過去10年で最速ラップ“10.8”がもつ意味
朝日杯FS2着ステラヴェローチェ、新馬を勝ったばかりのディオスバリエンテ、レフトゥバーズ、ヴィクティファルス、シャフリヤール、2歳で1勝クラスを勝ちあがったキングストンボーイ、エフフォーリアと将来性の豊かなメンバーが顔をそろえた。
一時期は皐月賞の最有力ローテだった共同通信杯。その後は3歳緒戦で皐月賞を勝つ時代になり本番で結果を出せていないが、今年はレース内容を考えればそんな流れを断ち切る可能性がある。
ディープリッチが逃げ、前半1000m1分1秒9の緩い流れのなか、エフフォーリアは好発から控えて3、4番手の外で完璧な折り合い。800m標識ですぐ外にいたハートオブアシティが我慢できずに動いたときも一切動揺をみせなかった。そのハートオブアシティの動きによって残り800mから一転して加速、11.9-11.5-10.8-11.5と切れ味だけではなく持続力まで問われる流れになった。
共同通信杯は例年後半600mが速くなる競馬が多く、残り800mから12秒を切ったのはディーマジェスティが勝った2016年以来。その年は前半1000m通過1分0秒0で後半800mは11.8-11.5-11.8-12.3。
今年は前半が緩かったことを加味しても、レース後半(残り400~200m)で記録した10.8は、過去10年では2014年イスラボニータが勝った年に記録した10.9を上回るラップ。ちなみに2012年1着ゴールドシップ、2着がディープブリランテだった年は残り600~400mで10.9を記録。イスラボニータの2014年は残り600mから10.9を2度踏んだ。
名前があがった馬たちはすべてクラシックホース。馬場状態やペースなど当時とは異なる部分もあるが、残り400mからの10.8で馬群から抜け出し、勝負をつけたエフフォーリアはクラシック最有力候補。着差がつきにくい緩い流れで2着に0.4差は完勝である。
次走で狙うべきは?
完敗の形になった2着ヴィクティファルスはキャリア1戦を考えれば未来は明るい。スタートでレフトゥバーズと接触しながらも、エフフォーリアの背後をとり、うまく壁を作って折り合いをつけた。最後の加速でエフフォーリアに置かれてしまったが、後ろのシャフリヤールには抜かせなかった。ガリレオ肌にハーツクライ産駒、若いうちは勝ちきれない競馬を続ける可能性もなくはないが、ここで賞金を加算できたことは大きい。
3着シャフリヤールは緩い流れの外枠で折り合いに苦労した。壁に利用したハートオブアシティに早めに動かれ、前があいてしまった点が痛かった。最後は馬場の大外から後半600m最速タイを記録。全兄弟のアルアインよりは切れ味を感じさせる内容で、クラシック本番はわからないが、緩い流れになりやすいトライアルならば好勝負になりそうだ。
しかし2着ヴィクティファルスと対照的に賞金加算ができなかったため、今後のローテーションは厳しい。詰めて使うと走らないディープインパクト産駒だけにここからは自身との戦いになるだろう。
出負けして後手を踏んだ4着キングストンボーイは枠なりにインを追走。最後はやや状態がよくない最内からよく差を詰めた。流れが向かず、通った場所も厳しいなか4着は力がある。次でぜひ狙いたい。
5着はステラヴェローチェ。前走が朝日杯FSだった馬は、ステラヴェローチェも含めこの10年で【0-3-0-5】と不思議と好走できない。ラップが一定で進むマイル戦から緩急がつく中距離戦へのシフトチェンジは、若駒にとって想像以上に厳しい。不良馬場のサウジアラビアRCや、ハイペースの持久戦になった朝日杯FSの経験がアダになったか。現状では緩い流れから速い脚を繰り出す競馬は合わないのではなかろうか。結果は1番人気5着。来年以降もこのパターンは頭に入れておきたい。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。

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