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ブレイクダンスの採点方法やルール、初実施パリ五輪へ福島あゆみが世界一

2021 12/10 06:00田村崇仁
福島あゆみ,提供:公益社団法人日本ダンススポーツ連盟
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提供:公益社団法人日本ダンススポーツ連盟

女子決勝は日本人対決、湯浅亜実に勝利

2024年パリ五輪で初めて実施されるブレイクダンスで日本勢の強さが注目されている。

「ブレイキン」とも呼ばれ、1970年代に米ニューヨークで生まれたとされるストリートダンスの一種。逆立ちや頭を支点に回転する全身を使ったアクロバティックな踊りが特徴で、DJが流す音楽に合わせて即興で踊る1対1の「バトル」形式で実施するが、比較的シャイとも言われる日本人がなぜ世界最強なのか―。

12月4日、パリの名劇場シャトレ座で行われた世界選手権の女子は日本人同士の決勝となり、京都市出身で38歳の福島あゆみ(ダンサー名・AYUMI)が湯浅亜実(ダンサー名・AMI)に3―1で勝ち、初の世界一に輝いた。

22歳の湯浅は2019年の第1回大会(中国・南京)覇者で日本勢が2大会連続で頂点に立った形だ。その戦いを見ると、小柄な日本人でも圧倒的なテクニックと表現力、音楽に合わせた即興力で勝負できる世界観があった。

基本技はフットワークやパワームーブ

世界ダンススポーツ連盟によると、今大会には50以上の国と地域から男女合計で約200人がエントリー。原則15~18歳を対象とした2018年ユース五輪(ブエノスアイレス)で初めて採用されたブレイキンはまだ「スポーツ」としての歴史も浅いが、若者に人気のスケートボードやスポーツクライミングなどと同じ都市型スポーツの一つ。大きな特徴は音楽を流すDJや司会進行役のMCがいる点だ。

音楽は多くの場合に即興で流され、選手は大会でダンスネームの愛称を名乗る。基本技は①立って踊る「トップロック」②かがんだ状態で足技を繰り出す「フットワーク」③頭や肩など全身を使って回ったり跳ねたりする「パワームーブ」④ピタッと止まる「フリーズ」―という4要素。

日本の第一人者、福島は派手な大技はなくても自らのスタイルを貫き、巧みなフットワークや変幻自在なパワームーブでジャッジや観客の心をつかんで世界の頂点に立った。

採点評価は技術、表現、構成、戦術性

もともと米国のヒップホップ文化として発展したブレイキンは縄張り争いを繰り広げていたギャングの抗争で、暴力ではなく踊りで平和的に対決するようになったのが始まりといわれる。日本は1980年代に米国からいち早く「輸入」し、人気テレビ番組「ダンス甲子園」も追い風となり、世界の強豪国に成長した。

従来は「どっちが格好いいか」「どっちが音楽に合っているか」などジャッジの主観に頼っていたが、ユース五輪では技の難易度をチェックする「身体」、音楽と調和した姿勢を見る「解釈」、独創性や個性を比較する「芸術」の3点を柱とした新基準を試験的に導入した。「格好良さ」の尺度から採点制度を進化させ、パリ五輪に向けて整備されていく見通しだ。

日本国内での評価基準は技術、表現、構成、戦術性の四つで、各項目がさらに細分化されている。意表を突く技は「サプライズ」として加点対象にもなる一方で、同じ技の繰り返しなどは減点対象。選手は音楽に合わせた即興的な構成力と表現が問われるため、アクロバティックに激しく動きながら頭もフル回転させる必要がある。

河合来夢ら有望選手が続々、2年目のDリーグは「百年構想」

パリ五輪でブレイクダンスなど都市型スポーツは市中心部のコンコルド広場の特設会場で実施される。中国やロシア勢も急速に力をつける中、日本勢は東京五輪の閉会式にも登場したユース五輪女子2冠の河合来夢ら有望選手が続々と誕生している。

ユース五輪では男子で半井重幸が銅メダルを獲得。2019年の世界選手権で2位になった堀壱成も実力者だ。

五輪を追い風にダンス市場の急成長が期待される中、チーム戦で争うダンスのプロリーグ「Dリーグ」を2020年夏に発足させた神田勘太朗代表は「Jリーグの百年構想ならぬ、Dリーグの百年構想」を目指す。

11月には2年目のシーズンが新たに2チームを加えた11チームで開幕。1年目は新型コロナウイルスの影響で延期されて今年1月に開幕し、9チームが半年に及ぶダンスバトルを無観客で繰り広げた。

世界にも例がなかった新しい形のプロリーグで、ダンスチームを企業が持ってダンサーと年俸契約を結んで所属させること自体が初めて。将来的に国際的なリーグへの発展を目指し、ジャンルはさまざまだが、ブレイクダンスの競技の普及や選手強化にも一役買っている。

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