脚質、直線進路とも差なし
昨年のエフフォーリアをはじめ、ゴールドシップ、イスラボニータ、ディーマジェスティと過去10年で4頭の皐月賞馬を輩出している共同通信杯(GⅢ・芝1800m)。今年も重賞戦線で活躍してきた楽しみな馬たちが集結した。
レースを占うにあたり、まずは東京芝コースの馬場傾向について見ていく。
Dコースを使用する冬の東京開催が開幕して2週が経過したが、雨量はゼロ。4日間全て良馬場でレースが行われている。開幕週に行われた芝2000mの白富士Sは1:57.4、3歳1勝クラス芝1800mのセントポーリア賞が1:45.7、先週末の芝1600m重賞・東京新聞杯で1:32.3と好タイムが出ており、上がりも33秒台の決着が多く見られた。

先週末に芝コースで行われた11レースで3着内に入った馬の4角通過順位を見ると、4角先頭〜4番手を追走していた馬は5勝、2着5回、3着4回で全体の42.4%。4角5番手以下だった馬は6勝、2着6回、3着7回で全体の57.6%。やや差し有利ではあるものの、「脚質による差はない馬場」と言える。

また3着内馬が残り200m付近で通った進路を見ても、内から2〜4頭目を通った馬が5勝で最多。全体では最内〜4頭目までが7勝、2着6回、3着6回で57.6%、内から5頭目より外が4勝、2着5回、3着5回で42.4%。こちらも「内外フラット」な状態だった。
これらのデータを見る限り、各馬の能力が存分に発揮でき瞬発力が求められる馬場だと言えるが、木曜日から週末にかけて雨または雪予報が出ている。先週よりは「やや外差し有利」となるかもしれない。
ジオグリフ、ダノンベルーガなど能力拮抗

キャリアが浅く、能力差も大きいため道悪適性度外視で好走する馬も出てきそうな感じもするが、「道悪経験」、「東京コース適性」という点を重視して注目馬を取り上げたい。
【道悪経験からの注目馬】
これまでに道悪馬場を経験し、勝利しているのはダノンスコーピオンとアサヒの2頭。ダノンスコーピオンは6月20日の新馬戦を勝利。週中に25.5mmの雨、前日の土曜日に20.0mmの雨量を計測していたが、レース当日はクッション値8.4で稍重まで回復した馬場状態で出走。超スローペースだったが、上がり34.0を使いクビ差の接戦を制している。
良馬場で馬場状態も良かった萩Sを上がり33.5で勝利したレースと、馬場が荒れた中で行われた朝日杯FSでは中団からしぶとく伸びて3着と好走。これら3戦を見ると稍重で勝利しているものの、跳びがきれいなので極端に馬場が悪化することはマイナス材料に映る。
アサヒは10月17日の東京芝1800mで未勝利戦を勝った際に稍重を経験している。この日は朝の馬場発表の時点では良馬場だったものの、雨が降り続いて稍重に悪化した中でのレースだった。雨の影響はあった中で上がり33.9、4角7番手から力強く伸びたレースを見ると、道悪適性はあるように感じる。
【東京コース実績からの注目馬】
東京コースの実績という点でも先述のアサヒが該当。東京スポーツ杯2歳Sでイクイノックスの2着、新馬戦では今回出走するジオグリフの2着を含めて3戦して1勝、2着2回と文句なし。脚質も有力馬の中では自在性があるのも歓迎材料。
そのジオグリフも今回と同じ舞台で行われた新馬戦では3番手追走から上がり33.3で勝利。札幌2歳Sでも強いレースを見せているが、東京コースがベストだ。また距離に関しても、前走の朝日杯FSは追走に苦労して、直線でもエンジンがかかるまで時間を要していたように、距離延長はプラスに作用すると考える。
東京芝2000mの新馬戦を勝利しているダノンベルーガも条件は合っていそう。5番手追走から11.2-11.2-11.5(33.9)の流れを最後は余裕がありながら33.1でまとめた内容は評価できる。一気の相手強化と道悪に対応できれば、さらに上でも楽しみな素材だ。
未勝利戦を1:59.2というレコードで勝利しているジュンブロッサムも東京コースへの適性は高い。跳びが大きく道悪適性がどうかだが、有力勢が差し脚質なだけに先行できるのはアドバンテージとなりそうだ。
ライタープロフィール
三木俊幸
編集者として競馬に携わった後、フリーランスとなる。現在はカメラマンとしてJRAや地方競馬など国内外の競馬場を飛び回りつつ、ライターとしても執筆している。
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