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【ターコイズS】ミスニューヨーク重賞初V!  ここから見えてくる中山芝の馬場状態とは

2021 12/20 10:52勝木淳
2021年ターコイズSのレース展開,ⒸSPAIA

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スマイルカナが誘発したハイペース

シーズン末期の牝馬限定重賞、それもハンデ戦とくれば、難解、激戦、波乱必至。今年も1番人気スマートリアン7着、2番人気マルタ―ズディオサ8着。4、3、13番人気で決着。波乱決着といえばそうだが、ターコイズSとしては上位人気が踏ん張った。

この日、終日やや重だった中山の芝は5レースから使用され、7R2歳未勝利戦は2.01.7。前週日曜日の同条件は2.02.0。ペース差は考慮しなければいけないが、ダートほど金曜日の雨の影響を受けなかった。それでも中山らしく前半がある程度流れると、最後の200mで時計を要する決着が多かった。また、キングマンボ系が4勝2着3回3着1回。5鞍中4勝は同系統の馬が占めた。やや重ながら時計が出る馬場、それでいて最後に時計を要する流れ、キングマンボ系の好走ゾーンだった。

ターコイズSも内枠に固まったキングマンボ系のうち、もっとも内のミスニューヨークが勝利した。道中はドン尻、目の覚めるような直線一気だ。追い込みが決まった要因は流れにもあった。逃げたのは1400mの京都牝馬Sを逃げ切ったイベリス。絡んでいったのは昨年番手から抜け出し、このレースを勝ったスマイルカナ。一旦は引いてイベリスを先に行かそうとしたが、馬が行きたがってしまい、結果的にイベリスと併走する形に。12.1-11.2-11.0-11.1、前半800mは45.4。息を入れるスキがなく、イベリスは4コーナーで一杯になり、スマイルカナも序盤リズムを乱したことが影響、昨年の走りではなかった。

正攻法で2着アンドラステ

後半800mは11.4-11.8-11.7-12.5で47.4。残り400m11.7で抜け出してきたのが2着アンドラステ。前走府中牝馬Sでは緩い流れを2番手追走。一転してハイペースになった今回は序盤は中団のイン。いずれも流れに合ったセオリー通りの競馬。今回も正攻法で一旦先頭、最後は斤量56.5キロが響いたか、坂をあがって脚色が鈍り、ミスニューヨークに捕まった。岩田望来騎手、戦略はひとつも間違っていなかった。

勝ったミスニューヨークはこれまで再三、内枠に入って追い込むも不利を受けるといった競馬を繰り返してきた。小回りの追い込み型で、中山はこれで【3-0-0-1】。ただ2勝はやや重、重の芝1800mで、1.50.5、1.51.1。マイル戦1.32.8に対応できたのは収穫だった。M.デムーロ騎手らしいシンプルで力を最大限に発揮させる競馬も光った。ドン尻から外を回って大外一気。これなら不利はない。裏を返せば、大味な競馬で展開を味方につけたといえる。好走ゾーンの狭いタイプで連続好走できる保証はない。よくこの馬を4番人気に支持したものだ。見事としか言いようがない。

中山芝は良好なコンディション

3着は13番人気のギルデッドミラー。マイル戦は春の阪神牝馬S以来。当時は折り合いを欠いたため、その後はリズムよく走れることを重視し、1200、1400mと短距離中心に出走。今回はペースが流れたこともあり、マイル戦の外枠からスムーズに折り合えた。内にアンドラステをみる絶好位から競馬、最後はずっと外を回った分なのか、アンドラステに抜け出されて抵抗できなかった。

3歳時はNHKマイルC3着がある実績馬。兄弟に6歳でOPを勝ったストロングタイタン、6~7歳時にOP連続3着のミラアイトーンがいる。タイタンクイーンの血統はPOGで人気ながら、成長力に富んだタイプ。父のオルフェーヴルも産駒は徐々に強くなることが多く、今回の激走は本格化への兆しともとれる。

1番人気スマートリアンは7着。昇級後マイル戦で牡馬相手に0.3差以内と善戦。牝馬限定戦、手ごろなハンデ54キロが支持されたわけだが、1番人気だけに今回は早めの競馬。好位につけたためにハイペースに巻き込まれた。本来の貯める形ではなかったので、次走巻き返す余地は十分ある。56キロを背負ったマルタ―ズディオサは8着。ここ2走で位置取りが後ろになっていた通り、今回も中団の後ろ。以前ほど流れに乗れなくなっている点は気になるところだ。

ターコイズSの決着時計はやや重で1.32.8。昨年は良馬場で1.34.6だったが、18年1.32.7、19年1.32.2(いずれも良)と今年と同程度の時計。開幕週に雨が降った昨年の5回中山が時計を要したのであって、今年は18、19年と同じ水準。来週の有馬記念へ向けても中山芝の状態はチェックしておきたい。

2021年ターコイズSのレース結果,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 2005-2009 00年代後半戦』(星海社新書)。

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