5枠が最強
京成杯AHはサマーマイルシリーズ最終戦という立ち位置もあり、秋というより夏の名残りのようなレースだが、今年はいささか雰囲気が違う。3歳の上位ランクや古馬の重賞ウイナーが大挙して参戦予定。ハンデ重賞であることを陣営が見落としているのではと不安になるほど豪華なメンバーだ。まずハンデの確定が楽しみである。
とはいえ、実績馬は休み明け。サマーマイルシリーズを戦ってきた馬にだって勝機はある。そういった点も含め、過去10年間のデータをもとに傾向を探っていく。なお14年は新潟開催である。
1番人気は【3-0-0-7】。勝つかどこにもいないか極端。元々、京成杯AHは野芝で行われる高速馬場、中山マイルのハンデ戦とあって紛れが生じやすく波乱傾向。異例の豪華メンバーの今年、これが当てはまらない可能性はある。例年の傾向でいえば、馬券の軸は2番人気【3-2-1-4】勝率30%、複勝率60%だろう。波乱とはいえ、勝ち馬は4番人気以内9勝。荒れるとすると、2、3着で、6、7番人気の複勝率は30%と互角。基本的には手広く考えたい。
注目を集めるだろう3歳は【2-1-2-15】勝率10.0%、複勝率25.0%。4歳【2-1-2-16】勝率9.5%、複勝率23.8%、5歳【5-4-2-37】勝率10.4%、複勝率22.9%と比較しても十分戦える。3歳で好走した5頭のうち、13年7番人気3着ゴットフリート以外は2、3歳で重賞V。そのゴットフリートも朝日杯FS3着、共同通信杯2着と重賞実績はあった。グレナディアガーズ、バスラットレオンはいずれも実績十分。好走するとみたい。
中山マイルといえば、外回り2コーナーの引き込み線からスタートする。発馬直後、先行争いを演じながらコーナーに突入するため、枠順は大きな要素になる。外枠不利かと思いきや近9回で、1~3枠【2-3-4-39】、6~8枠【2-4-4-44】。内外の差はそこまでない。
で、その間の5枠が【5-1-1-10】勝率29.4%、複勝率41.2%で抜群の成績。不思議なことに真ん中に良績が集中。内、外の出方を見ながら、序盤の駆け引きをできることがアドバンテージなのだろうか。ただ、勝った5頭は、2、3、1、4、4番人気。このレース、1着は上位人気というデータに合致。今年も5枠に人気馬が入ったときには味方につけたい。
3歳はバスラットレオンを上位に
さらにここからは前走成績から今年は特に注目のローテなどを分析していこう。
3歳以外もVマイル組のスマイルカナ、マルターズディオサなど前走GⅠ組が多い。その前走GⅠは【1-2-1-12】勝率6.3%、複勝率25%と取り立てて目立たない。この辺は夏と秋の境にあるハンデ重賞らしい傾向だ。必ずしも上位クラスから来た馬が強いわけではない。ただ、今年は上位人気馬にこの組が多い。安易に軽視せずに掘り下げたい。
まずNHKマイルC【0-0-1-7】複勝率12.5%は不安になる。3着は先述のゴットフリートのみ。着外だった7頭は昨年のルフトシュトローム(NHKマイルC5着)を含め、9、4、5、3、3、7、2番人気と上位人気に支持された馬が目立つ。
グレナディアガーズと同じNHKマイルC3着だった馬は2頭(14年キングズオブザサン、17年ボンセルヴィーソ)で4、11着だった。グレナディアガーズはどちらかというと広いコース向きで、6戦して中山は初出走。不安はある。
かたやバスラットレオンの前走日本ダービーは【1-0-0-1】。ダービー16着のゼロスは13着、11着のロードクエストが勝利した。ゼロスは中山好走歴なし、ロードクエストは中山でGⅡ2、3着があった。春にこの舞台で重賞を圧勝したバスラットレオンはマイル戦に戻って有力候補といっていい。Vマイル組は【0-1-0-1】。負けた馬も20年シゲルピンクダイヤ5着で大崩れはない。スマイルカナもマルタ―ズディオサも中山で重賞勝ちがある。
次は本来、主役になる前走GⅢ【4-7-8-66】をみる。このうち主要ルートは前走が関屋記念だった馬【2-5-5-48】勝率3.4%、複勝率20.7%。新潟外回りと中山では同じマイルでも適性が明らかに異なる。そのため馬券圏内に来るものの、勝ちきれないケースが多い。だが、着順別成績ではカラテが当てはまる2着【1-1-0-3】勝率20%、複勝率40%など上位好走馬がここでも好走する。つながらないわけではなく、着順の上げ下げが少ない。4、5着も【0-2-0-7】と悪くはないので、マイスタイルやグランデマーレもいいが、評価すべきはカラテだろう。
ただし、関屋記念での位置取り別成績をみると、逃げ【1-0-0-3】、先行【0-0-3-8】、中団【1-3-2-21】なので、逃げたマイスタイル、中団だったグランデマーレ、カラテは互角。マイスタイルは中山マイル重賞3、14、4着、グランデマーレもカラテも中山実績は十分。今回は人気を落とすので、連下候補にしっかり入れておきたい。
最後にクラス別成績で目立つ前走3勝クラス【3-0-0-4】について。前走中京芝1600mで3勝クラスを勝ったカレンシュトラウスが該当する。ただ、勝った3頭は前走1400m2勝、1800m1勝で1600mだった馬は【0-0-0-0】。意外なことに前走3勝クラスのマイル戦からここに挑戦したのは86年以降【0-0-0-2】、たった2頭しかいない。カレンシュトラウスは02年ブラザータイクーン、キクカグロリアス以来19年ぶりの挑戦である。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 1990-1994 90年代前半戦』(星海社新書)
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