世界が認める独創性
東京五輪の新競技スケートボードの男子ストリートで、堀米雄斗(22)=XFLAG=が初代王者に輝いた。力を温存した予選は6位だったが、決勝では世界が認める独創的な高難度のトリック(技)を次々と成功。五輪予選ランキング1位のナイジャ・ヒューストン(米国)らライバルを圧倒し、栄冠を手にした。
一発の技で争うベストトリックの最終5回目は半回転して手すりに跳び乗り、板の金具部分で滑り降りてきれいに着地すると、金メダル確定の9.30点をマーク。自分を信じた技を貫き、頂点に立った。
父の英才教育で小学1年から本格的に始めたスケボーは「人生を変えてくれた」と語る。18歳で拠点を米国に移し、今や競技発祥の米国でも憧れの的となる存在だ。
「堀米モデル」の板が世界展開されて名実ともに年間数億円稼ぐといわれるトップスター選手の仲間入りを果たし、昨秋にはロサンゼルス郊外に4LDKの一軒家を購入。広い庭に練習場を設け、まさにアメリカンドリームを実現した。米メディアによると、投手と打者の“二刀流”で米国を席巻する大リーグ・エンゼルスの大谷翔平と並び立つ人気と知名度という。
堀米は会場の有明アーバンスポーツパークがある東京都江東区出身。「地元での五輪で金メダルは信じられないぐらいうれしい。オリンピックって本当にすごいイベントなんだな、と実感した」と感慨深げに笑った。
無観客開催は「残念」
スケボーは国際オリンピック委員会(IOC)が若年層の人気拡大を狙って初採用したアーバンスポーツの代表格だ。米国を中心に1980年代以降のストリート文化から発展し、若者に人気がある。
五輪では階段や手すりのような構造物を利用して技を繰り出す「ストリート」と、おわん形の斜面を組んだコースで滑ったり跳んだりする「パーク」が実施され、空中技の高さや回転、独自性、難度などを採点するのが特徴でもある。
2018年に世界最高峰のストリートリーグで日本勢初優勝を含む3戦3勝し、一気に注目を集めた堀米は、6月に世界選手権を初めて制し、金メダル候補として東京五輪に挑んだ。
新型コロナウイルス禍による無観客開催に「いつもの大会は技を決めた時はすごい盛り上がる。地元開催でそこは残念だった」と言いながらも「テレビで友人が応援してくれたのでうれしかった。スケボーの楽しさ、かっこよさを伝えられたと思う」と振り返った。
憧れの存在は「イチローさん」
母国愛は深く、五輪は富士山とサクラが描かれたデッキで滑った。一夜明け会見で他の競技で参考にした人を問われると「憧れている人で、イチローさんはすごく見ていた。記録をどんどん塗り替えていくところがすごいなと思っていた」と即答した。
不断の努力で技の完成度を高めるところに同じアスリートして共通点を感じるのだろう。「五輪の金メダリストになり、スケボーを初めて見た人にも楽しさとか知ってもらえた。五輪は意味のある大きい大会だったと思う」と改めて強調した。一流のプロになる夢をかなえた先につかんだ五輪の金メダル。新時代のヒーローが誕生した。
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