「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

低負荷でも筋肥大できる?「初動負荷トレーニング」とは?

2021 7/19 06:00近藤広貴
イメージ画像,ⒸLordn/Shutterstock.com
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸLordn/Shutterstock.com

15レップ以上行える筋トレは筋肥大には適さない

筋トレにより筋肥大させるためにはトレーニング時の負荷の大きさが重要であることは、日々トレーニングに励むトレーニーにとって周知の事実だろう。筋肥大のためには、過負荷の原理・原則があり、日常かけている以上の負荷を筋肉へ与えなければならない。

筋トレ時に向上させたい能力とレップ数との関係性を示した指標では、15レップ以上行える筋トレは筋持久力の向上が主であり、筋肥大には適さない。

レップ数とトレーニング効果


筋肥大に効果的なトレーニング負荷は、自身の最大拳上回数の70〜80%ほどの重さを10回程度行うトレーニングとなる。

多くのトレーニーは、現在の筋力に応じた負荷をかけながらトレーニングに励んでいることだろう。しかし、自身の筋力の伸びに適応しながらトレーニングを行うためには、ジム通いや重いバーベルの購入などお金がかかるのも事実だ。

そのような一般的なトレーニングの原理・原則の中で、近年、低負荷のトレーニングでも筋肥大が起こるという報告がなされている。低負荷でのトレーニングは自宅で手軽に行うことができ、さらにはトレーニング費用がかからないというメリットもある。

低負荷トレーニングはセット数を増やす

そもそも、低負荷でのトレーニングで筋肥大が起こりにくい理由はなんなのだろうか。筋肉には、「速筋」と「遅筋」の2種類の筋繊維が存在する。

速筋は大きな筋力を発揮する際に使用される筋繊維であり、遅筋は持久系の運動の際に使用される筋繊維だ。この2種類のうち肥大しやすい筋繊維は速筋である。

そのため、トレーニング時の負荷が小さすぎると肥大しにくい遅筋が主に使用されてしまい、筋肥大が起こりにくいと言われてきた。

しかし、京都大学の池添氏が行った研究によると、低負荷のトレーニングであってもセット数を増やすことにより、高負荷でトレーニングを行ったグループと同じように筋肥大が起こることが報告されている。

低負荷のトレーニングでも、レップ回数やセット回数を大幅に増やすことにより、遅筋が疲労して速筋が動員されるようになり、筋肥大が起こるというのだ。

連続可能なレップ数が15回を超えるような低負荷トレーニングであっても、毎回のトレーニングをオールアウト(限界回数まで)で行い、セット回数を増やすことで筋肥大が見込める。

イチローやカズも取り入れた「初動負荷トレーニング」で筋肥大・瞬発力の向上を

メジャーリーグで活躍したイチローや54歳の今も現役Jリーガーの三浦知良らも低負荷のトレーニングで体を鍛え上げ、世界で名を残したアスリートだ。

イチローやカズが取り入れた低負荷トレーニングは、株式会社ワールドウィングエンタープライズ代表の小山裕史氏により発案された「初動負荷トレーニング」。動作の際に力が最も必要とされる初動に着目して負荷を入れるトレーニング法である。

例えば、ダンベルやバーベルを持つ際、持ち上げる瞬間に最も力が発揮され、持ち上げていくにつれて使用される筋力が減っていく。この、最も力が必要となる初動のみに集中して負荷を入れ筋肉の緊張と弛緩を繰り返すことで、可動域の拡大やスムーズな力の発揮が可能となり、瞬発力の向上につながるのだ。

初動負荷トレーニングは、自宅での腹筋運動や腕立て伏せでも取り入れることが可能だ。

腹筋運動の際、地面から上体が浮き上がる初動の時だけ力を入れ、上体が浮いたら筋肉を弛緩させる。この筋肉の緊張と弛緩動作のレップ数やセット数を増やすことで瞬発力に加えて筋肥大も期待できる。

これらの低負荷トレーニングであれば自宅でも簡単に行えるはずだ。トレーニング初心者やジムに通うことを考えていない人でも取り入れやすいだろう。自宅での低負荷トレーニングで効果的な筋肥大を目指そう。

《ライタープロフィール》
近藤広貴
高校時代にボクシングを始め、全国高校総体3位、東農大時代に全日本選手権3位などの成績を残す。競技引退後は早稲田大学大学院にてスポーツ科学を学ぶ。現在は母校の教員としてボクシング部の指導やスポーツに関する研究を行う傍ら、執筆活動を行っている。

【関連記事】
筋トレは週1回でも効果あり!「ビッグ3種目」で効率的に鍛えよう
シックスパックの作り方、「立ちコロ」で理想の腹筋を手に入れよう!
筋トレ効果を最大化させるたんぱく質の摂り方 こまめに摂取&目覚めの一杯が効率的