馬の長所をとらえた見事な騎乗
舞台を阪神芝2200mに移して行われた京都記念は、ラヴズオンリーユーがオークス以来の重賞2勝目を飾った。阪神芝2200mは例年の宝塚記念や昨年のエリザベス女王杯のように外回りの京都より後続の仕掛けが早く、残り1000~800mでスパートする持久力戦になりやすい。昨年のエリザベス女王杯はラッキーライラックが4角手前で一気にスパート、後を追うように動いたラヴズオンリーユーは最後に脚があがって3着だった。
ラヴズオンリーユーにとって早めに仕掛けてコーナーで動くような競馬は合わない。だが京都記念はその同馬のウィークポイントを見事に打ち消した競馬だった。まさに困ったときの川田将雅騎手である。
スタートを決め、自然に先行態勢をとり、真っ直ぐ走らせる。内から外から行きたい馬をやり過ごし、目の前にきたダンビュライトを壁にして1、2角で折り合いをつける。ハッピーグリンやステイフーリッシュが強気に進み、ダンビュライトがそれらを追いかけると、今度は我慢させ、深追いさせない。
前半1000m59.3の淀みない流れを4番手追走、この流れでは後続も動けず、途中でリズムを乱されることもなかった。問題は内回り3、4角で動かされる点だったが、残り800m付近で先行集団をねじ伏せるように強気にまくる馬はおらず、内からジナンボー、外からレイエンダが迫ってもラヴズオンリーユーが動じるほどではなかった。
後半1000mは12.0-12.2-11.3-11.5-12.2。最後の600mでスパートする、いわゆる上がりの競馬になった。直線を向くまで自分のリズムで脚を溜められさえすれば、ラヴズオンリーユーは弾ける。そんな長所を巧みに引き出した騎乗だった。
裏を返せば、やはり途中で動きがあるような競馬では脚を溜めきれない。京都記念は自身にとって絶好の展開になったが、大阪杯のような後続の追いあげが厳しい競馬での立ち回りは課題になるだろう。
侮れない2、3着馬。その理由とは
前半がそれなりに流れたことで後方勢が早めに動けなかった展開は2着ステイフーリッシュや3着ダンビュライトら先行勢に味方した。展開利があったことは確かだが、それだけでは片づけられない。
2着ステイフーリッシュは、逃げたハッピーグリンが4角手前で失速したことで早めに先頭に立たされる辛い形になりながら、持ち前のしぶとさを発揮して2着。やはり2200mはこの馬のベスト。これで12回目の重賞2、3着だが、まだまだ。父ステイゴールドは重賞2、3着が14回もあった。
3着ダンビュライトはイレ込みが課題の馬だが、関西圏ならばその心配はない。最後は内から追いあげたジナンボーをしっかりブロックしてラチ沿いに封じながら3着確保。ステイフーリッシュと同じく強気な先行策がこれからも武器になる。いかに自分の得意な流れに持ち込めるかどうかだ。
5着はダービー馬ワグネリアン。5歳シーズンは2戦しか使えなかったように思うような状態で出走できない日々が続くが、最後の直線はワグネリアンらしさを見せた。だが、このコースではコーナーで加速しながら順位をあげる器用さが問われる。その点に欠ける面がある馬だが、早めに動けるような状態でもなかったか。
6着ダンスディライトは昇級緒戦でやや大事に乗り過ぎた印象。最初から先行する予定がなく、中団からの競馬を選択。結果的に自分の形を崩してしまった。馬群に入ったことで窮屈にもなり、力を出し切っていない。重賞のペースに慣れ、3勝クラスを勝ったときのような積極策で活路を見出したい。阪神芝2200mはベストだ。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。

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