好メンバーが揃った頂上決戦
5月30日(日)に東京競馬場で行われる日本ダービー(GⅠ・芝2400m)。「思い出のダービー」といえば、読者の皆様はどのレースを思い浮かべるだろうか。筆者にとってはキズナが勝った2013年だ。ゴール直前で図ったように差し切ったキズナと武豊騎手、ゴール後の大きな拍手、中野雷太アナウンサーの完璧な実況と、全てが揃った素晴らしいレースだと思う。何度見ても鳥肌が立つようなレースなので、最近競馬を始めたという方には是非とも観てもらいたい。
さて今年のダービーは、フルゲートが18頭になって以降初めてフルゲート割れ(出走取消は除く)となったが、例年以上に好メンバーが揃った印象だ。無敗の皐月賞馬エフフォーリアをはじめ、紅一点のサトノレイナス、毎日杯をレコードで制したシャフリヤールなど、世代屈指の能力を持った17頭が集結した。世代ナンバーワンを決める頂上決戦を制するのはどの馬か。過去の傾向も踏まえつつ予想していきたい。
皐月賞馬が1番人気なら安定感あり

まずは過去の皐月賞馬の成績を見ていく。過去10年において、皐月賞馬は全頭ダービーに出走しているが、ダービーで1番人気に支持された馬は【3-1-1-1】。着外の1頭も4着だったサートゥルナーリアで、安定感のある成績と言ってよいだろう。
これに対しダービーで2番人気以下だった馬は【0-1-0-3】と物足りない成績だ。ちなみに2000~2010年で見てもこの傾向は変わらず、皐月賞馬かつダービー1番人気で着外に沈んだのは2009年のアンライバルド(12着)のみ。逆にダービーで2番人気以下だった皐月賞馬は、ノーリーズン、ダイワメジャー、ヴィクトリーの3頭全てが着外で、エポカドーロ以前で3着内に入ったのは1999年のテイエムオペラオーが最後だ。
今年の皐月賞馬エフフォーリアは1番人気が想定されるのでプラスデータだと言えるが、来年以降皐月賞馬が1番人気にならないようなら疑ってかかるほうが良いだろう。
1月以降のレース数に注意

次に1月以降の出走回数別成績を調べてみた。すると1戦が【2-1-0-7】、2戦が【2-5-3-48】、3戦が【5-2-6-48】、4戦以上が【1-2-1-46】だった。このデータから、今年に入って既に4走以上している馬は割り引きが必要と言える。タイムトゥヘヴンとバスラットレオンが該当する。
年明け2戦の馬と3戦の馬ではやや3戦の方が優勢だがほとんど差はなく、特に気にするほどではない。またサンプルが少ないが年明けに1戦しかしていない馬は、勝率20%、連対率30%と優秀だ。着外の7頭のうち3頭はGⅠ以外の前哨戦で完敗、2頭は弥生賞からの直行、1頭は牝馬というように、大半は納得できる敗戦。これに対して、好走した3頭はダービーを見据え皐月賞にぶっつけで臨んだ馬だった。
ダービーに照準を合わせ一度使って状態を上げてきたような馬なら、高確率での好走が期待できるのではないだろうか。なお今年の該当馬はサトノレイナスとワンダフルタウン。牝馬のサトノレイナスはさておき、ワンダフルタウンについては青葉賞を勝ってきており、期待できるだろう。
エフフォーリアの2冠濃厚
以上のデータも踏まえつつ、各馬の能力比較をしながら予想していく。
まず本命はエフフォーリア。前走の皐月賞では後続に3馬身という決定的な差をつけての勝利。内でじっと我慢できたのは大きかったものの、スムーズなレースをした点を差し引いても後続勢の逆転は難しかっただろう。
前々走の共同通信杯ではスローペースを好位追走し、直線だけで2馬身半突き放す完勝。破った相手ものちに重賞を勝つシャフリヤールやヴィクティファルスなどがいて、非常にハイレベルだった。皐月賞と共同通信杯という、全く異質のレースでともに後続を突き放しているのは、能力が抜けていることの証拠。同世代相手には負けないと見て本命だ。また、データでも示したように皐月賞馬がダービー1番人気なら好走確率もかなり高く、絶好の1枠1番を引き当てたな以上、余程出遅れでもしない限り大丈夫だ。
対抗はワンダフルタウン。前走の青葉賞は、中間に爪を痛めた影響で半年ぶりのレースだったが最後までしぶとく伸びて勝ち切った。データで示したように年明け1戦しか使っていない馬の成績は優秀で、叩いての上昇度はこのメンバーの中では一番だ。
本馬は完全な叩き良化型で、デビュー2戦目の未勝利戦ではラスト200m強だけで後続を8馬身突き放すレコード勝ち、休み明け2戦目の京都2歳Sでは終始外を回しながら最後まで伸びて差し切り勝ちと、どちらも非常に強いレースをしている。エフフォーリアを交わすまでは厳しいと思うが、一番迫れるのはこの馬だと見て対抗とする。
3番手はタイトルホルダー。皐月賞組で、エフフォーリアの次に強い競馬をしていたのがこの馬だとみている。前走は残り1000mからペースアップしているが、そこで外から先頭に並びかけていき、最後まで粘り切っての2着だった。このレースで外から早めに動いていった馬は、ダノンザキッドやアサマノイタズラが15、16着と大敗しており、レッドベルオーブも8着に敗れている。そのような厳しい流れの中で2着に残ったのは強い内容だ。
また、今回はバスラットレオン以外に逃げ馬が見当たらず、自分のやりたい競馬が比較的しやすいはずで、淀みのない流れに持ち込めば十分好走可能だ。
4番手はシャフリヤール。共同通信杯ではエフフォーリアに離されてしまったが、位置取りが後方だったこともありスローの瞬発力勝負では分が悪かった。しかし、前走の毎日杯では高速決着の中、中団前よりにつけてしっかり伸び勝ち切った。この2戦の結果から、どちらかと言えばハイペースの底力勝負の方が合っていそうで、GⅠの流れになることはプラスに働くはずだ。
今回は逃げ馬が少ないので序盤はスローになる可能性もあるが、タイトルホルダーやバスラットレオンは切れるタイプではないため、道中締まった流れになる可能性が高い。そうなれば、この馬にとっていい展開だ。
5番手にグレートマジシャン。前々走のセントポーリア賞では、後方追走から直線でただ1頭次元の違う脚で差し切る強い内容だった。前走の毎日杯でシャフリヤールには敗れたものの僅差であり、初の輸送とマイナス体重があった中だと考えれば能力は示したと言える。得意の東京に戻る今回は十分チャンスがあるはずだ。
最後に穴っぽいところではヨーホーレイクに期待したい。前走の皐月賞では4角でややスムーズさを欠いたが、末脚を伸ばして5着。これまで後方待機のレースが多く届かない競馬を続けてきたが、今回は川田騎手に乗り替わる。川田騎手はかなり先行意識の高い騎手なので、これまでよりも1列前につけたときに馬券圏内に入ってくる可能性は十分にある。
サトノレイナスについてだが、桜花賞や阪神JFの競馬を見ている限りでは、確かに2400mの方が合っているだろう。しかし、ここまでマイルにこだわって使ってきたこともあり、牝馬相手のオークスなら問題ないだろうが距離経験で勝る牡馬相手となると、簡単ではないと見る。また今年の牡馬はレベルが低いわけでもない。そのうえサトノレイナスはこれまで1度も牡馬と走ったことがない。かなりマイナス要素が揃っている今回は、人気も考えれば消しが妥当だろう。
買い目は馬連◎-○▲△×☆と3連複2頭軸◎○-▲△×☆で勝負したい。もちろん馬券も的中させたいが、ダービーはやはり特別なもの。最高のレースを楽しみにしたい。(文:川崎)
▽日本ダービー予想印▽
◎エフフォーリア
○ワンダフルタウン
▲タイトルホルダー
△シャフリヤール
×グレートマジシャン
☆ヨーホーレイク
ライタープロフィール
京都大学競馬研究会
今年で25周年を迎える、京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えを目指す本格派が揃う。
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