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【ジャパンC】外が伸びる馬場はアーモンドアイに不向き 3強に割って入りそうな馬とは?

2020 11/26 11:00三木俊幸
ジャパンカップ馬場適正チャートのインフォグラフィック,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

上がりは速い馬場

牡馬・牝馬ともに無敗の3冠馬が同時誕生し、さらに上の世代の3冠馬と対決する──。果たして今後、私たちが生きている間にこんな出来事は起こるのだろうかとさえ思うほどのドリームレースとなったジャパンC(GⅠ・芝2400m)。3冠馬3頭の中で、今の東京コースの馬場にマッチするのはどの馬なのか、いくつかの項目ごとに分析していく。

まずは、勝ちタイムと上がりタイムから死角があるのか見ていこう。先週の東京地方は晴天が続き、1週間を通じて雨量は観測せず。そうしたこともあり、先週末のクッション値は土曜日と日曜日が9.6、3日間競馬の最終日となった月曜日は9.7と標準的な状態となっていた。

先週末の東京芝コース タイムと上がりⒸSPAIA

4回東京競馬の序盤に受けた雨の影響から超高速馬場ではないものの、日曜日に行われた芝1600mの2歳未勝利戦では1:34.1、月曜日の芝2000mの2歳未勝利戦では2:00.9という勝ちタイムだったことを踏まえると、極端に時計がかかっているという印象はない。

また3日間で行われた17レース中、9レースの勝ち馬が上がり33秒台をマークしていることから、速い上がりが必要とされる馬場だと言える。速い上がりタイムを要求される馬場だという視点から見ると、アーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクトの3頭ともマイナス材料は見当たらないが、過去の2400m戦での上がりタイムからあえて順位づけをするなら「デアリングタクト>アーモンドアイ>コントレイル」となる。

先行馬が活躍

続いて先週末に馬券圏内に好走した馬の通過順位から、傾向について振り返る。

先週末の東京芝コース 通過順位ⒸSPAIA

17レース中、逃げ馬が勝利したのは月曜日の芝1400mの2歳新馬戦の1レースのみだったが、10レースの勝ち馬が4角4番手以内で先行馬の勝利が目立っていた。

4角10番手以下または後方3番手より後ろだった馬も7頭が馬券に絡んでいるものの、基本的にはある程度のポジションからレースを進められる馬のほうが良さそうだ。普通にスタートを切った場合の道中の通過順位という視点では、「アーモンドアイ>コントレイル>デアリングタクト」という評価となるだろう。

内ラチ沿いの傷みが進行

先々週までは内ラチ沿いの馬場状態がかなり悪く、直線では内をかなり開けて走っている場面が見られた。先週からCコースに変わり、馬場の悪い箇所は仮柵で保護されたが、内から何頭目のコースが伸びていたのかということについても調べてみた。

3着内馬が直線で通ったコースⒸSPAIA

対象馬51頭中、内から3頭目以内を通って馬券圏内に好走したのはわずかに3頭のみ。平均すると内から7.6頭目のコースを通った馬が伸びてきており、かなり外を通った馬が好走していることが分かった。

また土曜日に行われた5レースは内ラチ沿いから馬群が広がるレースが続いたため、パトロール映像で内がポッカリと開いている様子は見られなかったが、日曜日と月曜日は一変。すべてのレースで内ラチ沿いにスペースが見られた。Cコースになったとはいえ、レースを重ねるごとに明らかに傷みが進行している。

好位追走から外に持ち出すというレースを重ねてきたコントレイルがこの点からは最上位評価、次いで外から差す競馬をしてきたデアリングタクト。アーモンドアイは比較的、直線でロスなく内目を回るレースをしており、(スタートで後手を踏んだとはいえ)過去2回の安田記念のように、外を回ったレースでは取りこぼしている。この点は大きな鍵を握るかもしれない。

強いて穴をあげるならユーキャンスマイル

ジャパンカップの馬場適性チャート,ⒸSPAIA

ここまで3つの視点からアーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクトについて分析してみたが、高いレベルで能力が拮抗しているのは間違いない。であれば、最後に紹介した「伸びるコース」を走る可能性が高い馬を評価しようと考えた。

本命コントレイルは、東京で走った東スポ杯2歳Sは内から7頭目(補正値+2)、日本ダービーは内から9頭目というコースを通って勝利。加えてある程度の先行力がある点も今の馬場には向いている。不安点があるとすれば、菊花賞での激走後だということ。しかし、使ってくる以上は大丈夫だということなのだろう。

対抗はデアリングタクト。オークスは直線で内から7頭目を通って突き抜けている。この馬の強みは荒れた馬場や道悪になったとしても苦にしない点。先週末の3日間開催のダメージが大きく、想像以上に馬場悪化していたらチャンスはさらに大きくなるはずだ。

そしてアーモンドアイは3番手評価とした。先述したように直線で内目を通った時のほうが結果を残している。加えて、超高速馬場になればなるほど有利なタイプで、前走の天皇賞(秋)も勝利したものの、最後は差を詰められていた。距離も2000m前後が良いタイプなので、上記2頭に比べると不安要素が垣間見える。

この3頭に割って入る可能性がある馬を強いてあげるとすれば、ユーキャンスマイル。前走のアルゼンチン共和国杯は4着と物足りない内容に終わったが、昨年の天皇賞(秋)では得意とは言えない2000m、内が伸びる馬場の中で内から8頭目を通って4着に追い上げてきた。その能力を考えると、タフなレース展開になったときに最後にグイッと3着争いに食い込むという場面があるかもしれない。

▽ジャパンC予想▽
◎コントレイル
○デアリングタクト
▲アーモンドアイ
☆ユーキャンスマイル

ライタープロフィール
三木俊幸
編集者として競馬に携わった後、フリーランスとなる。現在は競馬ライターとしてだけでなく、カメラマンとしてJRAや地方競馬など国内外の競馬場で取材活動を行っている。

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