今週は新興種牡馬か、ベテラン種牡馬か
オークスは無敗の白毛馬ソダシを撃破し、ユーバーレーベンが勝利。先日亡くなった岡田繁幸氏に捧げる大金星となった。
ユーバーレーベンの父であるゴールドシップにとって、これが産駒のGⅠ初勝利。2世代目にして、早くもクラシックホースを輩出した。さらには昨年のウインマイティー(3着)に続き、2年連続でオークスで馬券圏内に食い込む馬を送り込んだことになる。また、母父のロージズインメイにとっても、これが母父として初めてのGⅠ制覇となった。
さて、今週はダービー。こちらも注目は、無敗の二冠を狙うエフフォーリアだろう。父はゴールドシップと同じくこの世代が2世代目という種牡馬・エピファネイア。皐月賞2着馬タイトルホルダーは新種牡馬ドゥラメンテ産駒であり、NHKマイルCの落馬からの巻き返しをはかるバスラットレオンはキズナ産駒。新興勢力の台頭を感じられる。
一方で、残り僅かとなったディープインパクト産駒からも、シャフリヤール・ディープモンスターといった素質馬が多数参戦。さらにはルーラーシップ産駒ワンダフルタウンやバゴ産駒ステラヴェローチェ、ハーツクライ産駒グラティアスといったベテラン種牡馬の産駒ももちろん参戦するため、今年のダービーを新旧種牡馬対決と捉えても面白いかもしれない。
1番人気はやや苦戦傾向
ここ5年で、1番人気がダービーを制したのは昨年のコントレイルのみ。2015年にドゥラメンテが勝利して以降、1番人気馬は4連敗を喫していた。
単勝93.1倍の大穴ロジャーバローズが勝利した2019年には、4戦全勝で皐月賞を制覇していたサートゥルナーリアが4着に敗れた。さらに2018年には1番人気ダノンプレミアム・2番人気ブラストワンピース・3番人気キタノコマンドールが揃って馬券圏外となったことで、三連単28,563倍という高配当が飛び出した。
以前、ダービーにおいては1番人気が圧倒的な信頼度を誇っていた時期がある。2001年ジャングルポケット〜2006年メイショウサムソンまで、6年連続で1番人気が勝利。さらに1990年代は1番人気が馬券圏内を外したことがないという安定感で、連対を外したのも1997年のメジロブライトのみだった。トウカイテイオーやナリタブライアン、スペシャルウィークといった名馬たちが、1番人気でダービー馬の栄光を掴み取っている。
ただし当時も全てが平穏決着だった訳ではなく、92年にはライスシャワーが16番人気で2着と好走したし、ウオッカが制覇した2007年ダービーも、14番人気アサクサキングスが2着に食い込んでいる。近年は、ロジャーバローズだけでなく、昨年は10番人気のヴェルトライゼンデが3着、3年前も16番人気のコズミックフォースが3着と、二桁人気馬が毎年のように馬券に絡んでいる。
青葉賞馬のジンクスと、シンボリクリスエス
ダービーへの道のりは、もちろんひとつではない。王道は皐月賞だとしても、他の路線にも毎年多くの魅力的な馬がいる。
今年も青葉賞勝ち馬ワンダフルタウンや京都新聞杯勝ち馬レッドジェネシス、プリンシパルS勝ち馬バジオウ、さらには毎日杯勝ち馬シャフリヤールといった様々な路線を制した素質馬たちが参戦。どの馬も、展開次第では見所十分な能力を持っているだろう。
そんな中、「ダービーを勝てない」というジンクスまで囁かれているのが青葉賞組だ。京都新聞杯からは、2013年勝ち馬のキズナがダービーを制しているほか、2019年2着のロジャーバローズもダービー馬となっている。NHKマイルCからは、同レースを制したディープスカイやキングカメハメハがダービーを勝利したほか、2002年には3着のタニノギムレットもダービーを制した。
しかし青葉賞組は、ダービー未勝利。ゼンノロブロイ、ウインバリアシオン、フェノーメノ、レオダーバンと、数々の名馬が青葉賞を制しながらもダービーで2着に敗れてきた。2002年の青葉賞勝ち馬シンボリクリスエスもまた、非常に素質のある勝ち方を見せた馬だった。
青葉賞は武豊騎手とのコンビで権利を獲得したものの、本番では武豊騎手が1番人気のタニノギムレットに騎乗したため、岡部幸雄騎手に乗り替わっての参戦。そしてレースではその武豊騎手・タニノギムレットのコンビに1馬身届かず2着に敗れた。
しかしシンボリクリスエスはその秋に天皇賞(秋)、有馬記念を制し年度代表馬に輝く活躍を見せる。ダービー後も確かな能力を示したからこそ、ジンクスがファンの心に強く刻まれることになったのかもしれない。
シンボリクリスエスは引退後、種牡馬としても活躍。自身が手にできなかったクラシックタイトルを仔のエピファネイアが菊花賞で勝ち取ると、母父として送り出したレイデオロがダービーを制覇。ついにダービー馬の"祖父"となった。
他にも、障害王者オジュウチョウサンの母父であり、ダート王者ルヴァンスレーヴの父でもあるシンボリクリスエス。様々な条件での活躍馬を輩出する血統となった。そしてシンボリクリスエス産駒のエピファネイアが、今年は父としてエフフォーリアを送り出す。
2021年青葉賞勝ち馬ワンダフルタウンと、2002年青葉賞勝ち馬シンボリクリスエスの孫・エフフォーリア。今年のダービーでは、青葉賞に縁のある馬たちがどのような走りを見せるのだろうか。
牝馬の偉業達成なるか
今年はもう一つ話題がある。それが、牝馬サトノレイナスの参戦である。阪神JF・桜花賞では2着に敗れたものの、これまで4戦2勝という安定感。先着を許したのはソダシのみという実力を持つ。
牝馬のダービー制覇は、1937年のヒサトモ、1943年のクリフジ、2007年のウオッカと、3度しか達成されていない大記録。ウオッカは桜花賞2着から参戦し、牝馬として64年ぶりにダービーを勝利した。
1990年以降、ダービーに挑戦した牝馬は3頭。1996年のビワハイジは13着、2014年のレッドリヴェールは12着に敗れている。ビワハイジはその後繁殖としても自身のポテンシャルを示す活躍をしたし、レッドリヴェールはダービー参戦の時点で阪神JF制覇を含む4戦3勝2着1回という抜群の戦績を提げての挑戦だった。
その2頭でも大敗した分厚い壁、ダービーに今年はサトノレイナスが挑む。果たしてどう乗り越えようとするのだろうか。世代の頂点を決める一戦、ダービー。非常にバラエティ豊かなメンバーが揃っている。平穏決着か、波乱決着か。今年は、どんなドラマが待っているのだろうか。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
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