堀米や西村ら10人出場、平野は夏冬二刀流
スケートボードの国際統括団体、ワールドスケートは6月9日、東京五輪の出場選手を発表し、ストリート世界選手権(イタリア)でともに優勝した男子の22歳、堀米雄斗(XFLAG)と女子の19歳、西村碧莉(木下グループ)をはじめ、パーク女子で五輪予選ランキング1位の14歳、岡本碧優(MKグループ)ら日本選手10人の出場が決まった。
パーク男子の22歳、平野歩夢(木下グループ)は夏冬両五輪出場の「二刀流」としても注目され、次世代の有力選手がそろう顔触れにスケボー「王国」と呼ばれる期待も膨らんでいる。
東京五輪で初採用されたスケートボードは若者に人気の都市型スポーツで、根性主義の「スポ根」とは一線を画した自由な文化で脚光を浴びる。五輪の伝統競技とは観戦スタイルも異なり、年齢制限がなく10代を中心とした若い力が世界を席巻。スピードやパワーで海外の強豪に見劣りする日本勢は独自性が最大の武器で、メダル候補がずらりと並ぶ。
12歳の開心那は夏季五輪で最年少出場へ
パーク女子で12歳の開心那(hot bowl skate park)は北海道苫小牧市出身。日本オリンピック委員会(JOC)によると、12歳で五輪に出場すれば、記録が残る範囲では1968年メキシコ五輪に13歳で出た競泳女子の竹本ゆかりを抜いて夏季五輪の日本選手最年少となる。
1980年モスクワ五輪では競泳女子で11歳の長崎宏子が代表になったが、日本が東西冷戦下の政治圧力でボイコットしたため出場していない。
幼稚園児だった5歳から競技を始め、小学校を卒業したばかり。おわん形に湾曲したコースの縁を、ボードを斜めにして滑る「ノーズ・グラインド」が得意技だ。
エース堀米雄斗は独創性で「金」候補
手すりや縁石など街中を模したコースで技を競うストリートで、世界に衝撃を与えているのが日本のエース堀米だ。その類いまれな独創性が武器となる。
世界最高峰のストリートリーグで2018年は日本勢初優勝を含む3戦3勝。6月の世界選手権では45秒間で技を連発するランでミスが続いて出遅れたが、一発技を競うベストトリックの1回目から高得点を4連発。全選手の試技で最高の9.47点をマークし、連覇を狙ったヒューストン(米国)を振り切って逆転で栄冠を手にした。
本場の米国を練習拠点にしているが、地元で迎える東京五輪での金メダル獲得の期待が高まっている。
女子の西村碧莉も世界女王の実力
女子の西村も東京五輪での金メダルに期待が高まる世界選手権制覇だった。2017年に世界最高峰のXゲームを日本勢初制覇。世界選手権は2019年1月の第1回大会と2021年大会で優勝。一発技を競うベストトリックの最終5回目で1位に躍り出ると、大きい跳躍から高い手すりを車輪前部の金具で滑り降りる「ギャップトゥノーズグラインド」で4.04点をマークし、強力なブラジル勢に阻まれてきた1位の座をつかんだ。
本場の米国に拠点を置いてから約2年。日本に凱旋して臨む五輪本番へ期待が高まる。
パークの14歳岡本碧優は「金」に最も近い逸材
14歳の岡本は、おわん形の斜面を組んだコースで滑ったり跳んだりするパークの女子で別次元ともいえる圧巻の演技を見せ、金メダルに最も近いと言われる逸材だ。
2019年9月の世界選手権優勝。トッププロが集まるXゲーム米国大会も制した。兄の影響で小学校2年からスケートボードを始め、女子では群を抜くエアの高さとスピード感に加え、大技の横1回転半「バックサイド540」や空中で板を前後に入れ替える難技など多彩な演技構成で独壇場を演じている。
2018年にジャカルタ・アジア大会と世界選手権で優勝した19歳の四十住さくら(ベンヌ)も表彰台を狙える期待のアスリートだ。
パーク平野歩夢は二刀流に挑戦
2014年ソチ、2018年平昌の両冬季五輪スノーボード・ハーフパイプで銀メダルに輝いた平野は日本男子の五輪メダリストで夏冬両五輪に出場するのは初めて。女子ではスピードスケートで五輪「銅」の橋本聖子が自転車で出場した例があるが、偉業に挑むことになる。
幼少期からスノーボードとスケートボードの両競技を並行して取り組んだことが相乗効果を生み、ジュニア世代では国内トップレベルの実力を誇った。使う筋肉や体の動かし方だけでなく、ジャッジの特性など共通点も多い。五輪という舞台を経験している点も大きなアドバンテージとなるだろう。
日本代表10人の平均年齢は17歳台。他の競技と比べても圧倒的に若さが際立つ顔ぶれで東京五輪は新競技のスケボーが「日本旋風」を起こしそうだ。
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