「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

1964年東京五輪で金メダルに輝いた外国人アスリート列伝

2021 5/30 06:00田村崇仁
(左から)ベイジル・ヒートリー、アベベ・ビキラ、円谷幸吉Ⓒゲッティイメージズ
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒゲッティイメージズ

「裸足の英雄」アベベ、マラソン初の連覇

戦後復興の象徴となった1964年東京五輪で金メダルに輝いた外国人アスリートで、世界の人々を魅了し、歴史に名を残した選手は多い。その中でも男子マラソンで史上初の2連覇を達成した「裸足の英雄」アベベ・ビキラ(エチオピア)は当時世界最高の2時間12分11秒2をマークし、異彩を放つ存在だった。

シューズを履かずに走って1960年ローマ五輪を制し、アフリカ勢初の金メダル獲得で「裸足の王者」と世界を驚かせた4年後。68選手が参加した東京五輪では靴と靴下を着用し、甲州街道を調布市で折り返す42.195キロのコースを独走のまま世界最高タイムで駆け抜けた。虫垂炎手術の直後だったが、ゴール後も「まだ走れる」と余裕を見せるなど、再び世界を驚かせた。

日本勢では円谷幸吉が旧国立競技場に2番手で戻り、大歓声の中でベイジル・ヒートリー(英国)に抜かれて2時間16分22秒8で銅メダル。日本陸上界に戦後初のメダルをもたらした。

アベベは3連覇が懸かった1968年メキシコ五輪は途中棄権。1969年には自ら運転した自動車事故で下半身不随の重傷を負う悲運に見舞われ、車いす生活になった。

それでもパラリンピック発祥の地として知られる英国のストーク・マンデビル病院で懸命のリハビリを続け、障がい者スポーツに取り組み、アーチェリーや卓球の競技大会に出場。身体障害者の犬ぞりレースでは優勝も経験した。1973年に41歳の若さで世を去ったが、不屈の精神で「生涯アスリート」を貫いた英雄でもあった。

「五輪の名花」チャスラフスカ、体操金3個

体操女子のベラ・チャスラフスカ(当時チェコスロバキア)は華麗な演技で、名実ともに大会のヒロインとなった。個人総合と跳馬、平均台で金メダル3個を獲得し「五輪の名花」「東京の恋人」とうたわれた。

2016年に74歳で病死し、来日して2度目の東京五輪を観戦する夢はかなわなかったが、「日本人の心」を愛し、東京で咲いた「名花」は日本国民の絶大な人気を誇った。美しい「体操ニッポン」の象徴だった東京五輪男子個人総合王者の故遠藤幸雄氏ら日本選手団との強い絆も知られている。

華やかな競技生活の一方、波乱に満ちた人生でもあった。1968年メキシコ五輪では4個の金メダルを手にしたが、大会前に民主化運動「プラハの春」弾圧のため、ソ連軍が母国に侵攻。民主化を支持する「二千語宣言」に署名したことで長らく政治的弾圧を受け、職を失うなど苦難を経験した。

それでも信念を曲げず、強く、美しく、しなやかに、スポーツの枠を超えて世界平和に貢献する「五輪精神」を体現した生涯でもあった。

「武道の精神」示した柔道の巨漢ヘーシンク

五輪で初採用された柔道では、最後の無差別級で2メートル近い巨漢アントン・ヘーシンク(オランダ)が怪力を生かして「創始国」日本の完全制覇を阻み、JUDOの国際化を印象付けた。

両手をいっぱいに上げてから組み合い、試合を支配。全日本王者の神永昭夫が決勝でヘーシンクにけさ固めで抑え込まれ、衝撃的な敗戦を喫すると、日本武道館は沈黙に包まれた。「最強」を証明する無差別級で歴史が変わった瞬間でもあった。

さらに有名なエピソードは「武道の精神」を示した場面だろう。ヘーシンクは一本勝ちの瞬間、興奮して畳の上に駆け寄ろうとしたコーチらを「おりなさい」と右手で制した。「礼に始まり礼に終わる」という武道の精神を体現した行為として、今も語り継がれる。

「弾丸」ヘイズは追い風参考で人類初の9秒台

陸上男子100メートルで「褐色の弾丸」と呼ばれたボブ・ヘイズ(米国)は、183センチ、86キロの筋肉質の体格と圧倒的なスピードで世界に強烈な印象を残した。

準決勝は5メートル以上の追い風のため参考記録で非公認となったが、人類で初めて「10秒の壁」を破る9秒9の好記録をマーク。国立競技場の大観衆を驚かせた。

決勝でも自分のスパイクを忘れてチームメートから借りて出場するハプニングにもかかわらず、スタートから鋭く飛び出し、2位に0秒2の大差をつけ、10秒0の世界タイ記録で優勝。400メートルリレーでもアンカーとして米国の金メダル獲得の立役者となり「世界最速男」と形容された。

五輪後は米プロフットボール、NFLのカウボーイズでワイドレシーバーとして活躍。1972年にはスーパーボウル制覇に貢献した。五輪の金メダルとスーパーボウルのリングを獲得した最初のアスリートになったが、2002年に59歳で死去し、疾風のように人生のトラックを駆け抜けた。

【関連記事】
五輪聖火の歴代最終点火者は?東京は池江璃花子や松山英樹の観測も
IOCバッハ会長の「独裁色」強まる再選、五輪歴代会長は全て欧米出身
混迷の東京五輪開会式、歴代式典は口パクやハト焼死で物議も