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【小倉2歳S】ナムラクレアの勝利で連覇のミッキーアイル産駒 その可能性とは

2021 9/6 12:22勝木淳
2021年小倉2歳Sのレース結果,ⒸSPAIA

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決して単調なスピード型ではないミッキーアイル産駒

キャリアの浅い2歳重賞は新馬勝ち直後の素質馬が強い傾向にある。小倉2歳Sも同様で前哨戦のフェニックス賞組は過去10年【1-2-0-24】と直結しないことが多い。だが、フェニックス賞1着、かつ先行だった馬は【1-1-0-1】。2着以下だと【0-1-0-20】なので、フェニックス賞組で買える範囲は少ない。今年はこのパターンに当てはまったナムラクレアが新馬勝ちの人気馬を差し切り、4番人気で勝利した。

近年、少頭数が多いが、今年も10頭立てと落ち着いた頭数。こうなると発馬直後の先手争いは平穏。スタートを決めたショウナンマッハ、デュガで隊列は決まり、淡々と流れて前半600m33.6は当日7Rの1勝クラス33.4より遅い。デュガは勝負所で周りを気にし、手応えが怪しくなり、ショウナンマッハは突き放せるかと思いきや、直線に入ると案外伸びなかった。キャリアの浅い馬だけにこの一戦で判断は難しいところだが、まだまだ力を出せていない。

勝ったナムラクレアは枠なりに中団の外、勝負所でも手応えよく、大外を回るロスを直線で一気に挽回した。最悪な馬場状態だったフェニックス賞を経験したことで、良馬場のここは走りやすかった。勝負所での距離ロスを考えれば、完勝だろう。開業3年目の長谷川浩大厩舎はヤマニンアンプリメでJBCレディスクラシック勝ちがあるが、JRA重賞は初。この夏は6月の勝率13%、8月11.1%と好調。勢いに乗っての重賞制覇だった。

父ミッキーアイルはこれで初年度産駒のメイケイエールに続き勝ち馬を出した。自身は2歳で1.32.3を記録するなど、早い時期からマイル戦を中心に活躍、5連勝でNHKマイルCを勝った。1200mのGⅠで2度2着があるように短距離も悪くはないものの、ベストはGⅠ2勝のマイル。ナムラクレアも決して1200mの馬ではない。今回は中団で追走できたように距離延長に挑んでも見限れない。

そのミッキーアイルの主戦だった浜中俊騎手が負傷した和田竜二騎手の代打騎乗。これもなにかのめぐり合わせだろう。ともあれ、小倉2歳S4勝の浜中騎手が空いていたのは不思議。乗り替わりの不運に勝る幸運でもあった。

同日同条件1勝クラスとの比較

2着は同じミッキーアイル産駒のスリーパーダ。こちらは序盤で折り合いの難しさを見せながら、福永騎手が上手く抑え込んだようにまだまだ荒削り。手応えはナムラクレアと同じぐらいよく、こちらはあえて距離ロスを避けてインから攻めた。直線では外目を意識し、それなりのところを通ってきたが、勝ち馬とはその差だろう。こちらの母はシンハリーズ。兄妹はアダムスピーク、リラヴァティ、シンハライト。どう考えても短距離馬ではない。まだまだ幼さを残すものの、こちらも秋、距離延長で期待できる。

3着は8番人気アネゴハダ。前走がダートだった馬は11年12番人気3着ハギノコメント以来の馬券圏内突入だった。スタートで外に飛び、大きくロスしながら、素早く馬群にとりつき、後方を追走。最後に大外を突っ込んできた。この夏、ヨカヨカで小倉を盛りあげた幸英明騎手と岡浩二オーナーのコンビが最後に一発魅せてくれた。

レースの決着タイムは1.07.9。8秒台を切ったのは12年マイネルエテルネル以来の記録。一見すると優秀だが、8秒台を切れないのは開催最終週で馬場状態が悪い年も多いためだろう。レースの前後半は33.6-34.3、当日同条件1勝クラスの7Rは33.4-34.6で1.08.0、スーパーウーパーが逃げ切った。

正直、先行したショウナンマッハ、デュガ、ソリッドグロウあたりに物足りなさを残す結果だった。差してきた組に展開は向いておらず、後半をまとめたことでナムラクレア、スリーパーダが力を示した。しかし、全体時計としては1勝クラスと同等レベルなので、近年出世レースになりつつある小倉2歳Sではあるが、今年はやや冷静に判断したいところだ。

2021年小倉2歳Sのレース結果,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 1990-1994 90年代前半戦』(星海社新書)。

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