ラップ以上に厳しいレース
18年リスグラシュー、19年インディチャンプ。勝ち馬にはその後GⅠを制した馬たちの名前が並ぶ。安田記念まで4カ月、真冬の微妙な時期であっても、舞台は言い訳無用の東京マイル戦。総合力がないと勝負にならないコースであり、展開を味方に勝てるような条件ではない。
勝ったカラテは12、1月の中山で連勝してオープン入り。東京新聞杯は過去10年、前走が3勝クラスのマイル戦だった馬は【2-0-0-3】、かつ着差が0.3~0.5秒だと【1-0-0-0】。勝利した1頭がその年の安田記念を勝ったインディチャンプだった。カラテが勝ったことで【2-0-0-0】。3勝クラスを完勝した馬の勢いは侮れない。
戦前、カラテが東京マイルを勝ったのは昨年6月不良馬場の八丈島特別(1勝クラス)のみ。これがトゥザグローリー産駒、菅原明良騎手の東京マイル初勝利だった。こういった戦歴からやや地味な印象も手伝い、当日は5番人気、人気の盲点になっていた。
冒頭にも書いたが、東京マイルは恵まれて勝てるような甘い舞台ではない。カラテのレース内容も見所十分だった。エントシャイデンが出遅れ、先手をとったのは中距離戦を中心に使われてきた屈指の東京巧者ダイワキャグニー。前半800m46秒6のスローペースだが、12秒台が記録されず、東京マイルらしい起伏のない流れ。
菅原明良騎手は遅くなる流れを読み、発馬を決め、ごちゃつかないように先行争いをさばいて5番手を確保。背後をヴァンドギャルドにとられる形も冷静だった。どの馬もついていける流れのため、最後の直線はみんな止まらない。必然的に進路取りが難しくなる。
カラテも内にトライン、前にトリプルエースやエメラルファイト、外はヴァンドギャルドと囲まれた。緩い流れから決め手勝負となれば、わずかなロスやアクションが致命的になる。最小限のアクションで進路を確保せねばならない。無理せず、仕掛けを待つことでエメラルファイトがインに寄り、スペースが生まれた。そこを一気に抜け出し、先に抜けたカテドラルをアタマ差捕らえた。着差を考えても、抜け出すタイミングは完ぺきだった。菅原明良騎手、お見事。
レースの後半800mは11.5-11.2-11.6-11.5で45秒8。4角から坂下までの11秒2という最速ラップで脚を使い切った馬は多く、坂で踏ん張れなかったため、先行勢は大きな着順になった。その意味でもカラテの記録は価値がある。