界中の若者がプレーするきっかけになると確信している」とコメントした。
特に近年は女性への広がりも目覚ましく、米国では知らない人がいないともいわれる身近なスポーツ。教育の場や休日の余暇でも楽しまれており、五輪での地位を長期的に確保する構えだ。
タックルの代わりにフラッグ奪う安全性、1チーム5人の頭脳戦
基本ルールはアメフトのように楕円球を使い、パスやランを使って1チーム5人の対戦で得点を競うゲーム。4回の攻撃権を使い切ると攻守が交代する。チームは攻撃の際、作戦会議(ハドル)を行うのが特徴で、カードゲームのような頭脳戦ともいわれる所以である。
フィールドはアメフトの半分程度で、ヘルメットなど防具が不要な安全性もメリット。サッカーのフリーキックのような「セットプレー」を繰り返して得点を競い合う。
守備側は戦略を読んでタックルの代わりにボールを持つ選手のフラッグを取ったり、相手パスをインターセプトしたりすることで失点を防ぐ。
戦略性が非常に重要なスポーツであることを踏まえると、体格差でハンディがある日本に向いているとの専門家の見方もある。
女子は世界大会5位、他競技から転向組も歓迎
日本には1990年代後半から本格的に伝わり、比較的まだ新しいスポーツ。アメフトの戦略性を生かしつつ、少人数で安全に楽しめることで人気も広がりそうだ。
2022年の国際総合大会、ワールドゲームズで初採用され、日本女子は8チーム中5位だった。日本は男子が世界ランキング11位、女子は世界ランク6位。男子のトップ3は米国、メキシコ、パナマ、女子は米国、メキシコ、オーストリアという顔触れだ。
男子日本代表は植松遼平、女子日本代表は近江佑璃夏らが中心となり、企業でフルタイム勤務しながら活動する選手も少なくない。
急ピッチの選手強化に向け、今後は競技の起源となったアメフトやラグビー、バスケットボール、ハンドボールなど他競技出身の転向組にも門戸を開く方針を整えていく。
日本でフラッグフットボールは「思考判断力」「コミュニケーション力」「体力」の3本柱を育むと評価され、2020年度から小学校の新学習指導要領にも掲載されたが、国内の競技人口はまだ約2500人にとどまる。
一方で日本協会によると、全国の小学校で約3分の1に当たる約6700校が既に実施し、急速に普及も進んでおり、21世紀に広がる新しい五輪スポーツとして飛躍が期待されている。
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