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前半戦が終わったMotoGP 今年も際立つマルケスの強さ

2019 7/19 15:00河村大志
2019年もMotoGPで大活躍のマルク・マルケス
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Ⓒゲッティイメージズ

ドヴィツィオーゾが安定感を保つもマルケスの強さが際立った前半戦

19戦中9戦を消化し、3週間のサマーバケーションに入ったMotoGP。今年の前半戦は、第3戦でスズキのアレックス・リンス、第8戦でヤマハのマーベリック・ビニャーレスが今季初優勝を挙げるなど、各メーカーのポテンシャルが拮抗し、レースもMoto3のような長い隊列での接近戦が繰り広げられている。

しかし、王者マルク・マルケスがランキングトップでシーズンを折り返すのは例年通りだ。2015年以外MotoGPクラスで前半戦をトップで折り返しているマルケス。今年も、これまで負けなしだったアメリカズではリタイアに終わったものの、9レースで優勝5回、2位3回と抜群の安定感を誇っている。

ポイントランキングでも2位に58ポイント差をつけており、これは開幕10連勝を達成し前半戦だけで77ポイント差をつけた2014年シーズンに次ぐ数字だ。また、サマーブレイク前の第9戦ザクセンリンクでは125ccクラスからの連勝記録を10に伸ばし、史上最多連勝記録を更新。最高の形で夏休みを迎えることとなった。

一方、チャンピオン争いのライバルであるアンドレア・ドヴィツィオーゾも開幕戦で優勝し、表彰台4回、4位3回と安定した成績を残している。だが、常に2位以内に入っているマルケスには、レースを重ねるごとに差を広げられてしまっているのが現状だ。

トップスピードが武器のドゥカティに乗るドヴィツィオーゾだが、以前からマシンの課題として挙げているコーナーリング性能が足かせになっているようだ。特に第8戦のアッセンと第9戦のザクセンリンクは低速コーナーが多いコースのため、他のライバルに比べ旋回性に劣るドゥカティ勢は苦しんだ。さらに、スズキの躍進に触発されたヤマハが徐々にポテンシャルを上げてきていることもポイントが伸びない要因だろう。

チャンピオン争いを続けるには、ドゥカティはドヴィツィオーゾが訴える旋回性の問題に取り組まなければならない。今シーズンの成績は後半戦初戦のチェコGP後に行われるオフィシャルテストで問題を改善できるかにかかっている。

大怪我も着実にポイントを獲得 中上貴晶の活躍に期待

最高の夏休みとは言わないまでも、後半戦に向けて確実な手応えを感じているライダーがいる。

最高峰クラス2年目で、唯一の日本人ライダー・中上貴晶である。彼はランキング12位で前半戦を終えた。去年型のマシンを操る中上だが、予選Q1で敗退したのは第3戦と第7戦のみ。Q2からの予選が5回と安定した成績を残している。

決勝レースでも第5戦、第8戦のリタイア、そして第9戦の14位以外は10位以内でフィニッシュしている。特に第6戦ムジェロでは予選10番手からスタートし、前方のライダーを続々と追い抜き、終盤までトップグループに付いていく力走を見せ、自己最高となる5位でフィニッシュした。

印象に残ったのが、第9戦ザクセンリンク。14位だったが、これは気力でもぎ取った2ポイントであった。第8戦のアッセンでバレンティーノ・ロッシの転倒に巻き込まれ、左足首のじん帯を負傷。その1週間後に第9戦が控えていたが、左足首はシフトチェンジなど、走行中は負担がかかるため、レース出場は絶望的な状況だった。

杖がないと歩くことができない中上だったがレースに出場し、予選ではなんとQ1で2位に入りQ2に進出。予選10番手を獲得したのだ。完走が目標と語っていた中上だったが、14位でフィニッシュし貴重な2ポイントを獲得。獲得ポイントを50に伸ばし、ランキング12位で前半戦を終えたのだ。

かなりのダメージを負った中上だったが、サマーブレイク前でのアクシデントだったことは不幸中の幸いだったのかもしれない。チーム関係者や日本のファンに感動を与えた中上は1年型落ちのマシンでトップ5に入るなどの好走を見せ、今シーズン前半戦を限られた環境の中、好成績で締めくくった。

後半戦、そして母国日本で各メーカーのファクトリーチームを脅かす存在として期待されるのではないだろうか。

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