第1走者は「なでしこジャパン」、4カ月で1万人
新型コロナウイルス感染拡大の影響で1年延期された東京五輪の聖火リレーは3月25日、東日本大震災から10年の節目に福島県のサッカー複合施設「Jヴィレッジ」(楢葉町、広野町)からスタートした。
コロナ禍の厳戒態勢で祝祭ムードとはほど遠い雰囲気の中、第1走者は震災が起きた2011年のサッカー女子ワールドカップ(W杯)で優勝した日本代表「なでしこジャパン」の当時のメンバーだった宮間あやさん、岩清水梓選手らがグループで担当。大会理念の「復興五輪」を象徴する場所から出発し、7月23日の開会式で国立競技場の聖火台に点火されるまで、121日間をかけて日本列島を巡り、約1万人のランナーが希望の聖火をつなぐ。
一方で芸能界からスポーツ界まで著名人ランナーの辞退が続き、島根県など一部自治体からは中止や縮小を求める声も上がる。五輪開催可否を巡って世論の風当たりは依然として強く、波乱含みの4カ月となりそうだ。聖火リレーの基本情報アラカルトを紹介する。
「密集」発生なら走行取りやめも
大会組織委員会は沿道の観客には密集回避やマスク着用、拍手での応援など注意事項の順守を呼び掛ける。過度な密集が発生した場合は当該場所の走行取りやめも検討する。
1日80~90人、走行距離200メートル
参加人数は1日80~90人、121日間合計約1万人の想定。1人当たりの走行距離は約200メートルで、2分ほどかけてゆっくり走る。
トーチは1本7万円で購入可能
聖火ランナーが持つトーチは、世界的デザイナーの吉岡徳仁さんが桜をモチーフにデザイン。東日本大震災の復興仮設住宅のアルミ廃材が使用され、長さ71センチ、重さ1.2キロ。ランナーは希望すれば、1本7万1940円で購入可能となっている。
ユニホームは赤いタスキイメージ
ランナーが着るユニホームは白地で胸に五輪聖火エンブレム、背中に五輪マークをプリント。左肩から右脇腹にかけて、タスキをイメージする赤いラインが入り、生地にはペットボトルのリサイクル素材も使用。着用後は記念品として持ち帰ることが可能だ。靴は各自で準備し、はだしやげたでの走行、走行時の自撮りは禁止事項。
最年長ランナーは118歳女性
世界最高齢の女性、118歳の田中カ子さんが5月に福岡県内で参加予定。2つの世界大戦と1918年のスペイン風邪を生き延びた田中さんは米CNNでも取り上げられ、1月の誕生日には家族から聖火リレーのためにと新品のスニーカーをプレゼントされたという。
日本泳法、馬でもリレー
地域の特色を生かし、走る以外に趣向を凝らしたアイデアで特殊なリレー方法も見どころとなりそうだ。広島県と大分県では、武芸の一つとして古くから伝えられてきた日本泳法でトーチを運ぶ。北海道帯広市で巨大な輓馬(ばんば)が鉄そりを引く「ばんえい競馬」のコースを通過する際は、騎手の後ろにランナーが乗り、聖火をつなぐ。
沖縄県座間味村では、レースに使われる手こぎの帆掛け船「サバニ」にランナーが乗り込む。頂上に岐阜城がある金華山ではロープウエーで、神奈川県伊勢原市ではケーブルカーで希望の灯をつなぐ。
走行自治体は859市区町村
日本列島をおおむね時計回りに巡り、47都道府県、859市区町村を通過する計画。ルートには世界遺産や名所旧跡、東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨などの被災地も組み込まれている。
聖火は2020年3月にギリシャ・オリンピア遺跡で採火され、日本に運ばれたが、新型コロナの影響による大会延期を受けて国内で巡回展示されていた。
五輪史上初の水素トーチも使用
福島県などの一部区間では五輪史上初めて燃料に水素を使うトーチも使用される。3月25日の初日は同県浪江町で3人の走者が使用。福島では各日の最終走者も用いる予定で、25日はエアレース・パイロットの室屋義秀さん、2日目の26日は元バレーボール女子日本代表の大林素子さん、3日目の27日は2008年北京五輪陸上女子代表だった千葉麻美さんが大役を担う。
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