スポーツクライミング、サーフィンも昇格
2021年夏の東京五輪で開催国枠の追加競技としてデビューした若者に人気のスケートボード、スポーツクライミング、サーフィンの3競技が、2028年ロサンゼルス五輪で陸上や水泳、体操などと並ぶ実施競技に事実上「昇格」した。
対照的に大会組織委員会が提案できる同じ追加競技だった野球・ソフトボールと空手は今回選出されず、明暗を分けた形だ。
国際オリンピック委員会(IOC)は12月9日の理事会で、ロス五輪の実施競技として28競技を選出。バッハ会長は「都市型スポーツ」と呼ばれるスケボーなど3競技について「いずれも米ロサンゼルスのルーツや文化に深く根差している。若い世代に焦点を当てたスポーツであり、東京大会の成功にも大きく貢献した」と高評価した。
野球・ソフトと空手の残された道は、ロスの大会組織委員会が2023年に提案できる「追加競技」に入れるかどうか。しかし大会全体の選手数は1万500人と制限されており、2024年パリ五輪でデビューするブレイクダンスを含めて「狭き門」の争いとなる。
都市型スポーツは五輪に新風、若年層のデジタル戦略も
スケボーと言えば、10代のアスリートが勝ち負けや国籍を超えて互いの技をたたえ合うスポーツマンシップが五輪に新たな風を吹き込んだ。
ともすれば勝利至上主義やメダル至上主義が色濃い伝統の五輪競技とは一線を画し、スポーツや五輪の原点とは何かと改めて思い起こさせるストリート文化が新鮮でもあった。スケボーの日本勢は東京五輪で金3個を含む計5個のメダルを獲得している。
IOCがイチ押しのスケボーなど3競技は2024年パリ五輪でも行われ、これで3大会連続の採用が決定。五輪離れを懸念し、若い世代への訴求力を重視するIOCのデジタル戦略にも合致する流れが生まれている。
都市型スポーツは音楽やファッションとも融合し、スマホの動画で各国選手が技を学び合いながら手軽に屋外や路上などで楽しめる雰囲気が魅力。スタジアムや体育館を必要とせず、会場整備や運営で大幅にコストを削減できる利点もある。
国際サーフィン協会のアギーレ会長は「五輪の美しい波に乗って、また一つ素晴らしい瞬間が訪れた。このスポーツが独特な資質を持ち、五輪競技にふさわしいと支持された」との声明を出した。
近代五種やボクシング、重量挙げは保留扱い
一方、競技から馬術を除外して新種目(未定)を採用する近代五種、組織運営が問題視されているボクシングと重量挙げは「保留扱い」とされ、条件付きで2023年のIOC総会で実施競技に加わる可能性を残した。
近代五輪の創始者クーベルタン男爵が考案した近代五種は、五輪では1912年ストックホルム大会から実施され、100年以上の歴史を誇りながら近年は人気が低迷。東京五輪でドイツのコーチが馬をたたき、出場資格を剝奪された国際的な問題も影を落とし、1人の選手が水泳、フェンシング、馬術、射撃とランニングを行う現行方式から馬術を除外し、代替種目を検討すると発表した。
英メディアは馬術の代わりに自転車が導入されると報じたが「もし馬術が自転車に置き換わったら、ほぼトライアスロン」と競技存続に危機感を口にする声も出ている。
不祥事が相次ぐボクシングと重量挙げの2競技を巡っては、バッハ会長が「問題児」と呼び、深刻な懸念を表明。国際ボクシング協会(AIBA)にはロス五輪の実施競技に加える条件として、財政の透明化やジャッジの不正排除を要請し、薬物違反が後を絶たない国際重量挙げ連盟(IWF)には2024年パリ五輪の各国出場枠をドーピング違反に応じて制限することを求めた。
ロス五輪はラクロスやクリケットも候補?
最後に残された追加競技で、野球関係者は本場米国で行われる2028年ロス五輪での復活に期待を寄せるが、安閑としていられないのが実情だ。
チーム競技の野球・ソフトは必然的に選手数が多くなり、米大リーグもこれまで五輪参加に非協力的だった。1万500人の選手数上限が思わぬ「敵」になる可能性もある。
米ニューヨークのストリート文化として発展した都市型スポーツのブレイクダンスも有力候補の一つ。このほかラクロスやクリケットも五輪競技入りを目指しており、米国のルーツに根差した「開催国枠」でどの競技が提案されるのか水面下の綱引きが続きそうだ。
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