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【東京新聞杯】いざ安田記念へ カラテはインディチャンプの道をたどれるか

2021 2/8 11:00勝木淳
2021年東京新聞杯レース結果ⒸSPAIA

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ラップ以上に厳しいレース

18年リスグラシュー、19年インディチャンプ。勝ち馬にはその後GⅠを制した馬たちの名前が並ぶ。安田記念まで4カ月、真冬の微妙な時期であっても、舞台は言い訳無用の東京マイル戦。総合力がないと勝負にならないコースであり、展開を味方に勝てるような条件ではない。

勝ったカラテは12、1月の中山で連勝してオープン入り。東京新聞杯は過去10年、前走が3勝クラスのマイル戦だった馬は【2-0-0-3】、かつ着差が0.3~0.5秒だと【1-0-0-0】。勝利した1頭がその年の安田記念を勝ったインディチャンプだった。カラテが勝ったことで【2-0-0-0】。3勝クラスを完勝した馬の勢いは侮れない。

戦前、カラテが東京マイルを勝ったのは昨年6月不良馬場の八丈島特別(1勝クラス)のみ。これがトゥザグローリー産駒、菅原明良騎手の東京マイル初勝利だった。こういった戦歴からやや地味な印象も手伝い、当日は5番人気、人気の盲点になっていた。

冒頭にも書いたが、東京マイルは恵まれて勝てるような甘い舞台ではない。カラテのレース内容も見所十分だった。エントシャイデンが出遅れ、先手をとったのは中距離戦を中心に使われてきた屈指の東京巧者ダイワキャグニー。前半800m46秒6のスローペースだが、12秒台が記録されず、東京マイルらしい起伏のない流れ。

菅原明良騎手は遅くなる流れを読み、発馬を決め、ごちゃつかないように先行争いをさばいて5番手を確保。背後をヴァンドギャルドにとられる形も冷静だった。どの馬もついていける流れのため、最後の直線はみんな止まらない。必然的に進路取りが難しくなる。

カラテも内にトライン、前にトリプルエースやエメラルファイト、外はヴァンドギャルドと囲まれた。緩い流れから決め手勝負となれば、わずかなロスやアクションが致命的になる。最小限のアクションで進路を確保せねばならない。無理せず、仕掛けを待つことでエメラルファイトがインに寄り、スペースが生まれた。そこを一気に抜け出し、先に抜けたカテドラルをアタマ差捕らえた。着差を考えても、抜け出すタイミングは完ぺきだった。菅原明良騎手、お見事。

レースの後半800mは11.5-11.2-11.6-11.5で45秒8。4角から坂下までの11秒2という最速ラップで脚を使い切った馬は多く、坂で踏ん張れなかったため、先行勢は大きな着順になった。その意味でもカラテの記録は価値がある。

4着ヴァンドギャルドの適性とは

2着カテドラルは枠なりにインコースを攻めながら、4角を利用して外に持ちだし、早めにしっかり進路を作った。この日、8、9Rと芝のレースを連勝した田辺裕信騎手の馬場を読み切った騎乗だった。3歳時にアーリントンCで最後の600m33秒3を記録して2着、NHKマイルCでも33秒7の末脚を繰り出し3着。直線が長く、後半が速いマイル戦は合う。差し競馬が得意な田辺裕信騎手とも手が合いそうで、東京マイルでは今後も注目だろう。

3着シャドウディーヴァは大外を攻めて最後に伸びきれなかった。2月の東京芝はDコース使用。コーナーが緩く大回りになるため、道中で外を追走すると、予想以上に距離ロスが大きい。それが最後に堪えたか。シャドウディーヴァのように外から勢いよく伸びかかった馬が、最後に内をすくわれるといった場面はこの開催も多くみられる。Dコース施行の東京芝は改めて枠順もカギを握るということだろうか。

4着ヴァンドギャルドは1番人気を裏切ってしまった。道中はカラテの背後6番手。流れに乗れてはいたようだが、勝負所で切れ味を発揮できなかった。枠順もあったかもしれないが、福永祐一騎手はそこをうまくケアしていた。昨年の東京新聞杯やマイラーズC、マイルCSからも緩い流れのマイル戦だと切れ味比べで他馬に劣るようだ。ベストは昨年10月の富士S。その前後半800mは45秒4-48秒0と前傾ラップ。今後も後半に時計がかかるようなケースで買い、スローペースでは評価を下げるべきだろう。

2021年東京新聞杯レース展開図インフォグラフィックⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。


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