見事に立て直したオーヴェルニュ
1番人気オーヴェルニュは不良馬場だった昨年1.49.2で2着アナザートゥルースに0.3差つけて圧勝。同じ中京ダート1900m平安Sでも重馬場で1.54.7のレコード勝ち。とにかく中京の道悪ダートが大好物。日中、雨が降る予報はオーヴェルニュにとって願ってもなかった。
ダートも芝と同じく、道悪になると適性が変化する。走りやすくなることで高速化、パワー型から一気にスピード型にシフトする。凍結防止剤が入った冬の馬場はほかの季節と比べ、高速化しないと言われるが、それでも雨が降れば乾燥した砂漠からは変化する。前日までの乾燥した馬場状態であればと、嘆く陣営がいる一方、オーヴェルニュのように雨が降って喜ぶこともある。競馬に大切なことは状況を読むことと適性を知ること。実績最上位と雨予報、オーヴェルニュ1番人気は納得だった。
しかし、その雨は確かに砂漠に潤いを与えたものの、降水量は少量にとどまり、昨年のような不良馬場にはならず、馬場発表は良のまま。オーヴェルニュにとっては半端だった。それでも実績は最上位。得意の中京コースは変わらない。前半1000m通過1.01.0と厳しい流れのなか、インの好位4番手をキープ。チャンピオンズCでは控えて揉まれてしまったが、その敗因を生かした競馬を展開した。
逃げてOP勝利のアイオライトに先週小倉で落馬、連闘のイッツクールが逃げ宣言。先手をとったアイオライトに厳しく競りかける場面こそなかったが、ペースが緩むことはなかった。その分、レースは後半ペースアップせず、後半1000mは12.6-12.8-12.5-12.5-12.9と失速気味。持久力戦になり、逃げたアイオライトがスパートできず、オーヴェルニュがインから早めに先頭に立つ形。同位置から外を攻めたサンライズホープが失速したことを考えると、力は示した。もっと高速馬場であれば、勝ったスワーヴアラミスも突き放せたかもしれない。
松田大作騎手の戦略と執念
勝ったスワーヴアラミスはチャンピオンズCで揉まれこんで、進路がないながらも、最後に追いあげて8着。脚は使ったものの、競馬に参加できなかった。今回も発馬直後に何発もステッキが入り、前半はずっと鞍上が手を動かしていたように、ズブさは相変わらずも、根気よく中団の後ろを懸命にキープした。松田大作騎手の執念が実り、ちょうど中団と後方の切れ目に入り、揉まれこむことを回避できた。気難しさが出世を阻んできた印象だが、松田騎手がそれを踏まえて乗ることで馬を再生させた。ストーンリッジ、ヤシャマルなど年明けの中京で大穴連発の松田騎手、さらに流れに乗れるはずで、今後も味方につけたい。
やや重のマーチS、小回り1700mのエルムSに続く重賞3勝目。あまり高速化しない馬場が得意で、乾燥した馬場も歓迎しない、馬場に適度な潤いが欲しいタイプだ。道中は切れ目のイン、勝負所で距離ロスを避けつつ、スパート。最後の直線では必死に外を目指した。持久力戦になったため、手順をかけることで、遅れ差しの形になったのも味方した。
決して安定して勝ちきれる競馬ではないので、今後は馬場状態を含め、買い時には注意したい。佐賀記念に選出されているが、今後どうするのか。前半のズブさを見る限り、東京ダート1600mに見合うスピードはなさそうだ。
3着3番人気ブルベアイリーデはスワーヴアラミスと比較すると、道中からずっと外を通り、勝負所でも大外から先に仕掛ける形になった分、伸び負けした。最後にサンライズホープを捕らえたものの、相手が伸びきれなかったことも手伝った印象。ここのところ好位で競馬できず、後手に回る点も気になる。次走人気なら過信禁物ではないか。
5着は初ダートのカデナ。芝と同じく直線勝負にかけ、よく伸びた。母の父はフレンチデピュティ、ダートが合う可能性はあったものの、このレースは後半失速気味。相手のレベルが上がると、苦しいのではないか。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。
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