「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

42年の歴史を重ねた「真夏の祭典」鈴鹿8耐の魅力

2019 7/26 07:00カワサキ マサシ
今年も鈴鹿8耐の季節がやってきたⒸkqlsm/Shutterstock.com

Ⓒkqlsm/Shutterstock.com

真夏の炎天下で戦う「世界で最も過酷なロードレース」

今年も“2輪ロードレース真夏の祭典”鈴鹿8時間耐久ロードレースの季節がやってきた。通称“8耐”と呼ばれるこのレースは、7月の最終週に開催されることが恒例で、今年は7月28日(日)に決勝が行われる。バイクブーム最盛期の1990年には、決勝レースだけで16万人が詰めかけた一大イベント。その後は観客数を減らしていたが、最近は若い年齢層の観客が徐々に増え、6~7万人がサーキットに集う。

8耐が人気を集めるひとつの要素は、あまりにもハードなシチュエーション。ときには最高気温が35度を越えるなか、ライダーたちは分厚い革ツナギにヘルメットを装備して3人一組で交代しながら走り続ける。この厳しい状況で戦うことから、8耐は「世界で最も過酷なロードレース」とも形容される。灼熱にさらされる環境下で戦うライダーたちと、夏の甲子園でプレーする高校球児の姿が重なる部分もあり、そこが日本人の感性に受ける一面もあるだろう。

ベースは市販車、改造範囲は狭いがめちゃくちゃ速い

8耐を走るのは2輪のMoto GPや4輪のF1のようにレース専用に開発された車両ではなく、一般市販車に改造を施したバイク。とはいえ、ルール内で改造できる範囲はごく狭い。タイヤはレース用のスリックタイヤに交換できるが、エンジンやフレームといった主要部品はほとんどが改造を許されていない。それでも直線の最高速度は300km/hを越える。

ここで8耐を身近に感じてもらうために、2輪と4輪の比較データを用意した。2輪と4輪では車両重量が異なるので、もちろん単純に比較はできない。それを念頭に置いたうえで、2018年の鈴鹿8耐でポールポジションを獲得したカワサキZX-10RRと、街中でも見かける4輪をベースにしたレース車両の鈴鹿サーキットでのコースレコードを比較してみよう。

2輪と4輪の比較ⒸSPAIA

ⒸSPAIA


トヨタヴィッツとトヨタ86GTが出場したレースはともに、8耐と同じく性能アップのための改造はほぼ不可である。エンジンの排気量が近いのはヴィッツだが、ZX-10RRとのタイム差は約40秒。市販状態で最高出力が近い86GTでも、約24秒の差がある。要約すると8耐マシンは「ちょっと改造をしただけの、めちゃくちゃ速い市販車」なのだ。

速いペースの展開、8時間の長丁場に数々のドラマ

8耐の特徴のひとつに、耐久レースとは思えない速いレーススピードがあげられる。一般的に耐久レースはマシンとライダーへの負担軽減と、安全マージンを確保するためにペースを落として周回するものだが、8耐のレーススピードはスプリントレース並なのだ。

8耐出場車と同じカテゴリーのマシンが、スプリントレースで出した鈴鹿サーキットのコースレコードは2分03秒874(Honda CBR1000RR SP2が、今年4月の全日本ロードレース第2戦で記録)。ちなみに公式記録として採用されてはいないが、昨年の8耐の予選最速タイムは2分05秒403(Kawasaki ZX-10RR)である。8耐マシンはヘッドライトやエンジン始動用のセルモーターを搭載するのでスプリント仕様より重量は重くなるが、1.5秒しか差はない。8耐のレース中はさすがにタイムが落ちるものの、それでもトップチームは2分07~10秒台のペースでラップを重ねる。

真夏の炎天下のもとで全身を使ってマシンを操り、スプリントレース並のタイムで走り続ける。マシンにもライダーにも負担は大きく、ときには転倒やマシントラブルが発生し、それがレースを面白くする。有力チームがリタイアしたり、意外な伏兵が浮上したりと、ドラマチックな展開も魅力だ。

バイクブーム最盛期に青春時代を過ごした人は、今年はリターンを。そして8耐未体験の人なら、この機会に鈴鹿サーキットに足を運んでみてはいかがだろうか。ただし、くれぐれも熱中症にはご注意を。

 コメント(0件)