大型馬に注意
いわずと知れた天皇賞(春)の前哨戦・阪神大賞典は、1986年まで暮れの阪神で行われていた。スダホークが勝った1987年から春に移り、メジロマックイーン、ナリタブライアン、マヤノトップガン、スペシャルウィーク、テイエムオペラオーと時代を彩った名馬たちが勝ち馬に並ぶ。
近年では2013~15年のゴールドシップ3連覇が記憶に新しい。かつてほど3000mを超える競馬に強いステイヤーがおらず、メンバーレベルが低下し、阪神大賞典もガチガチのダイヤモンド級の堅実決着が減ったようなイメージもある。では実際はどうなのか。直近10年間のデータから調べていく。
いやいや、阪神大賞典の1番人気は【6-2-1-1】勝率60%、複勝率は90%で超がつくほど手堅い。レース途中、どこかへ寄り道してしまったオルフェーヴルですら2着。3000mとなると、実力差がストレートに反映される。
1番人気で3着以下に敗れたのは2020年キセキ(7着)しかいない。昨年のキセキはGⅠで好走していたものの、菊花賞以来勝利から遠ざかっていた。近況がいい1番人気馬はまず逆らえない。アリストテレスに逆らうのは無理筋か。1着は3番人気以内が独占。穴をねらうなら、せいぜい2、3着がいいところだろう。
次は馬体重別成績をあげる。ステイヤーというと小さい馬、そんなイメージは昔の話だろうか。阪神大賞典は大きな馬が強く、500~518キロは【7-0-1-17】、10年で7勝をあげた。うち3勝は先にあげたゴールドシップだが、11年ナムラクレセント、17年サトノダイヤモンド、19年シャケトラ、20年ユーキャンスマイルが当てはまる。
近年のオープン馬は大型馬が多いという事情もあるが、急坂を二度越える阪神芝3000mは、坂適性やパワーをつけた馬に利があるようだ。今年は該当しそうな馬が多く、当日の馬体重はチェックしておこう。
前走重賞出走馬【10-7-9-51】
では、戦歴データから具体的に好走パターンを探っていく。
さすがは阪神大賞典。前走がオープン以下だと【0-3-1-21】で苦戦傾向。前走3勝クラス【0-2-1-9】など下のクラスから来た馬が馬券圏内に入る傾向もあるものの、好走馬の大半は前走重賞出走馬【10-7-9-51】。
今年は【5-5-2-8】の前走GⅠ組が、有馬記念11着ユーキャンスマイルしかいないが、アリストテレスやショウリュウイクゾとGⅡ組が強力。
具体的にレース別でみると、前走有馬記念は【4-5-1-5】複勝率は66.7%と高確率。ショウリュウイクゾが該当する前走日経新春杯は【2-0-2-5】、アリストテレスのAJCCは【2-0-0-4】。阪神大賞典と同カテゴリーのダイヤモンドSは【1-2-3-20】。頭数が多いわりに好走馬は少ない。
最有力はアリストテレスとショウリュウイクゾ
さらに前走レース別にその傾向を探ろう。先にあげた有馬記念、日経新春杯、AJCC、ダイヤモンドS、それぞれの好走パターンを考えてみる。
有馬記念での着順をみると、10着以下は【0-1-0-3】。14年5番人気2着アドマイヤラクティがユーキャンスマイルと同じ11着から巻き返したものの、パターンとしては有馬記念好走馬がよく、やや割引か。
日経新春杯は位置取り別成績をみる。ショウリュウイクゾが該当する先行は【1-0-1-1】で悪くない。逃げや後方といった極端な競馬だと苦しいが、中団【1-0-1-1】も含め、2000mを超える距離のGⅡで流れに乗って競馬した経験がいきるようだ。
同じことはAJCCにも言えるようで、同レースで中団追走だった馬は【1-0-0-2】(15年ゴールドシップ)。AJCCを勝った馬は阪神大賞典で【1-0-0-0】(19年シャケトラ)。アリストテレスはシャケトラに続き連勝を飾れるだろうか。
ダイヤモンドS組は今年も複数エントリー。好走率は低いものの、無視はできまい。着順別成績をみると、1着【0-1-0-0】、2着【1-0-1-0】など掲示板以内だった馬は【1-2-2-8】、6着以下は【0-0-1-12】と明暗くっきり。
ナムラドノヴァンは評価し、タイセイトレイル、メイショウテンゲンは割引か。
位置取りをみると、中団【1-1-1-7】、後方【0-0-2-7】、先行【0-1-0-5】、といった順で評価したい。着順別で評価したナムラドノヴァンは後方なので、やはり連下評価が妥当といったところか。
最後は長距離戦らしくパートナーである騎手について調べた。
前走から乗り替わりだと【4-4-5-54】勝率6%、複勝率19.4%だが、継続騎乗した場合は【6-6-5-22】勝率15.4%、複勝率43.6%と確率がグンと上昇する。長距離戦は騎手と馬とのコンビネーションも大事なファクターになる。簡単に確認できるデータでもあるので、騎手欄にも注目したい。
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ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。
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