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パリ大会でメダル量産の鍵を握る鳥海連志らZ世代パラリンピアン

2021 9/10 11:00小林智明
鳥海連志,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

パラリンピック史上2番目のメダル数、金は4大会ぶりに2桁

9月5日に閉幕した東京2020パラリンピック。これまで以上の強化策、環境整備が図られた日本選手団は、自国開催のアドバンテージもあり、金13、銀15、銅23の合計51個のメダルを奪取した。

これは2004年アテネ大会の52個に迫る日本史上2番目の数字。金メダル数もアテネ大会と1988年ソウル大会での17個に続き、2000年シドニー大会と並ぶ13個を積み上げた。

パラスポーツは2008年北京大会以降、世界の競技レベルが格段にアップ。日本はその波に乗れず低迷が続き、2012年ロンドン大会ではメダル総数16個(金5個)と落ち込み、前回2016年リオジャネイロ大会はメダル総数こそ24個と増えたが、金メダル数は史上初のゼロ…。だから、今回の祭典は「大躍進」だったのだ。

パラリンピック日本代表のメダル獲得数


さらに東京大会とリオ大会を比較したい。まず国別メダル数の順位は、前回は64位タイだったのに対し、今回は11位まで上昇。競技別に見ると、前回各7個とメダル数上位だった水泳と陸上競技で、それぞれ13個、12個と倍近くまでメダル数を増やしたのが大きい。

続いて数が多かったのは、今大会より新採用のバドミントン。日本チームは参加12種目で3個の金を含むメダル9個を奪った。

東京大会で3度目の金メダルに輝いた国枝慎吾、女子シングルス銀の上地結衣ら実績ある選手が力を発揮した車いすテニスが計4個、エース杉村英孝が個人戦で金メダルを獲得するなど、日本チームをけん引したボッチャが計3個と続いた。

リオ大会でメダルゼロだった競技、トライアスロン、車いすバスケットボール、ゴールボール、卓球でもそれぞれメダルを掴んだ。特にリオ大会で9位に終わった車いすバスケは、競技史上初のメダル獲得となる価値ある銀を手にする旋風を巻き起こした。

こうして日本は前回大会に比べ、メダル獲得12競技中、新採用バドミントンを含め計9競技でメダル数を上乗せしたのである。

車いすバスケ鳥海連志とゴールボール萩原紀佳が新エースへ

気が早いが3年後の2024年パリ大会は、さらにメダルを量産したい。そこで今大会で生まれた新星で、パリでの2大会連続メダルが期待できる選手を紹介しよう。

団体競技のニューヒーローは、車いすバスケットボール男子の鳥海連志(22歳)。クールなルックスの天才肌は、圧巻のスピードと華麗なボールさばきで、史上初の決勝進出とともに話題を呼んだ。

自身のインスタグラムがバズり、フォロワー数は開幕前の約27倍の4万3000人に(9月7日現在)。決勝の米国戦では敗れたものの、両チーム最多のリバウンド数18を記録。ゴール下に強い鳥海は、素早い攻守の切り替えが特徴である日本の「トランジション・バスケット」の中心にいた。

パリ大会では、これまでダブルエースとして君臨した藤本怜央(37歳)、香西宏昭(33歳)の衰えが不安視される。新エース鳥海のさらなる成長なくして、日本の2大会連続メダル獲得はないだろう。

2大会ぶりのメダル、銅を獲ったゴールボール女子の最年少20歳の萩原紀佳は、準々決勝と準決勝でチームの全得点、9ゴールをマーク。ブラジルとの3位決定戦でも欠端瑛子とともに3得点ずつを挙げ、6-1の勝利に貢献。得意の正確なグラウンダーショットにより磨きをかけ、パリ大会でも爆発が期待される。

14歳のパラ水泳・山田美幸、バドの初代王者&女王は伸びしろ十分

個人競技でヒロインになったのは、水泳・女子50m背泳ぎS2と100m背泳ぎS2で2つの銀メダルを獲得した山田美幸だ。日本史上最年少のメダルを獲得した14歳のパラスイマーは、パリ大会に留まらず、2028年ロサンゼルス大会でのメダルも確実に狙える。

柔道男子66キロ級の瀬戸勇次郎は、銅メダルに輝いた21歳。相手と組んだ状態から試合を行う視覚障害者柔道に取り組んだのは、高校3年からと遅かった。それでも好成績を収め、早くも「パリ大会で金メダル」を目標に据えている。

バドミントンでは、男女ともに初代世界王者・女王が誕生。男子の梶原大暉(19歳)は、決勝で世界ランク1位の金正俊(韓国)を7度目の挑戦で初めて破り、金メダリストに。ダブルスでも銅を獲得した。

女子の里見紗李奈(23歳)は世界ランク1位として臨んで、シングルスとダブルスの2冠を達成。梶原・里見ともに車いすでのバド競技生活をスタートさせたのは17年から。わずか約4年で金を掴んだだけに、まだ伸びしろ十分だ。

東京パラリンピックで彼ら新星の勇躍をテレビで観て、今後パラスポーツを志す若者が増えるに違いない。パリ大会では新星が巨星となり、新たなスターが生まれる良好なサイクルを築いてほしい。

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